ブリヂストンと国立大学法人東北大学は8月2日、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始した。同研究は、東北大学ソフトマテリアル研究拠点が社会実装を進める計測科学と計算科学に、ブリヂストンが培ってきたゴムの知見を組み合わせる事で、ゴムの分子・原子レベルでの計測と、物性の計算(シミュレーション)技術の向上を目指すもので。
これにより両者は、高レベルな解析を可能とする材料シミュレーション基盤技術を構築することで、行動や意思決定をデータの分析結果に基づいて行うデータドリブンによる材料開発を実現していくと述べている。
そもそも東北大学は2020年8月に、ソフトマテリアルの社会実装の加速・拡大に資するため、東北大学の研究者と企業との産学連携を目指してソフトマテリアル研究拠点を設立。
同拠点で東北大学は、計測に於いてマルチモーダル(電子顕微鏡や放射光などで得られる複数視点の情報)ネットワークを構築。得られた計測データに基づき、AI 技術、計算(シミュレーション)技術を用いたワンストップソリューションの提供を目指してきた。
対してブリヂストンは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に、技術イノベーションを加速させている。
今回の共同研究では、ゴムの分子スケールからタイヤ挙動を予測評価するべく、材料開発の革新、効率化に繋げ「ゴム・接地を極める」を進化させていく構えだ。
こうした取り組みに関して国立大学法人東北大学 ソフトマテリアル研究拠点副代表(社会連携担当) 岡部朋永氏は「近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)あるいはインフォマティクスといったデータ科学をエンジニアリング現場に適用しようという試みが多くなされています。
これらの取り組みは開発コストの低減、研究の効率化といった優れた面もありますが、核となる現象が見逃されてしまう可能性があります。
特にタイヤは複雑な階層構造を有しており、材料中の微小な構造の差異が、大きくタイヤ性能に影響することが知られておりますが、これらの現象は、データの統計処理だけでは実態の把握ができません。
そこで、複雑な階層構造をより定量的に評価すべく、マルチモーダルな計測科学と原子分子レベルからのマルチスケール計算科学を融合した新たな取り組みを開始しました。この計算計測融合の取り組みにより、材料中の複雑な現象がモデル化出来るだけでなく、現象理解に基づいたデータ科学への展開が期待されます」と話している。
一方、ブリヂストン サステナブル・先端材料統括部門長の大月正珠氏は「ブリヂストンは企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」を掲げ、サステナブルなソリューションカンパニーへの変革を加速しています。
その変革を推し進める中で、用いる原材料や製造プロセスおよびお客様へ提供する製品に限らず、開発スタイルそのものもサステナブルにしたいと考えています。
ブリヂストンの強みとするゴム材料科学と東北大学の強みである最先端の計測科学および計算科学を融合させることにより、データドリブンな開発の基盤を作り、効率的に革新材料を創出しつづける基盤技術が構築できると期待しています。
今後も様々なチャレンジを通じて、人財育成、イノベーション加速や新たな社会価値・顧客価値共創の実現を推進します」と語っている。