VDC2.0を元にモータースポーツ用ESC制御「DSC-TRACK」を共同開発
独・ロバート・ボッシュ傘下の日本法人ボッシュ(株)は10月5日、自社の次世代横滑り防止装置ESCがマツダロードスターに採用されたことを明らかにした。
具体的には今回、商品改良車されたロードスター搭載の横滑り防止装置ESCに関して、ボッシュ並びにマツダは、制御ソフトウェアの〝ビークル ダイナミクス コントロール2.0〟を元に、モータースポーツ用ESC制御の〝DSC-TRACK〟を共同開発したという。
ちなみに通常のESC制御の場合、例えばモータースポーツ環境下に於いては常時、タイヤグリップの限界付近で走行するため、ドライバーが対処できる範囲であっても、横滑り防止の制御が作動・介入することで車速が下がり、ラップタイムが落ちることがある。
そこで同課題解決にあたって両社は、実際のモータースポーツ場面で有用な制御機構を完成させるべく、ロードスターのワンメイクレースの〝ロードスター・パーティレースⅢ〟に試作車を投入。実戦環境で〝DSC-TRACK〟の性能検証に取り組んだ。
ちなみに、こうしたモータースポーツ場面では、先の通り、従来の横滑り防止装置を搭載した車両の場合、不安定な挙動が発生してから、介入制御が作動する形が一般的だ。
ビークル ダイナミクス コントロール2.0
一方で、ビークル ダイナミクス コントロール2.0であれば、センサーの信号に基づいて不安定挙動の発生を予測して事前に作動させることができる部分が大きな違いとなっている。
つまり、マルチアクチュエーターによるソフトウエア制御機構を介して、ブレーキだけでなく、ステアリング、パワートレイン・システムなどのアクチュエーターへ介入し、統合制御が行われる格好となっている。
従って限界走行時のドライバーのコントロール範囲を広げつつも、クラッシュのリスクを下げるべく、スピンなどの急激な不安定挙動を検知した場合のみ、効果的な制御が適切に行われる仕組みだ。
その結果ドライバーは、操作入力に応じた理想的な車両挙動の狙いが定められるようになり、ブレーキを適切に作動させることができ、ドライバー操作によるカウンターステアが減少、また停止距離が短縮されることで乗員の安全性も向上する。
今回は、こうした制御マネージメントに、ボッシュが持つ長年のアクチュエーター制御技術が活かされているという。
一方、マツダの車両開発本部・操安性能開発部・首席エンジニアである梅津大輔氏は、「ボッシュのビークル ダイナミクス コントロール2.0なら、ドライバーによる車両挙動コントロールの楽しさはそのままに、危険挙動の回避をサポートする制御が作れると考えました」と同システムを採用した理由について語っている。