ドイツのロバート・ボッシュ(Robert Bosch)は、二輪車向けの自動緊急通報システム「ヘルプコネクト」を開発した。
システムは、車両搭載の慣性計測センサーユニットに組み込まれた衝突検出アルゴリズムで事故を検知し、スマートフォンアプリを介して事故現場とライダーに関する情報を、ボッシュカーサービスステーション経由で救急サービスに送信する。
日本において、二輪車ライダーが事故により死亡もしくは重傷となるリスクは、自動車ドライバーの約10倍(*1)と、今なお高い状況にあるといわれている。
事故に遭遇した際に救助を早く受けられるほど救命の可能性が高まることから、ボッシュは、二輪車向けの自動緊急通報システム「ヘルプコネクト」を開発した。このシステムにより、救急隊員が事故現場に到着するまでの時間は、最大で半分にまで短縮できる(*2)と云う。
ボッシュ取締役会メンバーのハラルド=クローガー氏は、「ヘルプコネクトによって、ボッシュの二輪車向けセーフティシステムの幅広い製品ポートフォリオに、デジタル版の守護神が加わります」と、述べている。
緊急時、アプリが事故現場とライダーに関するデータを送信
ヘルプコネクトは、ボッシュのモーターサイクル用スタビリティ コントロール(MSC)の主要構成コンポーネントである慣性計測センサーユニットからの情報を活用した。
加速度と角速度を毎秒100回測定するこのセンサーは、車体角度や車体方向が変化する速度を把握し、二輪車の車体の向きとリーン角を正確に計算。センサーに組み込まれたアルゴリズムにより、二輪車が事故に巻き込まれたのか、または駐車中に車両が転倒しただけなのかを自動的に検出。Bluetooth経由で、身に付けていることが多いスマートフォンの緊急通報用アプリ「Vivatar」に接続し、位置情報やライダーから提供された、救命活動に重要な可能性のある医療関連データを送信する。また要望に応じて、第三者への自動通知もできる。
なお、事故が深刻でライダーからの応答がない場合には、救急隊が直ちに現場に向かうと云う。
またヘルプコネクトは、追加のコントロールユニットが不要なため、搭載が容易なことに加え、二輪車メーカーが提供する専用アプリなど、Vivatar以外のスマホアプリとの連携も可能。サービスはまず、ドイツで提供される予定だ。
事故調査で世界の衝突事故を分析
ヘルプコネクトは、他のアシスタンス システム同様、エンジニアと社内の事故調査部門による協働により誕生。
事故の研究者は、安全性を向上させる技術革新のきっかけをつかむため、実際に発生した二輪車事故の過去データを把握し、特定の事故シナリオを分析。ボッシュは、ヘルプコネクトの機能性を実証するためだけに、18回の衝突試験を実施したと云う。
これについて、前述のクローガー氏は、「ライダーの安全性を向上する製品開発以前に、ライダーが直面する危機的状況を理解する必要があります」と、述べている。
二輪車安全性向上のための革新的技術の開発
ボッシュでは、ライダーの安全性の向上のため、25年前にモーターサイクル用ABSを、そして2013年にMSCを開発し、二輪車の安全性を大幅に向上。
その後も、アダプティブ クルーズ コントロール(ACC)、衝突予知警報、死角検知を含む、レーダーベースのアシスタンスシステムのアドバンスト ライダー アシスタンス システム(ARAS)を開発し、セーフティシステムの製品ポートフォリオのさらなる充実化を図ってきた。
*1:2017年の二輪車(排気量125 cc以上)のデータから推計([出典] 2018年2月15日付・警察庁交通局「平成29年中の交通事故の発生状況」<https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf>、自動車検査登録情報協会「自動車保有台数の推移」<https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv000000g7vb-att/r5c6pv000000g7vq.pdf>)
*2:[出典] EUプロジェクト「Harmonised eCall European Deployment(I_HeERO)」