ドイツのロバート・ボッシュおよびメルセデス・ベンツAGは、サンノゼのシリコンバレーで、メルセデス・ベンツSクラスの自動運転車両を用いたアプリベースの配車サービスの実証実験を開始した。
実証実験は、開始当初、特定ユーザーのみを対象に、ダイムラー・モビリティが開発したアプリで走行予約を行い、Sクラスの自動運転車両がドライバー監視の下、サンノゼ西部と都心部間のサンカルロス通りとスティーブンス・クリーク通りを定期往復する。
両社は、この実証実験を通じて、高度・完全自動運転(SAEレベル4/5)システムのさらなる発展と、公共交通機関やカーシェアリングを含む複合的なモビリティシステムと自動運転車両の統合の可能性の知見獲得を目指す。
未来のモビリティ化に向けたパートナー
サンノゼでは、道路交通に関して増大する課題の分析のため、2017年中頃に米国で初めて自動運転の実証試験に民間企業の誘致を開始。
自動運転車両が特に混雑した市街地走行で、そのサラウンドセンシングにより潜在的に安全性を向上させること、そのスムーズな走行により交通の流れを改善させる可能性について、その知見を蓄積してきた。
サンノゼ市政革新・デジタル戦略ディレクターのDolan Beckel氏は、以下のように話している。
「市として、自動運転車両がどのように安全性の向上と渋滞の緩和に役立つのか、また交通手段をさらに利用しやすく、持続可能で、包括的なものにする上で役立つのかという点について、より多くのことを知りたいと考えています。
メルセデス・ベンツとボッシュのプロジェクトは、サンノゼの掲げる『スマートシティ』の目標と結びつきます。さらに、新しいテクノロジーに対処するためのガイドラインの策定や、将来の交通システムへの準備という点でも、私たちにとって有益なものとなるでしょう」。
また、ボッシュで都市部自動運転の開発を率いるMichael Fausten氏は、以下のように話している。
「自動運転が日常的に使用されるためには、そのテクノロジーが高い信頼性と安全性を持って機能する必要があります。そのためには、サンノゼでの実証実験のようなテストが必要となります」。
そしてメルセデス・ベンツで自動運転を率いるUwe Keller氏は、以下のように話している。
「その性能を証明しなくてはいけないのは、自動運転車両だけではありません。私たちシステム開発者もまた、自動運転配車サービスが都市交通というパズルに、1つのピースとしてフィットすることを証明する必要があります。私たちはこの両方をサンノゼでテストすることができます」。
両社のプロジェクト代表者は、8月から11月まで、サンノゼ市の職員とともに、複数の地域団体と、このプロジェクトについて議論を行った。またプロジェクトチームは、シャトルが通行する通り沿いの近隣住民や企業グループとの7回にわたる集会で、目標について議論し、車両技術を見せ、プロジェクトで実装される二重の安全冗長性について説明した。
合同プロジェクトに関する両社の取り組み
ボッシュとメルセデス・ベンツは、これまで約2年半に渡り、都市部における自動運転のためのソリューションに共同で取り組んできた。
両社は、共通の目的に、高度・完全自動運転(SAEレベル4/5)システムによる、車両管理用ソフトウェアを含む無人の完全自動運転車両を掲げ、プロトタイプではない、様々な車種やモデルに組み込むことができる量産向けシステムの開発を目指している。
プロジェクトにおいて、メルセデス・ベンツは、共同開発された自動運転システムを車両に装備可能な状態にすること、および必要な試験車両、テストベイ、試験フリートの提供を担当。一方のボッシュは、都市部における自動運転のためのコンポーネントの開発・製造を担当している。
両社は、車両制御のソフトウェアの開発段階で、特に道路交通では稀にしか起こらないような運転状況に対応するため、人工知能や試験走行距離の記録のみに頼らず、複雑な交通状況もきわめて正確に、希望頻度で再現可能な、自動運転向けに専用に設計された10万平方メートルの性能試験場も利用。
ドイツのインメンディンゲン試験・技術センターのエンジニアは、このような手法を用いることで、完璧であることと安全性を最優先していると云う。
自動運転車両をタクシーフリートに統合するプラットフォーム
ボッシュとメルセデス・ベンツは、この実証実験のために、ダイムラー・モビリティ社をパートナーに迎えた。同社は、自動運転車両と従来の車両の両方を、業務と保守も含めて管理するためのフリートプラットフォームの開発とテストを担当する。
このプラットフォームにより、配車サービスを提供するパートナー企業や団体は、メルセデス・ベンツの自動運転車両を、サービスラインナップに組み込むことが可能になると云う。
今年秋、この従来型メルセデス・ベンツ車両のためのアプリベースのモビリティサービスは、サンフランシスコの湾岸地帯で稼働を開始、またドイツの首都ベルリンでの利用も可能となっている。