
米アマゾン傘下でクラウドサービスプロバイダ(CSP)最大手のアマゾンAWSは、米国西部時間の11月28日から翌12月1日(日本時間の11月29日から12月2日)の4日間に亘って、同社の年次イベント「AWS rs:Invent2022」を米国ネバダ州ラスベガス市(ベネチアンコンベンション&エキスポ センター)で開催。( 坂上 賢治 )
同催事で参加したブラックベリー(BlackBerry Limited)は会期の最終日、自社の組み込み型OS「ブラックベリーQNX」を、アマゾンAWS上で初提供する事を発表した。同社は、これにより顧客企業が行う製品開発期間の大幅短縮を約束。最終製品に至る市場投入スピードの向上に貢献して行くと発表した。
クラウド上で実行される「ブラックベリーQMX」RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)は、クラウドネイティブなワークベンチとして機能することから単独使用が可能だという。
またブラックベリーとAWSが共同開発したクラウド環境動作の自動車向けAIデータ処理プラットフォームの「ブラックベリーIVY」と連携して使用する事も出来るとしている。
ブラックベリーQNX事業で製品管理及び戦略部門バイスプレジデントを務めるグラント・クールヴィル氏は、「QNXの基本ソフトウェアのクラウド化は、容易なアクセス性と自由自在な拡張性が実現出来るため、組み込み開発者にとってこれまでの常識を覆す存在となるでしょう。
それはミッションクリティカルな組み込みシステムに取り組む開発者にとって、製品の開発・導入に至るライフサイクル全体を通じ、協業並びに作業の迅速化を約束するものです。
例えば自動車産業界を例に取ると、車載用の電子アーキテクチャは日々複雑化しており、平均的な自動車でもその車載ソフトウエアは1億行以上のコードによって構築されています。そうした中で一般の自動車ユーザーも、世界各国で交通環境を司る規制当局も、次世代のクルマに対して、より拡張された機能性と、柔軟性の高いパソーナライズ対応を求めています。
それゆえ自動車メーカーと車両の開発技術者は、目的地に向かう途中に於いて素早く渋滞状態を知らせたり、事前に凍結した路面に対する警告アナウンスしたり、バッテリー残量を先回りして調べて適切な場所の充電スタンドを予約するなど、個々のドライバー毎に適応出来るソフトウェアづくりーを重ねつつ、それらの機能のテストを繰り返すなど、的確に要求性能に応えていくという重圧に直面しています。
しかし我々のAWS対応のブラックベリーQNX RTOSの利用で、難なく開発業務の合理化が可能となり、この結果、個々の技術に立脚した開発者間の相互干渉を軽減させ、様々な課題についての迅速な克服が実現可能となります。
加えて個々の車載OSや個々車両のハードウエアなどからの提供される多種多様なデータ処理を、一貫して処理出来るブラックベリーIVX環境もフル活用出来ます。
今回のデモンストレーションでは、自動車サプライヤーのマレリがクラウド環境を介してAIソリューションを使ったテストと統合作業を進めた後、これをハードウェアに素早く導入して車内で実行する方法を紹介しました」と述べた。
その利用状況についてマレリ社で電子システム部門のバイスプレジデントを務めるヤニック・ホヤウ氏は、「QNX AMIにより、当社の開発者はチームの立ち上げ時間を大幅に短縮しつつ、高品質な製品開発を終える事が出来ています。
これは当社の業務形態に革命を起こすものであり、今後は、車載ソフトウエアのテストをハードウェアなしに実行出来ます。
そしてこれこそが、当社が待ち望んでいたソフトウェア開発に於ける転換点となりました。当社の統合型コックピットDCUのMInD-Xpが、市場に先駆けて同環境で開発出来る事をティア1サプライヤーとして光栄に思います」と語った。
またアマゾンAWSでオートモーティブ担当を務めるジェネラル・マネージャーのウェンディ・バウアー氏は、「この業界の100年に1度と言われる再編期に、様々な企業のリーダーを結びつけられるという栄誉は、当社のAWSゆえに成しえる事であり、それはこの仕事に取り組むための我々のモチベーションになっています。
当社のGraviton2プロセッサを通じ、クラウドが持つ潜在能力を解き放つ事。ブラックベリーLTDのドラスティックな変革を支えていく事は、当社のみならずクラウド産業業界全体にとっても大きな活力の源となっています」と結んでいた。