旭化成本社にて行われたMOU調印式での様子。 左から旭化成の植竹伸子氏、ジェンタリのミシェル・アザルベール氏、日揮HDの秋鹿正敬氏
60MW級アルカリ水電解システム建設を含む水素製造プラントの覚書締結
旭化成は11月15日 、マレーシア当地での協業2社と、当該国内で建設する水素製造プラントに係る覚書を締結したと発表した。
具体的に旭化成は、マレーシアで年間8千トン規模のグリーン水素製造プラントの稼働を実現させるべく、ペトロナス・グループ( マレーシア国営石油ガス会社 )傘下の「ジェンタリ・ハイドロジェンSdn Bhd」並びに日本の「日揮HD」と、60MW級アルカリ水電解システム建設のFS( フィージビリティー・スタディ / Feasibility Study:計画実施の事前調査・検討 )を既に完了。
今回は、次フェーズのFEED( 概念設計 / FSの後の基本設計を指す )へ移行するための覚書(MOU)を締結した。
なお当該プロジェクトは、NEDO( 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 )のグリーンイノベーション基金採択の〝大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証〟計画の一部として運用されるもの。
現在この計画は、2024年1月のFEED開始に向けて、先の3社で連携しつつ準備を進めており、来たる2027年の実証運転開始を目指している。今後、当該プロジェクトは、まずは60MW級の電解槽を導入。この際、プラントの運転を最適化するための統合制御システムの運用実証も行われる予定だ。
同プロジェクトは、旭化成の未来を担う戦略的な成長ドライバーでもある
ちなみに、この大規模商業プロジェクトは、マレーシアでのグリーン水素製造を通じて、日本とマレーシア、そして東南アジアの市場開発を推進させ、脱炭素化に向けたグリーン水素の生産基盤を、東アジア域内で確立させるという3社の決意を示すものとなっている。
今回の覚書締結にあたって、旭化成の上席執行役員 兼 グリーンソリューションプロジェクト長を務める植竹伸子氏は、「本プロジェクトに於いて、グリーン水素・グリーンケミカルの実用化を世界にアピールし、両社と協働していきたいと思います。
旭化成では〝中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~〟で水素関連事業を次の成長を牽引する10のGrowth Gears( GG10 )のひとつに掲げており、将来の成長ドライバーとして当社の戦略的育成分野として位置付けています。
今計画実施は、当社がこれまでドイツで行ってきた実証実験の他、日本でも10MW級の電解槽を3年以上運営してきた我々、旭化成の経験が、当該プロジェクトの成功に重要な役割を果たすとものと考えています」と述べた。
一方、ジェンタリで最高水素責任者を務めるミシェル・アザルベール氏は、「今回のMOUは、旭化成並びに日揮HDとの戦略的な連携であり、相互に価値をもたらすものです。
3社の戦略連携は、マレーシアのみならず東アジアに大きな価値をもたらす
マレーシアが新たに発表したNETR( 2050年までの国家エネルギー移行ロードマップ )とHETR( 水素経済・技術ロードマップ )に則り、2030年までに年間20万トンのグリーン水素を生産するという目標の達成に向け、我が国の水素事業計画を大きく加速させる役割を担っています。
また更に当社は、親会社のペトロナスグループの資産と戦略的優位性を活用し、マレーシアを東南アジア域内の一大グリーン水素ハブ拠点とするべく、政府や州と共に同水素プロジェクトを強力に推進させていく考えです」と語った。
最後に、日揮HDで常務執行役員TCO 兼 サステナビリティ協創ユニット部長を務める秋鹿正敬氏は、「マレーシア政府並びにペトロナスグループ、そして旭化成による今MOU締結に向けたご尽力を心より感謝致します。
目下、日揮HDは福島県・浪江町にて、旭化成のアルカリ水電解システムから供給される水素を活用したグリーンアンモニア製造実証設備を建設中で、同設備でも統合制御システムの実証も行う予定です。
そうした浪江町に於ける実証の知見を活用し、その技術的成果をマレーシアでの今プロジェクトの遂行に役立ててまいります」と当該プロジェクト成功への意欲を改めて示した。