NEXT MOBILITY

MENU

2023年5月16日【エネルギー】

ZFら国内3社、商用EVプロジェクトへの参画を呼び掛け

松下次男

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

写真はZFが提案するラストワンマイルを担う新型輸送車両。最終消費者への商品輸送や、商店などへのドミナント配送を想定した低床車両となっている。

 

ZF、伊藤忠商事、パワーX、横浜で「エナジー・ミーツ・モビリティ」を共催

 

ゼット・エフ・ジャパン(ZFジャパン)、伊藤忠商事、パワーエックスの3社は5月16日、EV(電気自動車)普及時代における脱炭素ソリューションをテーマにしたイベントを横浜の高島屋ローズホールで共催した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

共催イベントは「エナジー・ミーツ・モビリティ(Energy meets Mobility)」と名付けて実施。商用EVコンセプトや蓄電システム(ESS)の取り組みを紹介し、賛同できるパートナーへの参加を呼び掛けた。

 

 

ZFジャパンと伊藤忠商事は昨年末、車載電池などを活用した脱炭素ソリューション分野での協業検討に合意したと発表。これを踏まえて、目指す事業活動を広く伝播する目的でイベントを開催したもの。パワーエックスも連携を表明する。

 

インベントでは、ZFジャパンの多田直純社長、伊藤忠商事電力・環境ソリューション部門の村瀬博章次世代エネルギービジネス部長、パワーエックスの伊藤正裕社長CEOなどが登壇した。

 

 

ラストワンマイルデリバリーに向けた商用EVプラットフォームコンセプトを提案

 

多田社長は連携事業ついてはZFジャパンが手掛けるものだとしたうえで、プレゼンテーションではラストワンマイルデリバリーに適した商用EVコンセプト「エナリティ・プラットフォーム・コンセプト(Enerlity Platform Concept)」などを紹介した。

 

同EVコンセプトは3つのレイヤー(階層)からなるモデルで、下段のプラットフォームにはZFのリアeアクスル、それに標準的なリン酸鉄リチウムイオンバッテリーなどを搭載する。

 

 

バッテリーは交換方式を採用。取り出しやすいようにレイアウトすることにより、下段プラットフォームは長く使用できる。劣化したバッテリーは定置用のESS事業に活用し、そこで退役後、リサイクルへと循環させる仕組み。

 

上段のレイヤーについても適宜変更可能にすることで、最新の機能が取り入れられる一方、ベース車両は長く使用できると提案する。多田社長は、ZFはサプライヤーであり、こうしたコンセプトを提案し、採用されることを目指していると話す。

 

 

伊藤忠商事は再生可能エネルギーを活用したエネルギーマネジメント事業を展開していることから、こうした車載事業関連分野についてもZFジャパンと協業し、事業化を検討する。

 

EV普及時代に向け車載電池、再生可能エネルギーを活用する脱炭素事業を目指す

 

ZFジャパンと伊藤忠商事が合意した内容は、車載リチウムイオン電池のライフサイクル・エコシステムの確立、電動小型車向けソリューションとエネルギーマネジメントソリューションを融合した総合的な脱炭素サービスの開発・社会実装など、両社は事業化に向けて合弁会社の設立も検討する。

 

 

またパワーエックスはこうした脱炭素ソリューション分野の取り組みに実装面で連携する。

 

伊藤社長CEOは現状のまま「夜間に送電線から充電し、昼間EVを稼働させる方法ではかえってCO2(二酸化炭素)を多く排出する」と警告。昼間に自然エネルギーで発電した電力を定置用蓄電池に溜め、EVへは定置用蓄電池から夜間に充電すべきと訴えた。

 

 

同社はこうした定置用蓄電池や急速EV充電器で先行しており、当日も商用EV向け充電システムの新製品を発表。再生可能エネルギーと組み合わせた定置用蓄電池、急速・標準EV充電の仕組みを提案した。

 

発表会場に於いてZFは、実車に搭載されたEアクスルやアクティブ後輪操舵システム、運行車両の位置情報をリアルタイムで把握する動態管理システムなどの新鋭ソリューションを展示。パワーXは輸送事業者向けの蓄電機能付き充電ソリューションを紹介した。

 

多田社長、伊藤社長らはEVの普及で日本は遅々としているが、「世界的にそのトレンドは早まっており、EV時代の到来は近い」と強調。そのためにも再生可能エネルギーと車載バッテリーを活用した脱炭素ソリューションを早期に確立すべきと提言し、賛同パートナーを求めた。

 

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。