写真はZFが提案するラストワンマイルを担う新型輸送車両。最終消費者への商品輸送や、商店などへのドミナント配送を想定した低床車両となっている。
ZF、伊藤忠商事、パワーX、横浜で「エナジー・ミーツ・モビリティ」を共催
ゼット・エフ・ジャパン(ZFジャパン)、伊藤忠商事、パワーエックスの3社は5月16日、EV(電気自動車)普及時代における脱炭素ソリューションをテーマにしたイベントを横浜の高島屋ローズホールで共催した。(佃モビリティ総研・松下次男)
共催イベントは「エナジー・ミーツ・モビリティ(Energy meets Mobility)」と名付けて実施。商用EVコンセプトや蓄電システム(ESS)の取り組みを紹介し、賛同できるパートナーへの参加を呼び掛けた。
ZFジャパンと伊藤忠商事は昨年末、車載電池などを活用した脱炭素ソリューション分野での協業検討に合意したと発表。これを踏まえて、目指す事業活動を広く伝播する目的でイベントを開催したもの。パワーエックスも連携を表明する。
インベントでは、ZFジャパンの多田直純社長、伊藤忠商事電力・環境ソリューション部門の村瀬博章次世代エネルギービジネス部長、パワーエックスの伊藤正裕社長CEOなどが登壇した。
ラストワンマイルデリバリーに向けた商用EVプラットフォームコンセプトを提案
多田社長は連携事業ついてはZFジャパンが手掛けるものだとしたうえで、プレゼンテーションではラストワンマイルデリバリーに適した商用EVコンセプト「エナリティ・プラットフォーム・コンセプト(Enerlity Platform Concept)」などを紹介した。
同EVコンセプトは3つのレイヤー(階層)からなるモデルで、下段のプラットフォームにはZFのリアeアクスル、それに標準的なリン酸鉄リチウムイオンバッテリーなどを搭載する。
バッテリーは交換方式を採用。取り出しやすいようにレイアウトすることにより、下段プラットフォームは長く使用できる。劣化したバッテリーは定置用のESS事業に活用し、そこで退役後、リサイクルへと循環させる仕組み。
上段のレイヤーについても適宜変更可能にすることで、最新の機能が取り入れられる一方、ベース車両は長く使用できると提案する。多田社長は、ZFはサプライヤーであり、こうしたコンセプトを提案し、採用されることを目指していると話す。
伊藤忠商事は再生可能エネルギーを活用したエネルギーマネジメント事業を展開していることから、こうした車載事業関連分野についてもZFジャパンと協業し、事業化を検討する。
EV普及時代に向け車載電池、再生可能エネルギーを活用する脱炭素事業を目指す
ZFジャパンと伊藤忠商事が合意した内容は、車載リチウムイオン電池のライフサイクル・エコシステムの確立、電動小型車向けソリューションとエネルギーマネジメントソリューションを融合した総合的な脱炭素サービスの開発・社会実装など、両社は事業化に向けて合弁会社の設立も検討する。
またパワーエックスはこうした脱炭素ソリューション分野の取り組みに実装面で連携する。
伊藤社長CEOは現状のまま「夜間に送電線から充電し、昼間EVを稼働させる方法ではかえってCO2(二酸化炭素)を多く排出する」と警告。昼間に自然エネルギーで発電した電力を定置用蓄電池に溜め、EVへは定置用蓄電池から夜間に充電すべきと訴えた。
同社はこうした定置用蓄電池や急速EV充電器で先行しており、当日も商用EV向け充電システムの新製品を発表。再生可能エネルギーと組み合わせた定置用蓄電池、急速・標準EV充電の仕組みを提案した。
発表会場に於いてZFは、実車に搭載されたEアクスルやアクティブ後輪操舵システム、運行車両の位置情報をリアルタイムで把握する動態管理システムなどの新鋭ソリューションを展示。パワーXは輸送事業者向けの蓄電機能付き充電ソリューションを紹介した。
多田社長、伊藤社長らはEVの普及で日本は遅々としているが、「世界的にそのトレンドは早まっており、EV時代の到来は近い」と強調。そのためにも再生可能エネルギーと車載バッテリーを活用した脱炭素ソリューションを早期に確立すべきと提言し、賛同パートナーを求めた。