ゼンリンは5月20日、日立製作所と長崎市における観光振興による地域活性化につなげることを目的とした観光型MaaSの実証実験に向けて協業を開始すると発表した。
この協業を通じ、ゼンリンが2021年度中に長崎市で実施する観光型MaaSの実証実験において中核となる、サービス基盤の開発に取り組んでいく。
実証実験では、長崎市を訪れる観光客を対象に、ゼンリンの地図情報と、日立のデジタルチケッティングおよび決済機能を組み合わせたアプリを開発し、長崎市の魅力を再発見できる観光ルートの検索から、位置情報に基づく各種交通・観光チケットの購入、決済までをスマートフォンのアプリ上でシームレスに行える、観光型MaaSの実現に取り組む。
実験で得られたデータから効果検証を行い、観光客一人一人に寄り添った新しいサービス基盤を開発し、全国展開を目指していく。
観光による地域振興は、多くの地方自治体において、地域経済の持続可能性を向上させる重要な施策の一つ。観光客の移動ルートの傾向や課題を把握し、的確に興味関心を捉えた魅力的な観光サービスの提供が求められている。
ゼンリンは、2021年3月23日に、長崎県、長崎市の協力のもと長崎市にて観光型MaaSの実証実験を開始することを発表。今回の実証において、日立は、ゼンリンの協業パートナーとして、観光型MaaS実証実験の中核となるサービス基盤の開発に共同で取り組む。
実証実験では、観光客のツアーへの参加や観光施設の入館、商業施設での買い物特典といった、さまざまな観光サービスをアプリから購入できるほか、スマートフォン画面のチケット提示で簡単にサービスを利用できるなど、旅先での快適さと利便性の向上を目指す。
さらに、実証実験で得られたデータを基に、ゼンリンが整備を進めている地図データベース「Mobility based Network」と、デジタルチケッティングや決済機能といった日立のLumadaソリューションを組み合わせ、観光客の行動や購買実態を位置情報で可視化することにより、観光客の移動や購入サービスに応じて、経路付近の飲食店や関連するアクティビティのレコメンドをデジタルマップ上で提供するほか、クレジットカード以外の複数の決済手段に対応する、新たなサービス基盤の構築を目指す。
ゼンリンと日立は、実証を通じ、新たな観光型MaaS基盤を構築し、全国展開を図るなど、持続可能な地域社会の実現に向けて共同で取り組んでいくとしている。
ゼンリンと日立で開発するサービス基盤の特長
1.さまざまな交通手段を同一地図上で可視化し、初めての土地でも快適な移動を実現
サービスの地図基盤である「Mobility based Network」は、自動車用ネットワーク、鉄道路線、駅構内通路、歩行者用ネットワークなど、移動に最適化された地図データベース。各ネットワーク間は交通結節点として接続されているため、電車からバスへの乗り換え経路の表現はもちろん、IoT機器で収集した移動情報を可視化するための地理空間情報としての活用に貢献する。
2.ブロックチェーンとIoT技術を活用し、安全性を担保しながら利便性の高いサービスを実現
異なるサービスの権利情報をブロックチェーンで統合管理する日立の「権利流通基盤」を活用したデジタルチケッティングにより、利用者ごとに発行する共通IDを介して、各サービスの安全性・独立性を担保しながら、鉄道やレンタカー、ツアー予約といったさまざまなサービスを専用アプリ上で一元的に利用することができる。
また、IoTデバイスとリアルタイムに接続し、柔軟かつ迅速な値段設定と決済を支援する日立の「IoT決済プラットフォームサービス」を活用し、決済手段はオープンAPIで公開していることから、クレジット、デビット、プリペイドなどさまざまなキャッシュレス決済に対応することが可能。出発前にアプリでチケットを事前購入しておき、現地ではキャッシュレスでスマートフォンを提示するだけで施設の利用が可能になるなど、旅行時の利便性を高める。また、チケットを購入して友人にプレゼントすることも可能なほか、取得したクーポンを他の地域で利用することもできるなど、地域間での権利情報を連携することもできる。