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2024年12月28日【MaaS】

ユタカ交通、和歌山市でAIオンデマンドMaaSの実証開始

坂上 賢治

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観光地間の移動を阻む二次交通の課題

 

ユタカ交通は12月28日、2025年の大阪・関西万博開催を視野に和歌山市内の観光交通利便性を向上させるMaaS実証実験を令和7年1月6日から2月15日まで実施する。ちなみに当地(和歌山県内)でも、万博に係る経済波及効果は約330億円を見込んでおり、これを切っ掛けに地域交通課題の解決と観光需要の拡大を目指す。

 

その中核に据えるのはAIオンデマンド交通技術を導入した周遊型サービス「和歌山城下町まるごとパス」で、スマートフォンからタクシーを呼び出し、観光地間を効率的に移動できる仕組みを提供するという。また和歌山県内の観光地巡りをサポートする観光タクシーや、関西国際空港と和歌山市間のアクセスを支える送迎タクシー等を展開する。

 

©和歌山県公式観光サイト

 

そんな和歌山県内でも特に和歌山市は、和歌山城や紀三井寺などの観光名所を有する一方で、観光地間を結ぶ二次交通が未整備であるという課題を抱えている。

 

©和歌山県公式観光サイト

 

そもそも当地は〝いにしえの時代〟より、深い山々と入り組んだ海に取り囲まれている環境ゆえ神仏の霊域と称される程、風光明媚な土地柄。

 

©和歌山県公式観光サイト

 

点在する自然が創り出した森林や巨石、飛沫をあげる滝などは、1000年を超える昔から神仏を祀る者たちにとって修行の場とされてきた。そのため主要駅やバス停などから観光地へのアクセスが限定されている。これが現代に於いても観光客の移動の不便さが地域観光の発展を妨げている。

 

万博で予想される和歌山県への訪問客180万人への対策

 

実際、和歌山市が実施した地域公共交通に関する調査( 和歌山市における地域公共交通の利用実態について )では、バスを利用しない理由として「他の交通手段の方が便利」、「最寄りのバス停までが遠い」、「目的地付近にバス停がない」といった回答が寄せられ、「その他」の回答では「バスの本数が少ない」という意見も多く挙がっていて、公共交通の利便性不足が、観光客の移動に於ける大きな障壁となっている。

 

 

しかし一方で和歌山県万博推進課によると、2025年大阪・関西万博では、和歌山県を訪れる観光客が約189万人に達すると予測されており、観光消費による経済波及効果は約330億円に上ると見込まれているという 。そこで、これを受け和歌山市内でも急増する観光客への対応や受け入れ態勢の強化が求められているようだ。

 

©和歌山県公式観光サイト

 

今回始動したMaaS実証プロジェクトは、観光地間の移動に於ける不便を解消するために開発された。より具体的には「和歌山城下町まるごとパス」に於いて、全国的にも注目を集めるAIオンデマンド交通を導入。

 

利用者がスマートフォンでタクシーを呼び出すと、AIが効率的なルートを算出し、乗合型タクシーの運営をスムーズにする仕組みを採用した。これにより効率的な移動が実現し、移動コストも抑えることが可能にしている。

 

©和歌山県公式観光サイト

 

例えば、和歌浦・紀三井寺の宿泊施設から南海和歌山市駅で荷物を預け、その後和歌山城を観光し、城下のぶらくり丁で買い物を楽しんだ後、再び南海和歌山市駅から電車で帰宅するルートを想定すると、通常のタクシー利用では約7,000円掛かるところを、送迎プラン付きの周遊パスでは3,000円(税込)で利用可能という数字が割り出されていると謳っている。

 

対して同サービスはタクシー事業者にも大きなメリットをもたらすとした。というのはAIによる効率的な配車によって走行距離や空車時間を削減され、結果、稼働率の向上と収益の最大化が期待されているからだとした。

 

和歌山城下町まるごとパスの周遊エリア

 

今回提供される主な商品・サービス概要は以下の通り

 

実施期間:令和7年1月6日〜2月15日

・和歌山城下町まるごとパス 2,500円(税込)
 +ホテル送迎付き 3,000円(税込)
AIオンデマンド交通を活用し、スマートフォンでタクシーを呼び出して和歌山の城下町と言われる市内の観光地や店舗・施設を巡れる周遊パス。複数の利用者で乗り合わせる仕組みを採用しており、手頃な価格で自由に観光することができる。また、ホテル送迎付きのパスでは、市内の周遊に加え、朝・夕に南海和歌山市駅・JR和歌山駅と和歌浦・紀三井寺の所定の宿泊施設を繋ぐ送迎が付く。

 

・関空送迎タクシー その他
関西国際空港⇔和歌山市間を送迎するサービス。
▷片道 24,000円(税込)
▷往復 46,000円(税込)
その他高野山、白浜等の送迎も手配可能。

 

・和歌山観光タクシー

和歌山市発着の観光タクシーで、観光地間の移動を快適にサポートする。グループでの貸切利用に適している。
▷和歌山市内観光(3時間) 38,500円(税込)
▷高野山観光(6時間) 68,000円(税込)
▷田辺・白浜観光(9時間) 92,500円(税込)
▷フリープラン 3時間 38,500円 / 6時間 68,000円 / 9時間 92,500円(税込)

 

・食事券 7,700~15,000円(税込)
観光中の食事に利用できる特別なプランを提供する。「幻の高級魚」と呼ばれるクエを堪能できる「クエ鍋コース食事券」や、和歌山の食材を中心に季節の食材を生かした「イタリアンコース食事券」など地元の食事を愉しめる。

クエ鍋コース食事券

イタリアンコース食事券

 

・特典
パス・チケットの利用で和歌山市内の特典が付つ。Tea&Coffee Freetownでは、1500円以上の買い物でセレビティー1本または、おから茶1本進呈特典が受けられるなど、対象店舗の条件をクリアすることでサービスとしての特典から得られる。

 

その他、市内の移動を手軽にするシェアサイクル(利用には「HELLO CYCLING」アプリが必要)や、簡単にGOアプリでタクシーを呼び出せるサービス(利用には「GO」アプリが必要)もあり、多様な移動手段で観光客の利便性をサポートする。

 

また、期間中、特設サイトやチラシ、ポスターを見た先着80名に、1,000円割引のクーポンを配布する。

 

この商品による将来の社会展望
AIオンデマンド交通を活用した「和歌山城下町まるごとパス」を中心に、和歌山市内での観光利便性を大幅に向上させ、観光客に効率的で快適な移動体験を提供。

 

これにより、地域交通インフラの充実が促進され、観光産業の活性化や地域経済への波及効果を期待する。更に2025年大阪・関西万博を契機に、国内外から訪れる多くの観光客を和歌山市に迎え入れ、その魅力を世界に発信する絶好の機会になるとしている。

 

城わかライド特設サイト:https://yutaka.pass.ryde-go.com/
※サービス開始の1月6日からサイトオープン

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。