横浜ゴムは6月23日、信州大学学術研究院(繊維学系)の鈴木大介准教授らの研究グループと、有機溶剤や補強剤などの添加剤を使わずとも亀裂(クラック)に高い耐久性を有するゴム材料を、高分子微粒子(※1)を活用して共同開発したと発表した。
この研究で得た知見を元にさらに研究を進めることで、人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発に繋げることが期待できるほか、開発したゴム材料は簡単に劣化なくリサイクルできることから、サーキュラーエコノミーへの貢献も期待できると云う。
なお、この成果は、米国化学会のLangmuir誌に日本時間の6月17日に掲載された。
今回の研究では、重合方法の一つとして知られるミニエマルジョン重合法(※2)によって合成した高分子微粒子(以下、微粒子)および、その微粒子分散水溶液(以下、分散水溶液)を用い、分散水溶液から水を蒸発させて作製した微粒子フィルム(※3)(ゴム材料)を活用。
この微粒子フィルムには、超分子化合物(※4)として知られるロタキサン分子(※5)を微粒子の内部に架橋剤として導入。補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功した。
また、ゴム材料としての高い伸縮性も維持しているほか、微粒子のみで作製されているため、環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解することが可能で、分解後、揮発性の高いエタノールのみを蒸発させ、元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻すことができるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生できると云う。
<微粒子フィルムの形成プロセス>
横浜ゴムグループは、2021年度から2023年度までの中期経営計画「Yokohama Transformation 2023(YX2023)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーサン)で掲げる“未来への思いやり”のスローガンの下、事業を通じた社会課題への貢献を持続的な企業価値向上に繋げていくとしている。
また、環境課題に関して、中長期目標と達成に向けて設定した「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「自然との共生」の3つを柱の内、「サーキュラーエコノミー」に於いて、サステナブル素材を活用したタイヤ開発を推進していくとしている。
※1)高分子微粒子:マイクロスケール(1マイクロメートル=100万分の1メートル)より小さい高分子の粒子。
※2)ミニエマルジョン重合法:エマルジョン重合法の一つで、超音波を照射することによってモノマーと開始剤を水中内で微粒子化した後に重合する方法。
※3)微粒子フィルム:高分子微粒子の集合体。
※4)超分子化合物複数の分子が比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体。分子を集合させることで、分子の機能を制御したり、新機能を発現することができる。
※5)ロタキサン分子:環状分子に軸分子が貫通し、その環状分子が軸分子から抜けないようにした構造を有する分子集合体。
*タイトル画像:研究で作製した微粒子フィルムの切れ目からの引裂試験の様子。