ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸(※1)は8月3日、アルフレッサホールディングス傘下でヘルスケア商品(※2)の卸売販売を行うアルフレッサと、ビッグデータとAIを活用して配送業務量予測および適正配車を行うシステムを開発し、その導入を開始すると発表した。
背景および目的
日本では、高齢者人口の増加と生産年齢人口の減少に伴い、社会保障費の増加とその財源確保が社会的課題の1つとなっている。また物流分野では、長距離ドライバーの不足に象徴される労働力不足が深刻化。医療分野では、コロナ禍における医療従事者への負荷や、感染リスクの低減が課題となっている。さらに昨今、気候変動リスクへの対応として、医薬品の配送車両におけるCO2削減の重要性も増すなど、安全で確実な医薬品流通ネットワークを持続可能な状態にするための課題が数多く存在している。
ヤマト運輸とアルフレッサは、これらの課題の解決に向け、今年7月、ヘルスケア商品の共同配送スキームの構築に向けた業務提携を発表。今回、第一弾として、ビッグデータとAIを活用して、顧客毎に日々の配送業務量を予測する配送業務量予測システムと適正な配車を行う配車計画システムを開発し、その導入を開始する。
※1:2020年7月の締結当時はヤマトロジスティクス。ヤマトロジスティクスは、2021年4月にヤマト運輸に事業統合された。この取り組みを担当するグローバルSCM事業本部では、法人顧客や業界全体のサプライチェーン最適化による経営課題の解決を支援している。
※2)ヘルスケア商品:医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器、医療材料、診断薬等。
導入システムとスキーム
① 配送業務量予測システム
アルフレッサがこれまでに蓄積してきた「販売」「物流」「商品」「需要トレンド」などのビッグデータをAIで分析し、顧客毎の配送業務量(例. 注文数、配送発生確率、納品時の滞在時間など)を予測。AIが学習することで各種予測の精度が向上し、より効率的な配車計画の作成が可能となる。
② 配車計画システム
①の配送業務量予測システムで得られた情報を基に、配車計画を自動的に作成。ヤマト運輸が蓄積してきた物流や配車に関するノウハウに加え、渋滞などの道路情報を活用することで、効率的かつ安定的な配車計画を作成する。また配送の業務量が多い時には、ヤマトグループの保有する配送リソースも機動的に活用することで、これまで以上に安定した配送を可能とする。
③ パッケージ納品
医療機関へ医薬品を納品する際、アルフレッサの配送員と医療機関の医療従事者が対面で検品作業を行っているが、納品するアイテム数が多い場合には対面作業の時間が長くなることも。アルフレッサでは、これまで納品時に検品作業が不要な、「パッケージ納品」を展開してきたが、今回導入するシステムに加え、デジタル機能の活用による事前検品を増やすことで、医療機関における対面作業時間を大幅短縮を実現する。
システムの導入効果(現在との比較。両社予想値)
① 配送生産性の向上(最大20%向上)
配送業務量予測システムと配車計画システムを導入・活用することで、従来以上に効率的な配送が可能に。
② 走行距離およびCO2排出量の削減(最大25%削減)
配車計画システムを導入・活用することで、従来の固定化された配送ルートではなく、日々の業務量に応じた最適な配送コースを設定することが可能。これにより車両の走行距離を短縮しCO2排出量を削減することで、環境負荷を低減。
③ 医療機関における対面作業時間の削減(最大20%減)
従来の対面による検品作業から、デジタル機能を活用した事前検品も踏まえた「パッケージ納品」へシフトすることで、医療機関における対面での作業時間を大幅削減。
展開スケジュール
2021年8月からアルフレッサの首都圏の支店を対象に導入を開始。その後、アルフレッサの全国の支店へ順次、拡大していく予定。また並行してスキームのブラッシュアップを行い、業務提携の第二弾、第三弾を両社で推進していく。
アルフレッサとヤマト運輸の両社は、持続可能な医薬品流通ネットワークを構築するため、ヘルスケア商品の共同配送スキーム構築に向けた検討を引き続き進めていくとしている。
[問い合わせ先 ]
ヤマト運輸株式会社
メールcyozaiyakkyoku@y-logi.com