生活物資を積んで、奄美大島から与路島に飛ぶ産業用無人ヘリ「FAZER R G2」(写真はAID社提供)
平時は生活用品、医療品や学校給食の食材を積んで定期運航
奄美大島から定期船で約1時間、青い海に”離島の離島”と言われる与路島と請島(ともに鹿児島県大島郡瀬戸内町)が浮かぶ。二つの島には合わせて150人ほどの島民が暮らしており、日用品等を運ぶ頼みの定期船は高波などで欠航することも少なくないため、不安定な生活物流が大きな課題となっている。
そうしたなか瀬戸内町と日本航空(JAL)が共同で設立した奄美アイランドドローン(AID社)の運航によって、島の上空にヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2( UMSマルチソリューション )」を用いた定期便が飛んでいる。
この機体は、隔週で2便ずつ、奄美大島側のヘリポートから医療品や学校給食の食材、新聞等を運んでおり、その活躍ぶりは、頼れる生活インフラとして島民から歓迎されており、現在、無人ヘリの機長にあたるオペレーターは、JAL本社(東京・天王洲)の一角に据えられた基地局から、約1,300キロ離れた現地の運航補助者と連携して遠隔操作を行っている。
衛星通信運航で災害発生時は緊急支援物資で島民の暮らしをサポート
この機体を操縦するAID社の石井啓吾氏(JALより出向)は、「就航の背景には自然災害への備えがあります。3年半ほど前、災害時の物資輸送について瀬戸内町から頂いた相談を切っ掛けに、時間を掛けて検討を重ねてきました。
こうして島の暮らしを支える定期運航を重ねていくことで、発災時に即時の対応ができるよう備えているという側面もあります。
ただ、この運航を定着させていくためには、地元人材の操縦者を養成していくことが不可欠だと考えています。より地域に根差した事業体制を築いていくために、今後、運航ノウハウの移管等も順次進めていきたいと考えています」と語っている。
与路島の港に到着する無人ヘリとそれを迎える島民
無人ヘリによって運ばれるのは、医療品や給食食材、新聞など
そんな無人ヘリの定期運航が始まって、思わぬメリットの発見もあった。例えば悪天候等による船舶の欠航は、比較的、早い段階で決定される。その後、気象条件が回復しても出航することはない。
一方、船舶の約半分の30分程度で島に到着する無人ヘリは、フライトの直前までその判断を待つことができる。現在、無人ヘリが運んでいる物資の中には奄美大島で調合された島民のための処方薬なども含まれており、こうした長所も、災害時などでは大きな力となる。
南北約200キロの洋上に大小の島々が点在する奄美群島。しかし災害時、集落孤立化等が懸念されるのは与路島と請島だけではない。AID社では、ドローンを活用して島の暮らしを支える”離島モデル”を、奄美群島全体に展開していくことも見据えている。