TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)は6月7日、2021年FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦「ラリー・イタリア サルディニア」で、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(ヤリスWRC 1号車)が優勝、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)が総合2位となったと発表した。
また、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組 (69号車)は総合25位で完走。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、ヤリスWRCで出場の勝田貴元/ダニエル・バリット組(18号車)は、前戦に続き総合4位を獲得し、トップ4に3台のヤリスWRCが入った。
2020年は新型コロナウイルスの影響により10月に順延となったラリー・イタリア サルディニアであったが、今年は例年通り6月に開催。6月3日(木)から6日(日)にかけて開催された。
また、ラリーの中心となるサービスパークは、2020年まで7年間西海岸のアルゲーロに置かれていたが、今回はかつて置かれていた、島北東部のオルビアに戻っている。
セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア
1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)
69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)
■DAI1
競技初日のデイ1は、8本計127.40kmのステージが、サービスパークの南側から西側にかけてのエリアで行なわれた。好天に恵まれ、気温もかなり上昇。ステージはドライコンディションとなり、ドライバー選手権のリーダーとして出走順1番手で初日のステージに臨んだオジエにとっては、不利な路面コンディションとなった。サルディニアのステージの多くは、道の表面が目の細かい砂利や砂に覆われており、ドライコンディションでは非常に滑りやすくなる。特に、その砂利や砂を掃き飛ばしながら走行する1番手スタートのドライバーは、通常かなり大きなタイムロスを余儀なくされる。しかしオジエは、1日を通して出走順の不利をあまり感じさせない好走を続け、8本のステージのうち5本で3番手以内のタイムを記録。一時は総合2位につけた。最終的には総合2位と16.8秒差の総合3位で1日を終えた。
オジエに次ぐ2番手スタートとなった、ドライバー選手権2位のエバンスもまた、後続のライバルよりも滑りやすい路面での走行を強いられた。午前中のステージでは、チームメイトに比べるとクルマに対するフィーリングがそれほど良くなく、タイムも思うように伸びなかったが、午後は状況が好転。オジエと25.8秒差、総合5位の選手と1.2秒差の総合4位でデイ1を走りきった。なお、ロバンペラは午前中の3本のステージで総合2位を守り続けるなど非常に好調であったが、SS4でトラブルによりスロー走行を余儀なくされ、その後デイリタイアに。
なお、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、今回もヤリスWRCで出場の勝田貴元は、所々でトップに迫る速さを示し、総合6位につけている。
1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)
69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
■DAI2
競技2日目デイ2は、サービスパークの南側から西側にかけてのエリアで8本計129.62kmのステージが行なわれた。早朝は断続的に小雨が降るなど天気は不安定であったが、ステージが始まる前には回復し、気温もかなり上昇した。
オジエはデイ1で不利な出走順トップでステージに臨むも、首位と36.2秒差の総合3位につけた。その結果、デイ2では出走順が8番手と後方になり、不利な走行条件から開放されたことで本来のスピードを発揮。まず、2本目のSS10でベストタイムを記録して総合2位に順位を上げ、SS12でもベストタイムをマーク。同ステージで首位のライバルがトラブルに見舞われたことにより、総合1位に立った。その後もオジエはペースを緩めることなく、デイ2の全8ステージのうち、5ステージでベストタイムを刻み、首位の座をしっかりと固めて1日を終えた。前日総合4位のエバンスは、走り始めから良いフィーリングを掴み、SS11でベストタイムを記録するなど安定して好タイムを刻み続け、SS12で総合3位に浮上。さらに、SS15で順位を争っていたライバルがアクシデントで止まったことにより総合2位に上がり、1日の最後のSS16では2本目のベストタイムをマーク。首位オジエと38.9秒差の総合2位で走りきり、総合3位のライバルとの差を22.7秒に拡大した。
再出走を果たしたロバンペラは、2番手という不利な出走順にも関わらず良い走りを続け、1日の終盤には4番手タイムを2回記録するなど着実にスピードを上げ、翌日の最終ステージに設定されるパワーステージでは、できるだけ多くのボーナスポイントを獲得することを目指す。
デイ1で総合6位につけた勝田は、堅実な走りで困難なステージを走破し総合4位に浮上。総合3位のライバルとは3分近いタイム差があったが、それでも前戦ラリー・ポルトガルに続く、自己ベストリザルトの総合4位獲得に大きく近づいた。
1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)
1号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
■DAI3
競技3日目デイ3はサービスパークの北側、島の北端エリアで2本のステージを各2回走行。4本のステージの合計距離は46.08kmと、3日間で最短であった。天気は曇りで最終ステージでは一時的に小雨が降るも、路面は概ねドライコンディション。
デイ2で首位に立ち、総合2位のエバンスに38.9秒という大きな差を築いていたオジエは、ボーナスポイントがかかる最終のパワーステージに焦点を合わせ、そこまでの3ステージはやや抑え気味のペースで走りタイヤを温存。そして、パワーステージでは4番手タイムを記録し、今シーズン3回目の優勝を飾ると共に、ボーナスの2ポイントを獲得。ドライバー選手権では2位エバンスに対するリードを11ポイントに拡大し、選手権リーダーの座を守った。オジエのサルディニアでの優勝は2015年以来で、通算4回目となる。また、チームにとっては初めてのサルディニア制覇となった。
総合2位のエバンスは、オープニングのSS17でベストタイムを記録。さらに、SS19でもベストタイムを刻み、総合3位のライバルに対するリードを37.5秒に拡大した。そして迎えた最終のパワーステージでは、ウォータースプラッシュで水がエンジンに吸い込まれて一時的にスローダウンしたが、それまでに築いていた総合3位のライバルに対する大きなリードにも助けられ、今シーズン3回目となる総合2位を獲得。ドライバー選手権2位を堅守した。また、チームは今シーズン開幕からの5戦で4勝し、そのうち3戦で1-2フィニッシュを達成するなど好調を維持。マニュファクチャラー選手権首位を守り、2位のライバルチームに対するリードを49ポイントに拡大した。
デイ1で序盤総合2位を走りながらも技術的な問題によりデイリタイアとなったロバンペラは、デイ2で再出走。そして、デイ3ではパワーステージでのボーナスポイント獲得に注力し、3番手タイムで3ポイントを獲得。次に繋がるスピードを示してラリーを締めくくった。また、勝田はコ・ドライバーのダニエル・バリットが高い気温によって熱中症気味になり、気分があまりすぐれなかったため、最終日は総合4位の座をしっかり守ることを優先して走行。前戦のラリー・ポルトガルに続きWRC自己最高記録の総合4位でフィニッシュし、開幕から5戦連続でポイントを獲得してドライバー選手権5位に順位を上げた。なお、バリットはラリー後に医師の診断を受け、身体に問題がないことが確認されている。
33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)
69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)