トヨタグループのソフトウェア開発を担当するウーブン・プラネット・グループは1月28日、オープニングイベント「ザ・ジェネシス」をオンラインで実施し、各事業会社の活動内容を公開した。この中で、自動運転とドライブが選択できるコンセプトに基づいたモビリティを2021年に市場投入するほか、ソフトウェアプラットフォーム「アリーン」を幅広い領域に活用する方針などを表明した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
グループの枠割は「次世代のテクノロジーを加速させる」こと
ウーブン・プラネット・ホールディングスのジェームス カフナーCEO(最高経営責任者)はグループの枠割について「次世代のテクノロジーを加速させる」と強調。ソフトウェアを先行開発し、これをハードに活用する「ソフトウェア・ファースト」を掲げた。
オープニングイベントには豊田章男トヨタ自動車社長の子息である同ホールディングスの豊田大輔シニア・バイス・プレジデントも登場。富士山の日にあわせて2月23日に鍬入れ式を行う実験都市「ウーブン・シティ」を紹介し、「リアルな実証実験の場として活用する」と表明した。
同グループはTRI-ADの事業を拡大させ、2021年1月に設立・発足した
ウーブン・プラネット・グループは自動運転関連ソフトウェアの先行開発を担うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)の事業を拡大させ、2021年1月に設立・発足したものだ。
グループは持ち株会社ウーブン・プラネット・ホールディングスの下に、事業会社のウーブン・コアおよびウーブン・アルファ、グローバル投資ファンドのウーブン・キャピタルを擁する。
投資対象は自動運転・人工知能・コネクティビティ分野などで運用総額8億ドル
ウーブン・コアは自動運転技術の開発、実装、や市場導入・普及を担う。ウーブン・アルファはウーブン・シティ、アリーナなどの新領域における事業拡大機会の探索、革新的プロジェクトの立ち上げなどを推進する。
ウーブン・キャピタルは米国に拠点を置き、革新的なテクノロジーやビジネスモデルを開発する成長段階の企業などに投資するとともに、連携する。投資対象は、自動運転モビリティ、人工知能、コネクティビティ分野など。運用総額8億ドルでスタートした。
モビリティ・チームメイト・コンセプトに基づいたモビリティを2021年中に市場投入
ホールディングスのCTO(最高技術責任者)でウーブン・コアのチェアマンを兼務する鯉渕健氏はドライバーとシステムが相互に見守り、助けあう「モビリティ・チームメイト・コンセプト」に基づいた高度安全運転支援のモビリティを2021年中に市場投入すると表明。さらにMaaS向けの実証実験を進めるモビリティについても2021年中に披露する意向を示した。
またホールディングのCOO(最高執行責任者)とウーブン・コアのプレジデントを兼ねる虫上弘志氏はソフトウェアを先行開発し、それをハードウェアに搭載する「ソフトウェア・ファースト」の手法を進めていることを披露するとともに、OTA(オーバー・ザ・エアー)によるソフトウェアのアップデートを採用していく考えを示した。
ウーブン・アルファが開発する「アリーン」の標準OS化の可能性を否定せず
ソフトウェア・ファーストを展開すれば、モビリティの開発期間短縮や効率化が可能になる。
ウーブン・アルファが開発するアリーンはクルマの安全性やアプリケーションプログラム・インターフェースなどの基本的な要素を包括した最先端のソフトウェアプラットフォーム。車両や開発ツールなどに幅広く使えるとし、メディアとの質疑応答で自動車ソフトウェア用の標準OSにできる可能性を否定せず、すでに外部ユーザーの存在を認めた。
トヨタとは広い領域では協業していくことになるとの見方を示す
ウーブン・プラネット・グループがトヨタグループのソフトウェア内製化の担っていく点については、「コアな分野は基本的にグループ内で開発し、広い領域では協業していくことになるだろう」との見方を示した。
背景として、これからの自動車は「特にソフトウェアの重要性が増す」と述べ、コアとなる分野のノウハウを持つ必要を強調した。カフナーCEOはコロナ禍を経験して「新たな課題が生まれ、テクノロジーがより見直されるようになった」と述べた。