日本では、NTTドコモ、ソフトバンクなどと5G通信環境下で協業
電子測定ツールを提供するキーサイト・テクノロジーは4月12日、第5世代移動通信システム(5G)商用化の取り組みに関する報道陣向け説明会を東京都内で開いた。5G商用化では、米韓などで一部サービスがスタートしたほか、わが国でも最初の5G対応の電波割り当てが決定され、いよいよ5G商用化時代の到来を迎えようとしている。
こうした中、キーサイトはまずはNTTドコモやソフトバンクなどの通信キャリアへテスト・ソリューションを提供し、通信環境の整備を進めたあと、5Gで生まれる新たなビジネス分野へと事業をつなげていく考えで、とくに期待しているのがモビリティ分野だ。
説明会は「5G商用化に向けたグローバルでの取り組み」と題し、2015年から毎年、日本で開催している「キーサイト5Gサミット」にあわせて実施した。キーサイト・テクノロジーは1999年に米ヒューレット・パッカードから会社分割したアジレント・テクノロジー、さらにそのアジレントから2014年に電子計測事業部門が独立して発足した。5G商用化に向けて、キーサイトは通信環境下でのテスト・ソリューションを幅広く提供しており、とくにミリ波帯では世界的に先駆的な役割を目指す。
5G商用化をめぐっては、日本でも2019年、2010年に相次いで開かれるラグビー・ワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックのスタジアムなどでの取り組みを皮切りに、2020年以降、本格的に商用化が進む見通し。4月10日には総務省がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの通信キャリア4社へ、「5G」電波の割り当てを決め、発表した。
キーサイト・テクノロジー株式会社のチエ・ジュン社長
ラグビーW杯、東京5輪での商用サービス開始を皮切りに、モビリティ分野に期待
説明会では、米カリフォルニア州サンタローザにグロバル本社があるキーサイト・テクノロジーズ・インクのKailash Narayananワイヤレス部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーと日本法人であるキーサイト・テクノロジー(本社・東京都八王子市)のチエ・ジュン社長が登壇し、5Gに関連した世界の動きや日本での取り組みについて解説した。
ジュン社長はキーサイトについて元々のヒューレット・パッカードのDNAを引き継いだ企業とし、2014年の会社分割、独立についても「当時から、5G商用化に着目して実現した」ものだと強調した。とくに同社が強みとしているのがミリ波帯での5G商用化であり、「ヒューレット・パッカード時代の40年前からミリ波の研究、開発を進めており、宇宙・航空分野などですでに技術的に実証済み」と訴えた。
5Gは現行の4Gに比べて1000倍のシステム容量や100倍の接続端末数を実現する圧倒的な通信データ量、多重通信だけでなく、超低遅延化が可能など、技術進化が著しい。このため、商用化をめぐっては携帯電話やスマートフォンなどの移動体ビジネスにとどまらず、全く新しいビジネス分野の登場も期待されており、その有力分野の一つがモビリティ分野。自動運転やコネクテッドカー、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などのシステムに5Gが応用、使われるようになるだろうと見られている。
キーサイトテクノロジーズ・インクのKailash Narayananワイヤレス部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー
Narayananワイヤレス部門バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーは5Gの普及、展開について、「BtoC(個人向け)から進み」、次のステップで「BtoB(企業間)へと広がるだろう」との見方を示し、とくに有力分野に掲げたのがモビリティ分野である。実際、世界の多くの主要な自動車メーカーが5Gの動向に関心を示しており、ミリ波に対応したプロトコルづくりも始まっているという。
一方で、5Gには課題も少なくない。ミリ波などの高周波になると、大量データが送信できる半面で、損耗も大きい。このため、「コンクリートや木の葉などの障害物があれば、どうなるか」など通信環境下でのデータ検証が不可欠である。そこでキーサイトはエンドツーエンドの5Gテストソリューションを提供し、5Gの商用化に寄与する。ミリ波環境下では、技術的観点から「標準化づくり」にも関わっている。
日本では、これまでにこうしたテスト・ソリューションをNTTドコモやソフトバンク、5Gコンソーシアムの「5G MF」などに提供し、これら通信キャリアの5G商用化へのサポートに乗り出している。これにより、5G商用化へ向け、通信端末開発や基地局を含むネットワーク開発に貢献したいとしていた。(佃モビリティ総研・松下 次男)