WHILL社は6月16日、国立成育医療研究センター産科病棟で「WHILL自動運転システム」の実証実験を開始したことを発表した。
サービスはこれまで、病院外来や空港などでの活用されてきたが、病棟内での導入は国内初となる。
出産直後の患者は、身体の痛みなどのため車椅子でLDR(陣痛・分娩・回復室)から病室に戻ることが多く、医療スタッフが車椅子を押して移動している。その際、医療スタッフは新生児を乗せたカートや、患者さんの荷物などを運ぶ作業もあり大きな業務負荷がかかっていた。
実証実験では、WHILL自動運転システムを産科病棟に取り入れ、医療スタッフの業務効率化や患者の移動における安全性・利便性などを検証していく。
なお、この取り組みは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の、AI、IoT、ビッグデータ技術を用いて、医師や看護師などの医療従事者の抜本的な負担の軽減を実現することを目的とした「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトによる支援を受けて行われている。
今後の展望については、実証実験の結果を基に国立成育医療研究センターとWHILL社は連携を深め、 医療の現場におけるサービスの向上を図る。将来的には、WHILL自動運転システムの利用範囲を拡張する計画を進め、現在の病室前までの移動サービスから、患者がベッドへの移動がより楽になるよう、各病室内まで自動運転で入っていくシステムを構築することを検討していく。
WHILLを実際に利用した患者からは、「従来の車椅子より振動が少ないので乗り心地が良かった」「WHILLの振動が少ないので、傷(会陰切開)に響かなくてよかった」など、好評だとしている。
■WHILL自動運転システム
WHILL社が開発する、パーソナルモビリティに自動運転・自動停止機能などを搭載した「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するシステムから構成される、歩道・室内領域のための自動運転システム。あらかじめ収集した地図情報と、センサー群で検知した周囲の状況を照らし合わせ、自動走行および自動運転による無人での返却が可能。
■研究概要
– 導入台数:1台 ※エリア拡張とともに必要台数をレビュー
– エリア:国立成育医療研究センター6階産科病棟 ※当初は西エリアからスタート、その後東エリアへ拡張
– 内容:LDRから出てきた出産後の患者をWHILL自動運転システムにより、病室の前まで搬送。病室までは自動運転モードで走行し、利用終了後は無人運転により、ナースステーション前にあるWHILL保管場所に戻る。
– 検証項目:
・周産期管理を要する患者を対象とした場合にも安全を確保し、快適な利用が可能であるか
・同伴する医療スタッフにとって従来の車椅子搬送と比較して負担軽減が図れているか
・利用における改善点
– 調査方法:無記名式アンケート