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2024年12月20日【CASE】

ウェイモ、再保険会社の調査で人間の運転を超える安全性を示す

坂上 賢治

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米アルファベット傘下のウェイモ( Waymo )は12月19日、自社ソフトウエア「Waymo Driver( 自動運転システム全体を包括 )」を介して運行した延べ2,530万マイルもの自動運転車の走行データ調査を、世界有数の再保険会社スイス・リー( Swiss Re Ltd. / 本拠チューリッヒ )へ依頼。人間の運転データと比較した上で事故発生に至る確率調査を実施した。

 

 

それによるとフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、オースティンと、自動運転車の行動範囲が拡大していくに連れて、ウェイモの自動運転車( Waymo Driver )は、最先進の運転支援システム ( ADAS ) が搭載された人間が運転する車両よりも、安全であることが実証されたという。

 

この調査では、ウェイモが賠償請求に至った事故調査を含むスイス・リー保有の50万件以上の運行記録。それを2,000億マイル以上の人間のドライバーが運転した調査実績と比較した。結果、Waymo Driverは、人間が運転する車両と比較して安全面で優位性があり、人間のドライバーと比べても物的損害請求が88%、身体傷害請求が92%減少することが判った。

 

より具体的な数字では、Waymo Driverの2,530万マイル運行に於ける物的損害請求は9件、身体傷害請求は2件。対して同じ距離を人間のドライバー運転して走行した場合の物的損害請求は78 件、身体傷害請求は26 件になった。

 

なおウェイモの指摘によると注目すべき点はWaymo Driverの安全性が、最新の安全技術を搭載した新型車両 ( 2018~2021年モデル ) との比較でも、大きく変わらない点にあると指摘している。本来、そうした最新鋭車には自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、車線維持支援、死角警告などの先進運転支援システム ( ADAS ) が搭載されている。

 

そんな最新鋭車両を人間が運転したグループと比較しても、Waymo Driverは物的損害賠償請求が86%減少し、身体傷害賠償請求が90%減少したとしている。つまり同分析では、2,500万マイル以上の運行で誰が過失を犯したのかではなく、Waymo Driverが起こした重大な衝突事故が、人間が運転する車両と比較して圧倒的に少なかったと結論づけた。

 

スイス・リー社の全運転人口と最新世代の人間が運転する車両のベースラインと、ウェイモ社の物的損害(左)および人身傷害(右)に対する賠償責任保険請求額の比較

 

この結果にウェイモの最高安全責任者を務めるマウリシオ・ペーニャ氏は、「従来から人間のドライバーの責任とリスクを評価するために使用されてきた自動車保険会社の請求データは、自動運転車の安全性能を評価する上でも強力なツールとなります。

 

そうしたツールを使用した人間の運転との比較検討は正しく画期的なものであり、それはWaymo Driverの優れた安全性を立証しただけではなく、これからは自動運転車自体が道路の安全に対して、今後どれだけ継続的な安全実績を積み上げていけるかを評価する資料としても大いに役立つものになるでしょう」と述べた。

 

 

一方でスイス・リーでグローバルP&Cソリューション責任者を担うアリ・シャーカラミ氏は、「当社の調査は、保険データが自動運転車の安全性の評価にどのように役立ち、広範な導入をサポートするのに必要なフレームワークを提供できるかを示しています。

 

今回は、複数の都市にわたる大規模なデータセットを分析することで、最新の自動運転技術が、現実の環境下でどのように機能するかについての理解が深まりました。これらの結果は、同技術が道路上をより安全な社会にしていく可能性を裏打ちするための重要な研究データになるでしょう」と説明した。

 

更にロイズ・オブ・ロンドン・シンジケートでアポロ・アイボットの社長を務めるクリス・ムーア氏は、「このスイス・リーが実施・検証した調査は、自動運転システムの安全に関わる技術の受容性を推し量る時、保険業界全体にとって貴重な洞察を提供しています。Waymo Driverへの教育を介して交通社会の安全性が高められるという現状の実績について私たちは期待を寄せています。

 

率直に言って最先端の運転支援技術が搭載された車両を人間が運転した場合と比較しても、クレーム頻度が90%低いという驚異的なベンチマーク結果には驚きを隠せません。私たちはこの取り組みを高く評価し、交通社会の自律的な未来に向けて、更なる調​​査結果の蓄積と、その成果の行く末を楽しみにしています」と語った。なお同論文は科学雑誌にも投稿されたと結ばれている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。