早稲田大学の段 中瑞研究員と富永 基樹准教授らの研究グループは6月16日、JST 戦略的創造研究推進事業に於いて、バイオディーゼルに有用な原料植物として期待されるカメリナ(Camelina sativa)のシロイヌナズナ由来のたんぱく質(人工的に高速化を施したモーターたんぱく質)を異種発現させることにより、植物体の成長促進や種子数の増加に成功した。(坂上 賢治)
藻類から高等植物までのあらゆる植物の細胞では、小胞体やミトコンドリアなどの細胞小器官と共に細胞質が活発に動く原形質流動という現象が見られる。原形質流動は細胞小器官に結合したモーターたんぱく質のミオシンXIが、細胞骨格を構成するアクチン繊維の上を運動することによって発生することでよく知られている。
これまでに研究グループは、高速型ミオシンの開発によりモデル植物であるシロイヌナズナの成長促進やサイズの大型化を明らかにしてきており、この技術のシロイヌナズナ以外の植物への応用が期待されていたが、グループはカメリナにシロイヌナズナミオシンXI由来の高速型ミオシンXI遺伝子を異種発現させ、カメリナの茎や葉の成長が促進されるとともに、種子数も増加することを明らかにした。
この成果により、高速型ミオシンXIはシロイヌナズナ以外の植物に於いて、成長促進や種子の増産に有効であることが初めて示した。また近縁種であれば、異種の高速型ミオシンXI遺伝子を発現させることでも、増産効果が得られることも明らかにした。
研究グループでは「あらゆる植物の細胞内では、原形質流動と呼ばれる細胞内輸送がみられます。シロイヌナズナで原形質流動を発生しているミオシンモーターを人工的に高速化したところ、植物の大型化が明らかとなりました。
本研究課題では、ミオシンのさらなる高速化によりシステムとしての完成を進めるとともに、資源植物として有望視されているイネでの検証実験を行い、さまざまな植物バイオマス増産に適応可能な普遍的基盤技術としての確立を目指します」と話している。
なお同研究成果は、2020年6月16日(日本時間)に植物細胞分子生物学会誌「Plant Biotechnology」のオンライン版で公開されている。