単一ソリューションだけで気候変動問題を解決させる事は出来ない
ボルボ・トラック( Volvo Trucks )は2月1日(スウェーデン、ヴェストラ・イェータランド県ヨーテボリ)の報道発表に於いて液化バイオガス車を改めて紹介している。当該トラックはCO2排出量を大きく削減させながらも、欧州委員会から求められる長距離輸送タスクを請け負える車両だという。( 坂上 賢治 )
今を遡る事5年、同社は低環境負荷の液化バイオガス ( バイオLNG ) トラックを発売した。使用される液化バイオガスは、食品スクラップを含む有機廃棄物から生成される再生可能燃料であり、CO2排出量を最大100パーセント削減出来る。
同車両についてボルボ・トラックのダニエル・バーグストランド( Daniel Bergstrand )プロダクトマネージャーは「液化バイオガストラックは、BEVトラックを使う輸送ソリューションのウイークポイントを補完するもので、貨物輸送の炭素中立の確立と、輸送企業にとっての事業上の高い持続可能性に貢献します。
この液化バイオガストラックには、以前からの420馬力と460馬力を発揮するパワーユニットに加え、500馬力の出力を発揮する新エンジンも揃えました。
また燃焼効率は技術的に大きくアップグレードされて最大4%向上。これに新しく10パーセント大型化されたガスタンクが組み合わされ、航続距離の延長に貢献しています。
これにより当社の液化バイオガストラックは、既存のディーゼル車に匹敵する性能と機動性を備えるに至っており、欧州地域ではバイオLNGとLNGの両方で600を超える供給ステーション網も充実しているため、欧州地域に於いて長距離輸送の一翼を担うに値する一手段に成長しています」と説明した。
欧州で化石由来LNGをバイオLNGに置き換える大規模計画が進む
ちなみに同社のゼロエミッションを目指す動力ラインナップは、3つの戦略( BEV車、燃料電池車、バイオガス & HVO< 水素化植物油 > &グリーン水素燃焼車 ) が並列に進む。
この液化バイオガストラックには、ボルボFH、FM、FMXで、420、460、500馬力の搭載ユニットがあり、使用燃料はバイオLNG ( 液化バイオガス ) またはLNGとなっている。またバイオガスを点火させるために少量のディーゼルまたはHVOを使用する。最大航続距離は1000キロメートルとなっている。
使用されるバイオLNG ( LBG<液化ブタンガス>とも呼ぶ ) は、液体バイオガス ( バイオメタン ) の再生可能燃料だ。先の通り、これらの燃料は有機性廃棄物( 処理プラントからのスラッジ、食品廃棄物、肥料、その他の残留物 )を消化させてバイオガスを生成させる。
ちなみにLNG( 液化天然ガス )を燃料とする場合は、地下または海底埋蔵物から抽出される化石ガス( メタン )が使用されるがバイオガスの液化プロセス自体はLNGと同様となる。
車載にあたっては、燃料搭載のための必要スペースをコンパクト化させるため、一旦マイナス162°C迄冷却して圧縮充填。これにより大量のエネルギーを搭載出来るようにして航続距離を伸ばす。
エンジン構造は、ディーゼルエンジンの高効率を活かしつつディーゼルトラックと同等の走行性能を実現。高負荷走行や長距離走行を可能にした。
より詳細には、摩擦を低減するための新しいインジェクターとピストン、新しいターボ、可変オイルポンプ、ろ過されていないオイルを処理するクランクケースベンチレーションによって効率を高めた。Euro6をクリアし燃料効率は最大4%向上している。
目下、ヨーロッパの液化バイオLNGの生産は急速に拡大しており、化石由来のLNGからのスムーズな移行が期待される。そうした中で欧州委員会は〝REPower EU〟と呼ばれる新たなプランを提唱した。
このプランでは、様々な種類のカーボンフリーエネルギーに係る国内生産能力を大きくに高める事に重点を置いている。その計画によると2030年迄にバイオガスの年間生産量を今の10倍の350億立方メートルにする目標であり、この分野は既に急速な成長段階に入っているといえるだろう。
また近年は欧州外でも液化バイオガスへの関心が高い。一方、欧州地域内だけでも2024年迄に78を超えるバイオLNGプラントの開発準備が整えられつつあり、ドイツ、イタリア、オランダは、今後数年間でバイオLNG普及の主要国に育つと予想されている。