ホームタウンのトースランダに設ける「自動車技術を育むゆりかご」
ボルボ・カーズは2月8日、自社100年のホームタウンであるイェーテボリ・トースランダの地に、次世代のプレミアムEVを支えるための基礎技術を育むだけでなく、新素材の研究、Vehicle-to-Gridなどのワイヤレス双方向充電技術、自動運転機能などを磨き、生み出すための最先端拠点「モビリティ・イノベーション・センター」を設立することを明らかにした。( 坂上 賢治 )
なおこのトースランダを含む敷地は、更に拡張工事の手が入り、周辺のエリアには、ボルボ・カーズ自らが自社のビジネスパートナーやスタートアップ企業の招聘も行っていくとしている。
同社のジム・ローワンCEOは、「私たちは、新たな研究開発拠点を造るこの取り組みを介して、車載テクノロジー、そしてクルマを取り巻く走行環境や、インフラ施設など、モビリティの未来を発展させるエコシステムを構築することを目指しています。
そんな私たちが掲げるテーマと目標の最終到達点は、現在のテクノロジーを更に切り拓き、グローバル人材を惹きつけ、他の最先端ビジネスと繫がることにあるのです。
従って全く新しく設けられるイノベーション・センターでは、ラボ内で基礎技術を研究するだけではなく、未来の社会を模した環境下で先端技術をテストすることができる拠点となります。
実証実験のための街を作って、次世代のイノベーションを試す
つまり私たちが未来を想定して生み出した次世代のイノベーションを、ひとつの都市環境のような場所でテストし、検証し、展開することができるようになるのです」と述べた。
そこでまずは新たな拠点を作るための第一のステップは、既存の敷地の向かい側に近代的なオフィスビルを建設すること。そんな新たな建物は、2030年までに完全な電動化を実現し、新しいテクノロジーとサステナブルなモビリティ業界のリーダーとなるというボルボ・カーズの戦略的目標を実現するための極めて重要なものだとしている。
最初に新設される25,000平方メートルの建屋は、ボルボ・カーズ占有の拠点となる予定で、木造用建築素材を組み合わせたハイブリッド構造となる。
それは鉄骨とコンクリートからなる従来の骨組みと比べ、二酸化炭素排出量を15%削減できるものとなりそうだ。着工自体は、2024年第2四半期を予定しており、2026年までに完成する。従って2027年のボルボ・カーズ創立100周年には間に合う予定としている。
なおこれらの拠点の新設計画には、イェーテボリ市が計画している「イェーテボリ・グリーン・シティ・ゾーン構想」のなかに含まれている。
各々の実証拠点をネットワークで結び、新たなクルマづくりを目指す
このイェーテボリ市計画の当該ゾーンには、ボルボ・カーズ以外のイェーテボリ市との関係が深い企業の他、研究者達も集い、2030年までに排出ガスゼロの交通を実現することを目標に、次世代の乗り物の研究・開発と共に、インフラの面でも新しいテクノロジーをテストできる地域に仕立てられていく予定だ。
ボルボ・カーズとしては、この「イェーテボリ・グリーン・シティ・ゾーン構想」の区画のなかに、最近オープンしたボルボ・カーズのソフトウェア・テストセンターを筆頭にデザインセンター、パイロットプラント、バッテリーラボ、風洞、衝突テストラボを備えたセーフティセンターなど、試験・開発拠点を含む強力なエンジニアリング施設が含まれる。なおNorthvolt社との合弁会社Novo社による新しいバッテリー工場も同じ拠点内に建設中だ。
また、この新たなテック・ハブは、スウェーデン(ストックホルムとルンド)政府、ポーランド(クラクフ)政府、インド(バンガロール)政府、シンガポール政府も協力する形で運営される。
また、ボルボのエンジニアリング・センターは、イェーテボリ同拠点の他に、中国・上海にも設けられている。それぞれの拠点は、個々に独自に重点研究領域を持っており、全体として各国に配された技術イノベーションの重要なネットワーク網の一部を担い合っている。