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2024年10月4日【ESG】

米ゼロエミッションインダストリーズ、FC高速艇を披露

坂上 賢治

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米ゼロ・エミッション・インダストリーズ ( ZEI / Zero Emission Industries )は10月3日( 米カリフォルニア州サウスサンフランシスコ発 )、カリフォルニア州エネルギー委員会( CEC )のガス研究開発プログラムのサポートを受けて世界初の水素動力を搭載した新しい海の電動モビリティとして、高性能スピードボート「FCV Vanguard( FCVヴァンガード )」を開発・披露した。

 

この新たなスピードボートについて、ZEIでCSO(Chief Strategy Officer)を務めるジョン・モトロー氏は、「この最先端の燃料電池システムは、ガスエンジンやディーゼルエンジンを代替するパワーユニットとして設計されており、そもそもは、1995年に開発した27フィートのオフショア型スピードボートのために初導入したものが原点となっています。

 

今回は、従来のガソリン燃焼のビッグブロックV8エンジンを375ps(馬力)、465lb·ft(ポンドフィート)のトルクを発生する水素燃料電池システムに置き換えることで最高レベルのパフォーマンスを発揮すると共に、圧倒的なスピードが求められる高速ボートでも優れたサステナビリティー性が生み出せることを実証しました。

 

高性能スピードボート「FCV Vanguard( FCVヴァンガード )」に搭載された燃料電池システムは、4つの燃料電池スタック、コンパクトなリチウムイオンバッテリー、冷却システム、パワー エレクトロニクスユニット、高性能電動モーターによって構成されており、その全てを自社のオペレーティングソフトウェアによって制御しています。

 

 

そんな当社のFCシステムは、ガソリン エンジン並みの高性能と、内燃機関と比べても違和感の無い素早いエネルギーの充填速度、ディーゼルエンジンに匹敵する分厚いトルク感と高い熱効率、電気モーターならではの静かでクリーンな環境性能など、旧来のパワートレインが個々に持っていた長所を小さなパッケージに集約させています。また汎用性も高く、今回のような高速ボートだけでなく大型船舶まで、幅広い用途に応えられる上に排出される二酸化炭素はゼロとなります。

 

そもそも当社は、かつてサンフランシスコで世界初の商用旅客フェリーへ水素燃料電池のみで動く動力システムを設計・搭載した実績があります。それらの取り組みは。今回のFCV Vanguardで実現させている自社テクノロジーの源流となるものです。

 

搭載した水素貯蔵タンクは、内燃エンジンに並ぶ程の航続距離を稼ぐことができ、重い蓄電池を搭載するBEVよりもエネルギー効率も高くなります。それは高速艇に求められる厳しい要求性能を満たすものであり、水上に於いても優れたゼロエミッションモビリティを提供できることを証明しています」と述べた。

 

‍またZEIでCEOを務めるジョー・プラット博士は、「‍水素の導入は世界規模で進んでいます。昨年、水素協議会とマッキンゼー・アンド・カンパニーが発行した報告書には、(1)全世界で1,000件の水素プロジェクト提案が発表され、そのうち795件が2030年までに全面的または部分的な導入が計画されています。

 

また(2)2030年までに水素プロジェクトへ3,200億ドルの直接投資が発表済みであること、(3)現在導入されている水素供給涼佑は僅か年間100万トン未満に過ぎないのに対して、来るべき2030年には全世界で3,800万トン/年のクリーン水素の供給が発表されていると記されています。

 

このような背景から当社は、エンドユーザーが水素技術を導入する際に直面する課題を克服するソリューションの開発・導入を進めています。一方で燃料電池に対する投資家の関心は世界中で高まっており、特に、より大型で重い電力用途の領域でBEVパワーの限界が明らかになるにつれて、燃料電池への関心が高まっています。

 

化石燃料を使う既にパワーユニットの時代は終わりつつあります。私たちは輸送に関わる企業のみならず、モビリティを好むユーザーの多くがクリーンな動力源を求めている社会要求を事業推進の動力に置き換え、限りなくサステナビリティーなモビリティビジネスを打ち出しています。

 

それには既存の船舶を廃棄して完全に新しいモビリティを製造するよりも、既存の船舶を改造する方が遙かに環境に優しく、手早い製造か可能で、経済面でも優れています。ここではそれを陸上のモビリティを例に数字に置き換えて考えてみましょう。米国では路上で大凡1,350万台の商用トラックが走っていますが、年間で販売される新型車の台数は僅か50万台に過ぎません。

 

つまり多くの車両は、新車で購入されて以降、何十年も使用されている訳です。こうした傾向は海運業界にも同じで、環境負荷を素早く下げていくためには、モビリティを新たに交換するみことに代わる持続可能で費用対効果の高い手段が必要です。それは個々のモビリティのパワーユニットを環境性能の高いものに改造することです」と語った。

 

最後にZEIをサポートするカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)でエネルギー研究開発部門に籍を置くディレクター、ジョナ・スタインバック氏は、「カリフォルニア州エネルギー委員会は、クリーンエネルギーへの移行を加速し、州の気候目標の達成に取り組んでいます。ゼロ・エミッション・インダストリーズが海上輸送で脱炭素化を支援する革新的なソリューションの開発を進めていることを、私たちは応援しています」と結んでいる。

 

 

「FCV Vanguard」の主要な仕様は以下の通り

 

‍● ピーク出力(10秒間):390KW(522HP)
● 連続出力: 280 kW (375 HP)
● トルク: 630 Nm (465 lb-ft)
● 寸法:1950×990×850mm
● システム重量: 700 kg (1,540 ポンド)
● 公称システム効率: >50%
● 燃料タイプ: 気体水素
● 熱管理: 液体冷却(水対水)
● 起動時間: 瞬時

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。