筑波大学は、電子スピン共鳴を活用し、従来の手法では困難であったペロブスカイト太陽電池の劣化機構を分子レベルで解明することに成功したと、12月4日発表した。
ペロブスカイト太陽電池は最近注目されている高効率な次世代の太陽電池。しかし、分子レベルのミクロな観点からの劣化機構が不明で、太陽電池の長寿命化の妨げとなっていた。
筑波大学では、独自に開発した太陽電池の構造を活用し、電子スピン共鳴と太陽電池の性能を同時に計測する、世界初開発の測定手法を用いて、その劣化機構を解明することに成功した。
この手法による計測の結果、太陽電池が動作している状態で、太陽電池の内部の電荷状態(スピン状態)の変化が太陽電池の性能(電流や電圧)と強く相関していることを見出した。そして、太陽電池の性能の変化は、太陽電池の構成材料である正孔輸送層の電荷状態の変化に由来することを明らかにした。この変化は太陽電池の電流の増加や低下と電圧の低下を生じさせるという。
また、太陽光に含まれる紫外光がペロブスカイト太陽電池の正孔輸送層のドーピング効果を劣化させていることも分かった。紫外光照射下で電子輸送層に生じた電子が、本来起こってはならない正孔輸送層へ移動し、その移動が暗状態でも持続的に生じていることを示した。
本研究チームの開発した手法により、太陽電池の性能の劣化を防ぐために必要な、これまでにない分子レベルの情報を提供することが可能となった。
今後、本手法で得られた分子レベルの情報を基にすることで、低コスト、高効率かつ長寿命な太陽電池の製品開発が効率よく進むことが期待されている。
■研究代表者
筑波大学 数理物質系、エネルギー物質科学研究センター
丸本 一弘 准教授