提案する家庭エネルギーシステム(PACaaS)の概略図
先にEVへのタイヤ内給電を成功させた東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志教授、藤田稔之特任講師、永井栄寿特任助教、ダイキン工業・テクノロジーイノベーションセンター山際昭雄氏らによる「EV協調型サーマルシステム工学社会連携講座」は3月1日、家庭エネルギーシステム:PACaaS(Power & Air Conditioning as a Service)を提案。この同システムが実証試験で高効率な運転が可能である事を示した。
そもそも彼らがこの研究に取り組んだ理由は、我が国に於いて新エネルギー発電の約35%を太陽光発電(PV: Photovoltaic generator)が占める環境下にあった。
そうした日本のエネルギー事情を鑑み〝PV発電電力の自己消費率の向上〟〝需要電力のピークの緩和〟停電時の自立運転を実現されるため〝定置バッテリと組み合わせたエネルギーシステム構築〟が鍵になると考えた。
PACaaS実験機
また現状で、今後、一般家庭に広く設置されるであろう太陽光発電(PV: Photovoltaic generator)や電気自動車(EV: Electric Vehicle)用充電器、ヒートポンプ給湯器(HP:Heat Pump)などが今後も、それぞれ独立して稼働している現状下では、どうしても昼間の余剰電力などに伴う電力損失が生まれてしまう。
そこで同研究チームは、新しい家庭向けエネルギーシステムの中へ近年普及が見込まれるEV蓄電池の利用を想定。新システムを使うエネルギー変換効率の実験検証を行った。
直流電圧に対するエアコンへの入力電力
具体的には、PV、定置用バッテリ、系統連系インバータ、エアコンの4つの機器を直流に接続。これを一つのコントローラで制御する事によって、高効率な運転が可能になるPACaaS実験システムを作成。
次に、同システムを基に一般的なフィードバック制御を行った場合の特性評価を実施。更に実験システムが稼働している状態でPVによる最大電力制御を維持しながら安定的に動作する様子を確認した。
更に実験システムが直流電圧を制御する事で、エアコンの変換効率が1%程度向上する事を確認。商用電源を介さずとも、それぞれの機器が家庭内で高効率な運転が可能である事を実証した。
従来システムと比較したPACaaSの月毎の電力損失低減率
またエアコン運転などに伴う実負荷の消費電力データを用いて、年間のシミュレーションも行ってPACaaSの有効性も併せて確認した。
結果、今回提案したPACaaSは、災害時など電力供給が途絶された状況でもエアコンやヒートポンプなどの自立運転が可能になる事からゼロエミッション社会に大きく貢献するとしている。
今後、同研究グループは短周期の動作検証から更に一歩踏み出し、更なる年間単位のシミュレーション検証なども含めた幅広い観点で同PACaaSの開発・検討を重ねて、家庭向けエネルギーシステムの高効率化を推し進めていく構えだ。
関連研究室
藤本・清水・藤田研究室