英国でグリーンエネルギー技術に取り組むアルティリウム(Altilium)は3月4日(英国イングランドデヴォン州プリマス発)、自社のバッテリーリサイクル技術を活かし、日産自動車と協力してバッテリーからの二酸化炭素排出量を削減・輸入原材料への依存を減らす取り組みに挑む。( 坂上 賢治 )
このアルティリウムはリチウムスクラップなど、既に流通している廃棄物をリサイクルし、低炭素の国内供給源である正極および負極材料を大量に提供することによって英国および欧州の自動車サプライチェーンを再構築することを目指している企業。
同社独自のEcoCathode™プロセスは、使用済みのEV バッテリーと製造スクラップを国産の持続可能なバッテリー前駆体、正極活物質 (CAM) および正極前駆体 (pCAM) に変換し、新しいバッテリーに直接再利用できる。
アルティリウム初の稼働工場は、現在プリマスで建設中で、計画中のティーサイド工場はヨーロッパ最大級のEVバッテリーリサイクル施設となる。この工場は年間15万台以上のEVから出るスクラップを処理する能力があり、3万トンのCAMを生産する予定。これは2030年までに英国で予想される需要の約20%を満たすのに十分な量だという。
なお現在までにアルティリウム自身は、ファラデー電池チャレンジや自動車変革基金からの助成金を含む英国政府のイノベーション賞から600万ポンド(約11億4000万円)を超える支援を獲得。加えてソシエダ・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)のリチウム事業のコーポレートベンチャー部門であるSQM Lithium Venturesの支援も受けている。
さて今回の日産自動車との取り組みは、先端推進システム技術センター (APC) によって同日に発表された3,000万ポンド(約57億円)の共同プロジェクトの一部で、既に1,500万ポンドの助成金を獲得している。
より具体的には、ベッドフォードシャー州クランフィールドにある欧州日産テクニカルセンター(NTCE)の技術的専門知識と研究開発能力を強化し、EV用バッテリーの再利用、リサイクル、エネルギーバランシング技術の開発と進歩に重点を置いた活動となる。
このコンソーシアムには、日産の長年のパートナーである電池メーカー AESCと、英国の二次電池エネルギー貯蔵ソリューションの大手プロバイダーであるコネクティッドエナジー(Connected Energy)による活動も含まれる。
その素材の再生プロセスは、アルティリウムの独技術を基盤として原材料リサイクルの可能性を最大化。電池材料の「閉ループ(輸入原材料を削減し、英国内での資源サプライのクローズドループを実現させる試み)」モデルを開発。それによって採掘の必要性を減らし、天然資源を節約していく。
これには、使用済みの日産リーフに搭載したバッテリーからの廃棄物や生産スクラップを処理し、これらの材料をアップサイクルして、次世代EVバッテリーのテスト用の高ニッケル化学正極活物質(CAM)を製造することが含まれる。
つまりこの取り組みは、EV バッテリーを管理するための包括的で循環的なアプローチを確立させて、環境への影響を最小限に抑え、資源効率を最大化することを目的としており、アルティリウム独自のEcoCathode™湿式冶金プロセスは、使用済みのEVバッテリーからリチウムを含む正極金属の95% 以上を回収できるとされる。
回収された材料は、単にリサイクルされるだけではなく、再設計され、高ニッケルCAMにアップサイクルされ、新しいバッテリーにシームレスに統合。これらの重要な素材をアップサイクルすることで、同社は未使用の採掘素材と比較して、CAM の二酸化炭素排出量を50%削減し、コストを20%削減することを目指している。
APCからの支援は、英国に於けるゼロエミッション技術の開発推進と持続可能な EVサプライチェーンの構築に向けた官民パートナーシップの重要性を示しており、同資金的支援によりアルティリウムは、ティーサイドに計画されている英国初の産業規模リサイクルプラネットの建設を含む最先端のリサイクル施設の規模拡大を加速することができる。
結果、アルティリウムが目指すバッテリー原材料の完全循環モデルは、英国で独自の顧客サービスとして提供される。これには、ゼロカーボンを伴うEVバッテリーの回収、ブラックマスリサイクル、化学精製が含まれ、2030年までに英国が求める再生原料の20%を満たすのに十分な30,000トンのバッテリー対応CAMを生産できるという。
今回の日産との連携について、アルティリウムの共同創設者兼最高執行責任者(COO)であるクリスチャン・マーストン博士は、「私たちは力を合わせて、自社の強みとリソースを活用してEVバッテリーの管理と再利用方法に革命を起こし、英国が低炭素輸送のための持続可能なバッテリー材料の国内供給源を確保できるようにしていきます」と述べている。