計画にはリサイクルのサプライチェーンから素材調達する合意が含まれる
トヨタモーターノースアメリカ( TMNA/Toyota Motor North America, Inc )とネバダ州カーソンシティに本社拠点を置くレッドウッドマテリアルズ( Redwood Materials, Inc )は米・東部時間(テキサス州プレイノ)の11月16日、EV蓄電池のバッテリーエコシステムの循環目標に近づけるべく、蓄電池リサイクルと材料調達で合意に達した。( 坂上 賢治 )
今回の合意は、トヨタ製のハイブリッド車とEV(電気自動車)搭載バッテリーの回収とリサイクルに関して、昨年発表されたレッドウッド社との協力契約に基づくもの。そこにはレッドウッド社の蓄電池のリサイクル活動に於いて、カソード活物質( CAM/正極材 )とアノード銅箔( 集電体 )を調達する事案も含まれている。
ちなみにレッドウッドマテリアルズは、ネバダ州カーソンシティに本社を置き、リチウムイオン電池をリサイクルして電動輸送機器や蓄電機構の電池材料を製造することを目的とした技術企業だ。
従ってリサイクル電池から大規模生産するアノードとカソード材料の米国初の大規模供給源として知られており、同活動によりアメリカ本土で、リチウムイオン電池を搭載する全てのデバイスを対象に循環型サプライチェーンの構築に貢献。持続可能なエネルギー環境に於けるコストを削減と負荷低減に寄与している。
バッテリーエコシステムの完全循環を目指す両社の目標が達成へと近づく
そんなレッドウッド社は、先のトヨタモーターノースとの蓄電池リサイクルに係る協力契約を前提にネバダ州北部の施設を増強。更にサウスカロライナ州チャールストン郊外に2番目のバッテリー材料キャンパスの着工を進めている。
レッドウッドはTMNAとの蓄電池リサイクルに係る協力契約を前提にネバダ州北部の施設を増強した
レッドウッド社の両キャンパスでは、バッテリー材料のリサイクル、精製、製造を行い、コンポーネントの生産を年間100GWhに拡大させることを目指している最中だ。
実際、トヨタの車載蓄電池に関しては、既に20年以上前に発売された初代プリウスモデルなど、多くの電動車両がいよいよライフサイクルの終わりを迎える時期に差し掛かることから、トヨタ製車載蓄電池のリサイクルに関するニーズは、今後数年間で大幅に増加すると予想されている。
また現時点では、そうしたトヨタ製電動車両の多くはカリフォルニアに数多く存在しているため、ひとまずレッドウッド社ネバダ州のリサイクル施設は、トヨタの北米サプライチェーンについてサポート体制を敷き、バッテリーエコシステムに係るクローズドループに向けたTMNAの取り組みに貢献する体制を組みつつある。
今後、そんなトヨタ製バッテリーのエコシステムに加わるユニットは、およそ500万個にのぼり、そこには蓄電池のリサイクル・再製造・再利用が含まれる。
回収された金属をリサイクルしバッテリーのサプライチェーンに再導入する
そこで今回トヨタモーターノースは、先よりの長期契約の一環としてレッドウッド社から、正極活物質(CAM)と銅箔を調達する計画も含むクローズドループの枠組みを共同開発する施策に同意した。
今後は、同合意の条件に基づき、レッドウッド社のリサイクル活動から回収・製造された正極活物質は、ノースカロライナ州のトヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング(TBMNC)へ向けて、将来の新しいバッテリーユニットのリサイクル材料として供給される流れだ。
このようなリサイクル材料の使用は、米国外から調達する蓄電池材料サプライチェーンと比較して、国内サプライチェーンの優位点と競争力を高めるのに大いに役立つ。そこでトヨタモーターノースは、 140億ドル近い投資を行い、TBMNCの自動車用バッテリー製造施設を2025年に稼働させる計画を敷いている。
さて今回の合意についてTBMNC(トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング)のショーン・サッグス社長は、「トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナの生産開始が目前に迫っているなか、当社のバッテリーエコシステムに組み込むための重要なバッテリーコンポーネントと材料を調達できる目処がついたことを嬉しく思います。
私たちは、地球上の貴重な資源を最大限に有効活用し、その過程で大幅な二酸化炭素排出量を削減するべく、ここ米国でのバッテリー材料の調達とリサイクルに引き続き、精力的に取り組んでいきます」と述べた。
既存のリサイクル協定を拡張しトヨタ製車載電池の完全循環を確立へ
またトヨタモーターノースの事業開発担当グループでバイスプレジデントを務めるクリストファー ヤン氏は、「今合意により、車載蓄電池リサイクルに係る取り組みと関連部品&素材の国内調達を加速させ、バッテリーエコ循環を完成させるための最終目標に近づくことができました。このエコシステムは、北米全土の道路上にバッテリーを搭載した車両が増えるにつれて、益々重要になります」と述べた。
TBMNC(トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング)
これに対してレッドウッドマテリアルズのカル・ランクトン最高商務責任者は、「今日、トヨタモーターノースは我々との協力体制を敷き、持続可能な未来に向けて、大きな一歩を踏み出しました。
彼らは真摯にEVの責任ある耐用年数管理に取り組んでいるだけでなく、部分的に持続可能な国産のバッテリーコンポーネントを使用して、次世代EVを製造することも計画しているからです。
また当社は、米国のバッテリーセルメーカーや自動車メーカーに初めて国産の戦略的バッテリー材料を供給するため、技術と設備を拡大するために大規模な投資を行っています。
サウスカロライナ州チャールストン郊外の第2バッテリー材料キャンパス図
例えば我々はネバダ州北部の施設に対しても飽くなき拡張を続けており、今年後半にはサウスカロライナ州チャールストン郊外に2番目のバッテリー材料キャンパスの着工を予定しています」と蓄電池の循環環境に取り組む積極姿勢を示しつつ、その言葉を結んでいる。