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2024年8月21日【イベント】

TSMCが独ドレスデン工場の着工へ

坂上 賢治

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TSMC・台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー( 台湾積体電路製造股份有限公司 )とドイツ貿易投資庁( GTAI / Germany Trade & Invest )は8月20日( 独・ベルリン発 )、TSMC、ロバートボッュGmbH、インフィニオンテクノロジーズAG、NXPセミコンダクターズN.V.の4社による共同合弁会社「ESMC( 欧州半導体製造会社 )」を介して、ドイツ東部のドレスデンに於いて最終的に総額100億ユーロ規模となる半導体工場用地の起工式を開催した。このイベントには、政府関係者、製品の顧客、サプライヤー、ビジネスパートナー、学界関係者が集結。

 

著名な来賓では、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、ドイツのオラフ・ショルツ首相、ザクセン州のミヒャエル・クレッチマー大統領、ドレスデン市長のディルク・ヒルベルト氏が列席した。

 

起工式では、EU初のFinFET( Fin Field-Effect Transistor / 基板上のゲートチャネルが複数面を包むようダブルゲート構造となったMOSFET・金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ )対応ピュアプレイ・ファウンドリー( Pure-play foundry / 純粋な半導体委託製造企業 )となる同工場の皮切りとなる最初のマイルストーンを祝った。

 

なお将来的にESMCの半導体製造拠点が完全稼働に移った暁には、28/22ナノメートルのプレーナCMOSおよび、16/12ナノメートルのFinFETプロセス技術による300mm(12インチ)ウェーハの月産4万枚にも及ぶ生産能力が見込まれ、それらにより欧州の半導体製造に係るエコシステムが大幅に強化されることになる。

 

他方で、その投資総額は、株式注入、借入、欧州連合およびドイツ政府からの強力な支援を含め、100億ユーロを超えると見込まれている。結果、新たな半導体製造施設では約2,000人のハイテク人材が直接雇用されることが見込まれる。更に同プロジェクトによってEUのサプライチェーン全体で多数の間接雇用の需要を刺激し、それが地域経済を一層強化することにも期待が集まっている。

 

欧州連合は、そんなESMCの設立に伴い、「TSMCの持続可能性と環境保護の基準を支持する。ESMCとそのパートナーは、エネルギー効率の高い建設、水の再生利用、LEED認証の取得を包括するプロジェクトを推し進めるべく既存技術と最先端技術を組み合わせることでグリーンファブの建設に専念していく。

 

ESMCの設立は、半導体業界の基礎技術を保有するTSMCの技術的優位が提供されることを介して、欧州への揺るぎない献身の姿勢を示している。この提携は欧州に大きな進歩をもたらすだけでなく、この戦略的パートナーシップへの両地域への深いコミットメントを意味する」と述べた。

 

 

実際、起工式の壇上でフォン・デア・ライエン委員長は、欧州委員会がEU国家援助規定に基づき、欧州半導体製造会社(ESMC)の建設と運営を支援するべく、50億ユーロの支援措置を承認したことを発表した。

 

これを受けてTSMCの会長兼最高経営責任者(CEO)となったC.C.ウェイ氏は、「当社のパートナー企業となって下さったボッシュ、インフィニオン、NXPとの協力体制を敷き、欧州地域で、急成長する自動車および、その他の先端産業が求める半導体ニーズを満たすべくドレスデン施設を建設を急ぎます。

 

今年後半にも着工に取り掛かる同製造施設の完成によって、TSMCの高度な技術を間接的に欧州の顧客やパートナー企業へ届けることで、域内の経済発展の刺激を促し、引いてはそれが欧州全体の技術進歩を大きく押し上げることになるでしょう」とその抱負を語った。

 

また、この新たな半導体工場の建設着手について、ロバート・ボッシュGmbH経営委員会会長のステファン・ハルトゥング博士は、「ESMCのウェーハ工場は、ドレスデンにある当社のボッシュウェーハ工場のすぐ隣に建設される予定です。私たちは、パートナーであるTSMC、Infineon、NXPと緊密に協力しつつ、欧州の主要産業に於いて、同新工場から排出される先進的なチップを確実に利用できるようにしていきます」と、その取り組みの姿勢を説明した。

 

 

更にインフィニオンテクノロジーズAGでCEOを務めるヨッヘン・ハネベック氏は、「今回のドレスデンへの共同投資は、欧州に於いてザクセン州が地政学的に重要な環境下にあることを改めて浮き彫りにしました。このESMCによるドレスデンの新半導体製造拠点は、欧州地域のデジタル領域のエコシステム構築で大きな成功をもたらすための鍵となり、雇用創出でも永続的な役割を果たすことになるでしょう」と話した。

 

最後にNXPで社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるクルト・シーバース氏は、「今日はドイツと欧州のマイクロエレクトロニクス業界にとって歴史的な節目となりました。NXPはESMC合弁事業の一員であることを誇りに思います。

 

ESMC合弁事業は、欧州の自動車並びにその他の先進産業領域に対して、革新的な半導体ソリューションを提供することになります。そうした意味で本日ドレスデンで行われたTSMCの欧州初の半導体製造施設の起工式は、欧州のデジタル領域の主権確保にとっても、重要かつ、目に見える前進となりました」と結んだ。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。