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2024年10月16日【CASE】

TRI、ボストン・ダイナミクスとロボット研究で提携

坂上 賢治

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トヨタ・リサーチ・インスティテュート( TRI / Toyota Research Institute, Inc. / カリフォルニア州パロ・アルト )は10月16日( 米国東部標準時 )、ボストン・ダイナミクス( Boston Dynamics / 米マサチューセッツ州ミドルセックス郡 )と、人工知能とロボット工学の分野で協力することを明らかにした。( 坂上 賢治 )

 

上記ボストン・ダイナミクスは、高度で機動力を併せ持つ最先端ロボットの研究開発に取り組む米国企業。かつては国防高等研究計画局( DARPA )の支援の下、四足歩行ロボットのビッグドッグなどの開発実績を持つ。その姿勢は、製造施設、発電所、建設現場、倉庫&配送センターなど雑多な空間や移動が困難な空間での稼働を社是としている。なお現在は、現代自動車グループ傘下企業となっている。

 

 

今回の研究・開発に重きを置いた提携は、TRIのLBM( Large Behavior Models = AI駆動型大規模行動モデル / 会話系AIの大規模言語モデルことLLMと同じく複雑なコードを記述せずにロボットが自己学習して動作系スキルを学ぶ手法 )を用いて、ボストン・ダイナミクスのAtlas( アトラス )ロボット技術に立脚した高度な汎用ヒューマノイドロボットの開発を加速させることあるという。

 

 

このAtlasロボットは、極限環境下で機動性をどのように発揮できるかに始まり、人類が獲得した細やかな両手の使い方を学び取るに至るまで、綿々とヒューマノイドの進歩を支え続けてきたボストン・ダイナミクスのトライアンドエラーの積み重ねの成果だ。

 

実際、最新世代のAtlasは、各部位の精度を高めて多様な動作を作り出すことができるハードウェアと、その機能を自在に活かせるソフトウェアを組み合わせることで有能なヒューマノイドに仕立て上げたものになっている。つまり最新のAtlasロボットは、AIベースの自己学習を介して、スキルの自己習得を可能にできる理想的なプラットフォームである訳だ。

 

 

対してTRIは人間の能力を高める行動研究からスタート。人間との対話型自動運転の研究を深めていくことを経て、今やロボット工学のAI駆動型大規模行動モデル ( LBM ) の世界的リーダーとして米国内でも広く知られている。事実TRIは、オープンソースのロボットAIモデルとデータセットの開発で常に主導的な役割を果たしてきた。

 

そんなTRIは目下、電子計算機が画像や動画内のオブジェクトや人物を識別し理解できるようにするコンピューター・ビジョン( Computer Vision )と、大規模学習モデルを組み合わせた自己学習トレーニングを介して、ロボットによる精緻なマルチタスク動作を実現させることを最終目標としている。

 

この両社による共同研究についてボストン・ダイナミクスでCEOを務めるロバート・プレイター氏は、「ロボット産業にとって、今ほどエキサイティングな時期はありません。我々はTRIと連携して、汎用ヒューマノイドの開発を加速させていきたいと考えています。この提携は、強力な研究開発基盤を持つ2つの企業が協力して、多くの複雑な課題に取り組み、現実世界の問題を解決する有用なロボットを開発することにあります」と述べた。

 

 

これを受けてトヨタ自動車の主任科学者でTRIのCEOでもあるギル・プラット氏(博士)は、「AIと機械学習の最近の進歩は、身体知能を進化させるスキルを育む過程で大きな可能性を秘めています。今回、ボストン・ダイナミクスのハードウェアにTRIの最先端AI技術を実装する機会を得られれば、人々の能力を支えて生活の質を向上させるために日夜、取り組んでいる私たちグループ下のあらゆる組織にとっても、想像以上の成果を生み出せる原動力になるのではないかと考えています」と語っている。

 

なお今回の研究では、ボストン・ダイナミクスでロボット研究担当シニアディレクターを務めるスコット・クインデルスマ氏と、トヨタ・リサーチ・インスティテュートでロボット研究担当副社長を務めるラス・テドレイク氏が、ボストンを拠点にパートナーシップ体制を採って共同研究を主導していく。

 

両社では、「同プロジェクトは、双方の強みと専門知識を平等に活用するように設計されました。具体的にはAtlasロボットの物理的機能とプログラムを介した遠隔指示を組み合わせることで様々なタスクを与え、発揮するパフォーマンスデータを収集。こうして取得したデータは高度なLBMトレーニングに使用。全身センシングを活用できるヒューマノイドロボットによる自己学習を介して、人間との相互連携の効果や、安全性を検証する研究もおこなっていきます」と結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。