豊田通商は12月21日、豊田通商アメリカ(以下「TAI」)と、米国カリフォルニア州のロサンゼルス港(以下「LA港」)で水素地産地消モデルの長期運用実装実証事業を開始すると発表した。
この事業では、2022年2月から2026年3月まで、LA港において、港湾荷役機械とドレージトラック動力源の水素燃料電池化(以下「FC化」)および港湾に特化した地産地消型クリーン水素モデルの実装実証を行う。港湾の実使用環境下において、FC化した港湾荷役機械とドレージトラックおよび水素製造・供給設備を約3年間かけて、長期運用する実装実証事業は世界初となる。
米国は、2030年までに温室効果ガス(以下「GHG」)を2005年比で50~52%削減、2050年までにカーボンニュートラル実現を掲げている。事業セクター別のGHG排出割合では、港湾を含む輸送業が約3割を占めるなど、GHG削減と低・脱炭素エネルギーの利活用が求められる。
米国最大規模を誇るLA港と隣接するロングビーチ港(以下「LB港」)では、港湾荷役機械を2030年までに、ドレージトラックを2035年までに、それぞれゼロエミッション化(以下「ZE化」)することを目指し、GHG削減に向けた取り組みを推進。LA港・LB港では、これまでにフォークリフトなど、小型機械の電動化(以下「BEV化」)は進められてきたが、トップハンドラー(移動式のコンテナ輸送機)などの大型機械は稼働時間や充電インフラの制約などの課題があり、BEV化の障壁となっていた。一方、FC化は、長時間の稼働と短時間の燃料供給が可能であり、これまでのディーゼル機械の代替として有望視されていた。
なお、この事業は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)の水素社会構築技術開発事業「北米LA港における港湾水素モデルの事業化に向けた実証事業」の公募採択を2021年12月に受けており、豊田通商とTAIが、2020年9月より開始しているNEDOの「地産地消型水素製造・利活用ポテンシャル調査」に続く取り組みとなる。
■実証事業内容
①FC化した港湾荷役機械と港湾に出入りするドレージトラックの実使用環境下での長期運用トップハンドラー、RTGC(タイヤ式門型クレーン)、ヤードトラクター(コンテナ荷下ろし機械)、ドレージトラックをFC化し、水素充填や機械の稼働時間の検証など、実使用環境下での運用および分析を行う。
②水素の地産地消のサプライチェーン構築による港湾に特化した水素製造・供給設備の長期運用TAIは家畜ふん尿由来の再生可能天然ガス(Renewable natural gas、以下「RNG」)を製造・販売するMerced Pipeline LLC社に2021年4月出資し、2021年12月より稼働を開始した。このRNGをガス改質し水素を製造することを想定し、水素製造設備、超高圧移動式水素充填車を開発・導入することで、現行の港湾ターミナルやドレージトラックのオペレーションを維持する水素供給方法を検証する。