豊田通商と矢野経済研究所、いそのは、自動車に使われている樹脂素材のCar to Carリサイクル(※1)の可能性を探る実証事業を、自動車リサイクル高度化財団から受託した。
実証事業は2017年からの継続案件で、4月に開始。3年目となる今年が最終年度となる。
1. 背景と目的
この実証は、自動車リサイクルに関わる審議会等で提言されている「自動車リサイクルの高度化及び自動車ユーザーのリサイクル料金負担低減」に資する実証事業として、自動車リサイクル高度化財団による「平成29年度自動車リサイクルの高度化等に資する調査・研究・実証等に係る助成事業」に採択。マテリアルリサイクルを行うためのコストと品質を評価するもので、今年で3年目を迎える。
2. 2018年度の実証結果と2019年度の実証内容
2018年度は、外装3部品に加え内装品4点を回収対象とし、中部地区・関東地区の協力解体事業者合計12社で使用済自動車約2,000台から10.1トンのPP(ポリプロピレン)樹脂を回収。
車体から取り外した部品からビスなどの細かい異物の除去を中心に、解体作業の時間を短縮した上で採算性をあげることについて、コスト面での課題が残った。
3社は、3年目となる今年、自動車部品としての仕様に耐えうる強度などの物性面や、新車の部品素材として安定した数量を確保するための更なる検証を進めるため、解体数量の増加を目指す。
<今年度の検証内容>
①回収したリサイクル樹脂を新車向けの素材として採用するためのリサイクルコストの改善。
②回収したリサイクル樹脂の品質確認と品質の向上。
③新車の部品素材として安定した数量が確保できるかの検証。
協力会社は、昨年と同様の12社で、樹脂回収量は昨年度の倍にあたる使用済自動車約4,000台から、20トンの回収を予定。
コストについては、解体作業の専門家の意見も取り入れ、解体作業の時間短縮に取り組むとともに、回収樹脂の輸送方法の効率化にも取り組む予定だと云う。
<解体業者一覧(50音順)>
■中部地区
・株式会社小林商店
・城北自動車興業株式会社
・ニュー岩田株式会社
・有限会社丸大産業
・有限会社森田車輌
・株式会社山内商店
■関東地区
・株式会社茨城オートパーツセンター
・浦和自動車解体株式会社
・株式会社エコアール
・有限会社貝塚商会
・京葉自動車工業株式会社
・有限会社昭和メタル
[プラスチックリサイクルの現状]
自動車に使用されている樹脂は、現在サーマルリサイクル(※2)が多く、取り外しのコスト高や経年劣化、物量確保の実現性に課題があるため、再生利用は進んでいない。
また、自動車の軽量化にともない、樹脂素材の部品使用が増えるなか、樹脂のマテリアルリサイクル(※3)は、Car to Carリサイクルの主要課題の一つとなっている。
なお、実証事業の検証で、ASR(※4 / 樹脂部品が約3分の1を占める)削減ができれば、自動車リサイクル料金のユーザー負担軽減につながる可能性もあるとしている。
※1)Car to Carリサイクル:使用済み自動車から回収される資源を再び自動車を製造の原料として使用すること。
※2)サーマルリサイクル:原料として再資源化できない資源を燃料資源として利用すること。
※3)マテリアルリサイクル:廃プラスチックをプラスチック製品の原料として使用すること。
※4)ASR:Automotive Shredder Residue (自動車破砕残さ)のこと。現在使用済み自動車を構成する部品・材料のうち約20%がASRになっている。