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2025年3月28日【MaaS】

豊田通商とアザパ、バッテリー交換式貨物EVの運用実証を実施

坂上 賢治

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自動車業界初の独立系Tier0.5事業者AZAPA豊田通商は3月28日、環境省の委託事業「バッテリー交換式EV開発及び再エネ活用の組み合わせによるセクターカップリング実証事業」を受託。バッテリー交換式の物流EV、交換ステーションを含むシステム実証を検証したことを明らかにした。両社は同事業で、物流業界に空ける脱炭素化を加速させ持続可能な社会の実現に貢献することを目指す。

 

ここで自動車産業の脱炭素に係る取り組みを翻ると、我が国の2030年度断面での脱炭素目標は、温室効果ガスを46%削減(2013年度比)と定められており、現状では官民一体となった各産業分野での努力を結実させつつあり、政府目標の達成へ向けて一定の成果が出ている。

 

しかしその一方で、今後はこれまで以上に現状の課題に準じた枠組みの整備が必要な状況になってもいる。とりわけ運輸部門におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、日本全体の約20%を占め、実にその3分の1以上を物流関係が占めていることから物流業界の脱炭素化が極めて重要な状況にある。

 

 

そうした中、豊田通商とAZAPAは、地域のマイクロ物流領域にて非常に多く活用されている既存の軽トラックおよび軽バンのEV化を実現させ、且つ異なるメーカー車両間で流用可能な小型バッテリーおよびエネルギーマネジメントシステムを搭載したバッテリー交換ステーションを開発した。

 

これにより高価且つ充電時のダウンタイムによる配送時間のロス等、従来型EVが本領域で抱える課題の解決へ向けた新たな選択肢を提供すると共に、交換用のバッテリーの小口化/軽量化(2.5kWh、19.8kg)により、荷室容量の拡大のみならず、交換作業時の負担を軽減し、効率的な運行を可能とする環境を構築した。

 

更にバッテリー交換ステーションについては、自動販売機と同等サイズにて設計する事で設置スペースの課題を解消しつつ常時3セットのバッテリー充電を可能とした機能を搭載。日々の運用データをクラウド上に蓄積・管理するための充放電制御システムも搭載・検証した。

 

 

また将来的には、設置施設の電力デマンド並びに再エネ発電量の予測、および車両運行計画等を踏まえたAIによる最適な充放電計画を自動で策定・制御する予定。今後は、これらのエネルギーマネジメント機能を通じて再生可能エネルギーの利用促進、災害時のBCP(事業継続計画)対策およびV2H(Vehicle to Home)等、平時、有事両面のユースケースを想定しつつ地域貢献型の環境配慮事業を展開していく構えだ。

 

開発内容 :
バッテリー交換式EV:ダイハツ製ハイゼット、スズキ製キャリィをベースに、軽商用車をバッテリー交換式EVにコンバージョン。バッテリーは共通規格化し、異なるメーカーの車両間で交換可能とした。
交換用バッテリー:19.8kgのバッテリーを6本1セットで搭載、荷室の容量を維持しながら軽量化を実現。
充電ステーション:セットのバッテリーを充電可能で、V2H機能を搭載し、地域貢献型のエネルギーマネジメントシステムを採用。充電ステーションはクラウドでデータ管理。

委託事業実施期間:令和7年3月21日まで

 

なお今回の実証では物流会社2社の協力を得て、自動車部品の配送、農作物の集荷および移動販売といった各所で実際に発生し得る具体的なユースケースで車両と設備の活用を依頼。安全性、作業性、メンテナンス・運用コスト、脱炭素貢献効果などの各項目に関するデータを収集・分析した。今後はそれら取得データの分析を通じて実用性の検証および課題の洗い出しを実施。物流業界の脱炭素化の加速と、地域貢献環境配慮型物流モデルの社会実装を推進していきたい考えとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。