なお該当のトライジェン拠点で、一日あたり発電する約2.35メガワットアワーの電力量は、米国の一般家庭約2,350世帯分の1日当たりエネルギー消費量に相当するもの。
また製造される水素約1.2トンという数字は、燃料電池自動車に換算して約1,500台の1日当たり平均走行距離に必要な充填量に相当する。
こうして生み出された電力の一部と水は、北米でトヨタの物流事業を担うToyota Logistics Serviceのロングビーチ拠点に供給される見込みだ。これにより同拠点は、北米で再生可能エネルギーの電力のみを使用するトヨタ初の施設となる。
水素ステーションを併設するメガワット規模のFC発電施設としては、世界初の取り組み
創り出される水素の方は、併設する水素ステーションを通じて、日本からロングビーチ港に到着する新車配送前の燃料電池自動車「MIRAI」への燃料充填。さらに10月から同港湾を拠点に実証実験中のFC大型商用トラックの燃料充填にも使用する。
ちなみに、このような水素ステーションを併設するメガワット規模のFC発電施設としては、世界初(2017年11月30日現在)の取り組みになるとトヨタ自動車では謳っている。
以上の取り組みについて、TMNAの戦略企画担当のグループ・バイス・プレジデントであるダグ・マーサ氏(Doug Murtha)は、「トヨタは、水素に大気汚染物質の削減と大気改善の大いなる可能性を見出し、20年以上にわたってFC技術の開発に取り組んできた。
Tri-Genは、持続可能なモビリティ社会の実現に向けた大きなステップであり、あらゆる事業活動においてCO2排出ゼロを目指す『トヨタ環境チャレンジ2050』における重要な取り組みのひとつとなるだろう」と語っている。
現在、米国カリフォルニア州では合計31基の水素ステーションが稼動している。そうしたなかトヨタは、本年9月にシェル・本田技研工業と共に同州北部への水素ステーション7か所の新設を発表。様々な企業や公的機関と協力して、水素ステーション網の拡充に精力的に取り組んでいると結んでいる。
一方で米国では、先に初期出荷時期を2019年中に据えたTESLAの電動貨物トラック“Tesla Semi” の価格が、航続距離300マイル走行可能(480km)のモデルで15万ドル(約1,670万円)。500マイル走行可能(800km)モデルが18万ドル(約2,000万円)であると発表され、既に予約金2万ドルで予約が開始されている。
米国当地では、“Tesla Semi” の車両価格が話題。大型・長距離輸送でも、水素かEVかの競争環境を生み出すことに成功
この価格は、当地に於ける低価格ディーゼルトラックの6万から10万ドル近辺との比較で、ディーゼル燃料並び消費オイルを含む整備費用とを秤に掛けた場合、ランニングコストが2割安くなることから100万マイル走行で25万ドルが節約できると謳っており、この価格競争力が当地で歓迎されている。
また動力性能も8000ポンドの荷重積載時に、0から60mphに至る加速タイムが20秒。5%の勾配を65mphで走行可能と発表していることから、力強さという面でも数値上の評価が高い。
こうした勢いに乗って米国大手スーパーのウォルマートが話題を独占するべく15台を早々に発注。カナダのスーパー大手ロブロウも、25台の試験的導入を発表する等、そもそも米国製品であるゆえのTESLAのブランド力も相まって、話題が大きく先行している。
ただ実際には500マイル走行車で、凡そ1MWhのバッテリーが必要と語られていることから、現在の相場感では、車両価格を上回るバッテリーユニットをどのように搭載するのかなどの別の話題も上がっている。
しかし少なくとも電動貨物トラックが、内燃機関搭載のトラックに対して優位性を訴えることが可能となったことを踏まえて、TESLAはこうした大型・長距離輸送の環境下でも、水素を使うトラックか、直に電気を使う電動トラックのいずれが優れているかという競争環境を生み出すことに成功した。
そうしたなか未来に於いて、水素を推進するトヨタでは、米国に対して早くも、この水素に対する疑問に応える時期に到達してしまったといえるだろう。