マルチメディアシステム・コネクテッドサービスを4年ぶりに刷新
トヨタ自動車は8月25日、ソフトウェアとコネクティッドに関する説明会をオンラインで開いた。それによると車両通信基盤のマルチメディアシステム・コネクテッドサービスを4年ぶりにフルモデルチェンジし、近く発売する新型レクサス「NX」に搭載することを明らかにした。
また、ソフトウェアの開発体制を大幅に拡充することも表明。トヨタ、ウーブンプラネット、トヨタコネクティッドでは海外拠点を含めて3千人規模へ。グループ全体では1万8千人規模へと体制を強化する。(佃モビリティ総研・松下 次男)
最新機能は新型NXに搭載。さらに地域開発ではOTA機能にも取り組む
今回のソフトウェアとコネクティッドに関する説明会は「これからのクルマづくりにトヨタがどう挑もうとしているか」をチーフプロダクト・インテグレーション・オフィサーの山本圭司執行役員が紹介するという趣向だ。その山本執行役員によると、全面刷新する新たな通信基盤であるマルティメディアシステム・コネクティッドサービスは「地域ごとに開発できるものだ」という。
より具体的には、国や地域によって道路事情やクルマの使われ方が異なっている事を挙げ、その環境下で通信サービスを介して「グローバルワンパッケージで地域に展開するのは限界がある」と強調した。
そこで、それぞれ地域のデータを収集し、地域に合わせたコネクティッドサービスを展開するとした。地域例では、北米ではセンターによる衝突事故検知・保険申請サポート、欧州では路上駐車案内などをNXで展開する計画だ。
走る場所、走る時間によってHVの制御を変えるジオフェンス技術も実用化へ
なおこの新型NXではOTA(オーバー・ザ・エアー)によるソフトウェアのアップデートも可能とした。さらにトヨタはコネクティッドを活用したクルマの省エネ化、省資源化の開発を進めていることも明らかにした。このOTAとは、走る場所、走る時間などに応じてハイブリッド車(HV)の制御を変える技術で、「ジオフェンス技術」と呼んでいる。
このジオフェンス技術について一例を挙げると、日本国内に於けるHV車両は走行時の半分でエンジンが停止するが、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)であれば、そうした走行環境が80%に増える。
ジオフェンス技術はこれらエンジンの停止時期を地域、時間に応じて先読みすることにより、省燃費化を一段と向上する。近い将来の商品化を目指しており、その考え方は新型NXにも盛り込む方針。また現地現物で集めたデータで、クルマの健康状態をカルテとして見える化することにも取り組む。
ソフトウェア開発はトヨタ含む傘下3社で3千人規模、グループ全体で1万8千規模へ
そもそもトヨタのコネクティッドカーは「トヨタ」「レクサス」ブランド合わせて既に1千万台を超える。山本執行役員はこれらのラインナップ上にソフトウェアを重ねる事により「新たな価値体験や感動が提供できるクルマへ」と大きく変わっていく可能性を示した。
その参考としては、携帯電話からスマートフォンの変遷を掲げていた。コモディティ化された電話が情報を連携することで、新たな価値体験を生み、あっという間に世界に広がったとし、それを実現したのが「ソフトウェアとコネクティッドだ」と話す。
このためにもトヨタはグループ全体でソフトウェアの開発強化に乗り出しており、今後、クルマの開発体制をも変える可能性を示唆した。
具体的には、ウーブンプラネットで開発を進める車両ソフトウェアプラットフォーム「アリーン」を活用することで、ハードとソフトを分離し、現在のすり合わせ開発を見直す方針。これにより、ソフト先行の開発体制を構築していく考えで、新車載OSの「アリーナ」・プラットフォームを搭載した車両を2020年代半ばにも市場投入する計画であると結んでいる。