トヨタ自動車と、トヨタの欧州事業を統括するToyota Motor Europe(TME)は、燃料電池(Fuel Cell/以下、FC)技術を船舶向けに応用したFCシステムを、再生可能エネルギーで世界一周航海を目指すフランスの「エナジー・オブザーバー号」向けに開発した。
TMEは、「トヨタ環境チャレンジ2050」でトヨタが目指す「人とクルマと自然とが共生する社会」の考え方に「エナジー・オブザーバー号」が目指すものが一致すると考え、航海開始時からオフィシャル・パートナーとして支援。航海での実証を通じて、化石燃料の再生可能エネルギーへの置き換えの可能性を検討するとともに、将来の再生可能エネルギーを効率的に、かつ大規模に利用するソリューションを探求していると云う。
TMEと、「エナジー・オブザーバー号」のチームメンバーは、船舶へのトヨタのFC技術応用に向けて連携。TMEは、船舶用のFCシステムの再設計から、部品の製作、コンパクトなFCシステムの開発、船への搭載までを7か月で実施した。
このFCシステムは、TMEテクニカルセンターが、燃料電池自動車「MIRAI」の搭載部品を用いて船舶用に開発したもので、これにより「エナジー・オブザーバー号」は、従来と比べて高出力、高効率、高信頼性を実現したと云う。
「エナジー・オブザーバー号」は、太陽光や風力の再生可能エネルギーや海水から生成した水素を用いた燃料電池を動力とする、世界で初めての自立エネルギー型燃料電池船で、2017年6月に母港であるフランス北部のサン・マロ港を出発し、6年かけて50か国、101の港に立ち寄りながら、世界一周航海に挑戦している。
昨年末には、停泊中にトヨタのFCシステムの搭載試験を行い、現在は、2020年ツアーの出航を控え、海上での最終試験を実施。トヨタのFCシステムを搭載した「エナジー・オブザーバー号」は、2月にサン・マロ港を出港し、大西洋と太平洋を横断する予定だ。
トヨタのFCシステムは、走行中にCO2を一切排出しない「ゼロ・エミッション車」として「MIRAI」をはじめ、近年では、バスやトラックなどにも応用されている。
トヨタは、今回の船舶へのFC利用を、水素社会の実現に向けたさらなる一歩として、今後も、低炭素社会の実現に貢献するため、さらなる取り組みを進めていくとしている。
[エナジー・オブザーバー号について]
2015年、フランスのヨットレーサーのビクトリアン・エルサール氏(Victorien Erussard)と、探検家でドキュメンタリー作家のジェローム・ドラフォス氏(Jérôme Delafosse)が、レース用のボートをエネルギー自立型の船に改造。これまで、25か国、48寄港し、航海距離は約18,000海里に達している。
また、フランス初の国連SDG(Sustainable Development Goals : 持続可能な開発目標)アンバサダーシップで、グローバルに約45の企業や団体が同船舶の取り組みを支援している。
<主要諸元>
– 船体長さ:31.0m
– 幅:13.0m
– 重量:34ton
– 全高:12.85m
– 喫水:2.2m
– 定員:8名(遠洋航海時)
– 運行速度:4.5ノット(電気)、8.0ノット(推進翼)