トヨタ自動車とその子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスは6月2日、手軽に持ち運びができる「ポータブル水素カートリッジ(プロトタイプ/※1)」を開発したと発表した。
両社は、水素を日々の生活で気軽に使用できるエネルギーとすべく、この水素カートリッジの実証実験を、静岡県裾野市で建設を進める“ウーブン・シティ(Woven City)”をはじめとする様々な場所で実施し、実用化に向けて検討。また、6月3~5日に富士スピードウェイで開催される“スーパー耐久シリーズ2022第2戦”で展示(4、5日のみ)するなど、水素エネルギーへの理解を深め、より身近なエネルギーとして感じられる取り組みも行う。
トヨタとウーブン・プラネットは、カーボンニュートラル実現に向けた様々な選択肢を検討するなか、利用時にCO2を排出せず、製造工程に於いても、風力や太陽光、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを使用することでその排出が抑えられることに加え、燃料電池システムと組み合わせた発電利用のみならず、燃焼によりエネルギーを生み出せる水素を、有力な選択肢の一つと位置付けている。
<水素カートリッジがもたらすベネフィット>
・ポータブルなサイズ(プロトタイプ:直径約180mm、全長約400mm/目標質量:約5kg)であるため、パイプラインなしで生活圏に水素を持ち運ぶことが可能。
・カートリッジ型であるため容易に交換でき、すぐに使用できる。
・汎用性の高い仕様にすることで、幅広い用途(※3)への適用が期待でる。
・小規模なインフラで対応できるため、災害時に孤立するおそれのある地域や未電化地域などへのエネルギー供給の可能性。
主に化石燃料から生成され、肥料製造や石油精製工程など、工業・産業用として利用される水素は、安全基準が使用環境ごとに異なることなどもあって、現在、日々の生活を支えるエネルギーとしては、ほどんど利用されていない。しかし将来、非常に少ないCO2排出量で生成されるようになることで、より多くの用途での使用が期待されており、政府も、安全を担保しながらその利活用を迅速に進めるため、様々な検討を進めている。
エネオス(ENEOS)と、水素の「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンの実証実験を、ウーブン・シティおよびその近郊で予定しているトヨタとウーブン・プラネットは、この実証を通じて、モビリティや様々なアプリケーション等での使用を検討しつつ、水素カートリッジを高圧タンクとすることを前提に、設計・開発・改善を重ね、また、そこで暮らす発明家をはじめとした住民たちとその可能性を模索。使用量・用途を拡大させることにより、更なる需要創出につなげ、新たな水素サプライチェーンを構築することを目指すとしている。
トヨタとウーブン・プラネットは、ウーブン・シティ等でのヒト中心の実証を通じて、住民の生活に寄り添う身近なエネルギーとして水素を利用してもらうことで、新たな価値と生活を提案し、将来的には、この取り組みを日本、そして世界に広げ、誰もが気軽にクリーンエネルギーを使えるカーボンニュートラルな社会を実現していきたいとしている。
※1:今後、仕様やデザインの変更の可能性あり。質量目標 (タンク満タンで(5kg程度)はバルブ、プロテクター部除く。用途にあわせて今後複数の種類を検討。
※2:一般的なFCシステムで発電する場合、水素カートリッジ1本あたり一般的な家庭用電子レンジが約3~4時間運転できる電力量を想定(今後検討する高圧水素タンクの前提で電力量は約3.3kWh/本を想定)。