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2024年11月3日【イベント】

トヨタ、WECでメーカータイトル6連勝を守る

坂上 賢治

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トヨタ自動車傘下のTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は11月2日、バーレーンで開催された2024年FIA世界耐久選手権(WEC)の最終戦のハイパーカーカテゴリで薄氷を踏みながらも、マニファクチャラーズタイトルを守り切り、連続6年連続の金字塔を打ち立てた。

 

今季のWECはフェラーリ、ポルシェ、プジョー、アルピーヌなどのライバル勢力が力を付け、強力なライバルに抗する形での開幕となり、マニュファクチャラーズ選手権タイトル防衛自体も並大抵ではない環境下にあった。

 

 

しかし、それでも勝ち続けるトヨタ陣営に対して、度重なるレギュレーション変更により、バラスト搭載義務などで車両そのものへの戦闘力低下要因が科せられていたものの、結果、車両だけのポンテンシャルのみではない、チームの総合力で全8戦に挑戦。争われてきたシリーズ8戦の内3勝を挙げ、力技で6シーズン連続でのマニュファクチャラーズチャンピオンを確定させた。そうした意味では、トヨタ陣営の強さが際立つ今季2024年のWECを象徴する戦いとなった。

 

より具体的には、前日の予選でトヨタがフロントローを独占して決勝のスタートをきった。しかし程なく、セバスチャン・ブエミ選手・ブレンドン・ハートレー選手・平川亮選手のGR010 HYBRID 8号車が他車からの追突により後退。一方、マイク・コンウェイ選手・小林可夢偉選手・ニック・デ・フリース選手がステアリングを握るGR010 HYBRID 7号車は、バーレーン戦に於いて逆転でのドライバーズチャンピオン獲得を目指して首位を快走した。

 

しかしレース中の燃料ポンプのトラブル発生により、敢えなくリタイヤの打ち目に逢い、悲願だったドライバーズ選手権タイトル獲得の可能性を失い、残り1時間半の局面でチームはコース上に10位を走る1台しか残らない状態で終盤を迎えた。これにより、トヨタのマニュファクチャラーズ選手権タイトル防衛の可能性にも黄色信号が灯った。

 

それでも先のトラブルによりレース中盤まで下位で低迷していたセバスチャン・ブエミ選手・ブレンドン・ハートレー選手・平川亮選手のGR010 HYBRID 8号車は、相次いで上位勢を攻略し続け、最終盤になって首位を争うポルシェやフェラーリの首位争いに割って入り、最終的にはライバルのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963・5号車(マット・キャンベル選手・ミカエル・クリステンセン選手・フレデリック・マコヴィッキィ選手)を下して首位に浮上した。

 

 

その後、昨年のバーレーン戦勝者で、併せて昨年のドライバーズ選手権のディフェンディングチャンピオン車でもあったこのGR010 HYBRID 8号車がトップでゴールラインを潜ったことで、トヨタ&TGRのマニファクチャラーズタイトルがようやく決まった。

 

 

またこれにより今季のドライバーズタイトルは、ポルシェ963を駆るケビン・エストーレ選手・ローレンス・ファントール選手・アンドレ・ロッテラー選手が手中にした。

 

なお来季の開幕戦は3月。WECは年々徐々に参画メーカーも増加傾向にあり、来季のFIA世界耐久選手権(WEC)に於いても、トヨタが勝ち続けることは過酷な挑戦になりそうな情勢にある。

 

TGRチーム代表並びにドライバー達のコメントは以下の通り

 

小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
 はじめに、今季の我々の挑戦を世界中からサポートしてくださった全ての皆様に感謝いたします。マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得できたことは素晴らしい成果であり、トヨタの仲間やパートナーの皆様を含めた全員の多大なる努力の賜物です。今日の結果はチームの全員が望んでいたもので、その達成のために誰もが全力を尽くしてくれました。その努力にも感謝しています。8号車の勝利は、今日の素晴らしい戦いぶりにふさわしいものでした。我々の7号車はトラブルに見舞われリタイアとなってしまいました。この原因を究明し、来シーズンはもっと強くなって戻ってきます。

 

 

マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
 我々7号車にとっては、厳しい結果となってしまいました。今日の我々は非常に強く、勝てる可能性も見えていましたが、トラブルに見舞われ、残念ながらリタイアせざるを得ませんでした。しかし8号車が勝ってくれたことで、我々の目標であったマニュファクチャラーズチャンピオンは獲得することができました。チームとトヨタにとって、とても嬉しい結果ですし、最後まで力強い走りで見事勝利を勝ち取った8号車には祝福を贈ります。この記念すべき瞬間をみんなで祝いたいと思います。

 

 

ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー):
 8号車の見事な勝利でマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得でき、チームにとっては最高のシーズンフィナーレとなりました。もちろん、ドライバーズチャンピオンを争っていたライバルがノーポイントに終わったことと、我々が勝てる位置につけていたことを考えると、複雑な気持ちです。トラブルが無ければ両選手権タイトルを獲得できるチャンスがありましたが、これもモータースポーツではよくあることなので受け入れるしかありません。とは言え、全体的に見れば波瀾万丈で厳しいシーズンを乗り越えてきたチームが今日報われ、嬉しく思います。

 

 

セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
 レース途中までの展開が展開だっただけに、優勝できたなんて信じられません。チームがトラブルやペナルティ、不運などあらゆる逆境を乗り越えてチャンピオンを獲得でき、最高の気分です。それこそが我々の目標であり、チームの素晴らしい努力のおかげで成し遂げることができました。一時10位まで後退し、ピットストップでほぼ最後尾に落ちたときにはもうだめかと思いました。しかし、2人のチームメイトがタイヤを温存して走り続けてくれたおかげで、最後はタイヤにアドバンテージを持って追い上げることができました。今日の大一番のレースで、みんなと共に良い仕事を成し遂げることができて、本当にチームを誇りに思います。

 

 

ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
 チームのみんな、そしてトヨタのためにも勝つことができて本当に嬉しいです。レース序盤は決して順調ではなく、ミディアムタイヤの選択も上手く行きませんでした。しかし最後にはセブが信じられないようなスティントを見せてくれました。本当に驚くべき走りで、彼こそスターです。トヨタや全てのパートナーの皆様、チームの全てのスタッフに感謝します。この勝利とチャンピオン獲得を目指して戦ってきたので、大きな意味を持つ結果です。シーズン最終戦を勝利で終えて、冬季オフシーズンに入れるのは最高です。

 

 

平川亮(8号車 ドライバー):
 何という一日でしょう。波瀾万丈のレースでしたが、我々は最後まで諦めることなく、チーム一丸となって戦い続けました。ポールポジションからスタートした我々は、GT車両に追突されるアクシデントなどにも見舞われましたが、全力を尽くして戦い続け、最後はセブが最高の走りで逆境をはねのけてくれました。我々8号車は今シーズン、困難なレースも多かったので、ようやく最後に幸運を引き寄せることができて嬉しいです。シーズンを勝利で締めくくることができたことは素晴らしいですし、チームはもちろん、トヨタとパートナーの皆様にも本当に感謝しています。皆様の多大なる努力のおかげで勝ち取ったチャンピオンだと思います。

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。