トヨタ自動車傘下のTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は11月2日、バーレーンで開催された2024年FIA世界耐久選手権(WEC)の最終戦のハイパーカーカテゴリで薄氷を踏みながらも、マニファクチャラーズタイトルを守り切り、連続6年連続の金字塔を打ち立てた。
今季のWECはフェラーリ、ポルシェ、プジョー、アルピーヌなどのライバル勢力が力を付け、強力なライバルに抗する形での開幕となり、マニュファクチャラーズ選手権タイトル防衛自体も並大抵ではない環境下にあった。
しかし、それでも勝ち続けるトヨタ陣営に対して、度重なるレギュレーション変更により、バラスト搭載義務などで車両そのものへの戦闘力低下要因が科せられていたものの、結果、車両だけのポンテンシャルのみではない、チームの総合力で全8戦に挑戦。争われてきたシリーズ8戦の内3勝を挙げ、力技で6シーズン連続でのマニュファクチャラーズチャンピオンを確定させた。そうした意味では、トヨタ陣営の強さが際立つ今季2024年のWECを象徴する戦いとなった。
より具体的には、前日の予選でトヨタがフロントローを独占して決勝のスタートをきった。しかし程なく、セバスチャン・ブエミ選手・ブレンドン・ハートレー選手・平川亮選手のGR010 HYBRID 8号車が他車からの追突により後退。一方、マイク・コンウェイ選手・小林可夢偉選手・ニック・デ・フリース選手がステアリングを握るGR010 HYBRID 7号車は、バーレーン戦に於いて逆転でのドライバーズチャンピオン獲得を目指して首位を快走した。
しかしレース中の燃料ポンプのトラブル発生により、敢えなくリタイヤの打ち目に逢い、悲願だったドライバーズ選手権タイトル獲得の可能性を失い、残り1時間半の局面でチームはコース上に10位を走る1台しか残らない状態で終盤を迎えた。これにより、トヨタのマニュファクチャラーズ選手権タイトル防衛の可能性にも黄色信号が灯った。
それでも先のトラブルによりレース中盤まで下位で低迷していたセバスチャン・ブエミ選手・ブレンドン・ハートレー選手・平川亮選手のGR010 HYBRID 8号車は、相次いで上位勢を攻略し続け、最終盤になって首位を争うポルシェやフェラーリの首位争いに割って入り、最終的にはライバルのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963・5号車(マット・キャンベル選手・ミカエル・クリステンセン選手・フレデリック・マコヴィッキィ選手)を下して首位に浮上した。
その後、昨年のバーレーン戦勝者で、併せて昨年のドライバーズ選手権のディフェンディングチャンピオン車でもあったこのGR010 HYBRID 8号車がトップでゴールラインを潜ったことで、トヨタ&TGRのマニファクチャラーズタイトルがようやく決まった。
またこれにより今季のドライバーズタイトルは、ポルシェ963を駆るケビン・エストーレ選手・ローレンス・ファントール選手・アンドレ・ロッテラー選手が手中にした。
なお来季の開幕戦は3月。WECは年々徐々に参画メーカーも増加傾向にあり、来季のFIA世界耐久選手権(WEC)に於いても、トヨタが勝ち続けることは過酷な挑戦になりそうな情勢にある。
TGRチーム代表並びにドライバー達のコメントは以下の通り
小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー):
はじめに、今季の我々の挑戦を世界中からサポートしてくださった全ての皆様に感謝いたします。マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得できたことは素晴らしい成果であり、トヨタの仲間やパートナーの皆様を含めた全員の多大なる努力の賜物です。今日の結果はチームの全員が望んでいたもので、その達成のために誰もが全力を尽くしてくれました。その努力にも感謝しています。8号車の勝利は、今日の素晴らしい戦いぶりにふさわしいものでした。我々の7号車はトラブルに見舞われリタイアとなってしまいました。この原因を究明し、来シーズンはもっと強くなって戻ってきます。
マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー):
我々7号車にとっては、厳しい結果となってしまいました。今日の我々は非常に強く、勝てる可能性も見えていましたが、トラブルに見舞われ、残念ながらリタイアせざるを得ませんでした。しかし8号車が勝ってくれたことで、我々の目標であったマニュファクチャラーズチャンピオンは獲得することができました。チームとトヨタにとって、とても嬉しい結果ですし、最後まで力強い走りで見事勝利を勝ち取った8号車には祝福を贈ります。この記念すべき瞬間をみんなで祝いたいと思います。
ニック・デ・フリース(7号車 ドライバー):
8号車の見事な勝利でマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得でき、チームにとっては最高のシーズンフィナーレとなりました。もちろん、ドライバーズチャンピオンを争っていたライバルがノーポイントに終わったことと、我々が勝てる位置につけていたことを考えると、複雑な気持ちです。トラブルが無ければ両選手権タイトルを獲得できるチャンスがありましたが、これもモータースポーツではよくあることなので受け入れるしかありません。とは言え、全体的に見れば波瀾万丈で厳しいシーズンを乗り越えてきたチームが今日報われ、嬉しく思います。
セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー):
レース途中までの展開が展開だっただけに、優勝できたなんて信じられません。チームがトラブルやペナルティ、不運などあらゆる逆境を乗り越えてチャンピオンを獲得でき、最高の気分です。それこそが我々の目標であり、チームの素晴らしい努力のおかげで成し遂げることができました。一時10位まで後退し、ピットストップでほぼ最後尾に落ちたときにはもうだめかと思いました。しかし、2人のチームメイトがタイヤを温存して走り続けてくれたおかげで、最後はタイヤにアドバンテージを持って追い上げることができました。今日の大一番のレースで、みんなと共に良い仕事を成し遂げることができて、本当にチームを誇りに思います。
ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー):
チームのみんな、そしてトヨタのためにも勝つことができて本当に嬉しいです。レース序盤は決して順調ではなく、ミディアムタイヤの選択も上手く行きませんでした。しかし最後にはセブが信じられないようなスティントを見せてくれました。本当に驚くべき走りで、彼こそスターです。トヨタや全てのパートナーの皆様、チームの全てのスタッフに感謝します。この勝利とチャンピオン獲得を目指して戦ってきたので、大きな意味を持つ結果です。シーズン最終戦を勝利で終えて、冬季オフシーズンに入れるのは最高です。
平川亮(8号車 ドライバー):
何という一日でしょう。波瀾万丈のレースでしたが、我々は最後まで諦めることなく、チーム一丸となって戦い続けました。ポールポジションからスタートした我々は、GT車両に追突されるアクシデントなどにも見舞われましたが、全力を尽くして戦い続け、最後はセブが最高の走りで逆境をはねのけてくれました。我々8号車は今シーズン、困難なレースも多かったので、ようやく最後に幸運を引き寄せることができて嬉しいです。シーズンを勝利で締めくくることができたことは素晴らしいですし、チームはもちろん、トヨタとパートナーの皆様にも本当に感謝しています。皆様の多大なる努力のおかげで勝ち取ったチャンピオンだと思います。