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2021年2月19日【イベント】

トヨタ、WRC初開催のフルスノーラリーで開幕2連勝を目指す

坂上 賢治

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TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamは、2月26日(金)から28日(日)にかけてフィンランド北部で開催される、FIA世界ラリー選手権(WRC)第2戦「アークティック・ラリー・フィンランド」に、セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(ヤリスWRC1号車)、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)の、3台のヤリスWRCで参戦。今回初めてWRCとして開催されるフルスノーイベントで、開幕戦ラリー・モンテカルロに続く総合優勝を目指す。

 

 

これまで、WRCではシリーズ第2戦として「ラリー・スウェーデン」が2月に開催されてきたが、今シーズンは新型コロナウイルスの影響により残念ながら中止となり、その代替として同じくフルスノーイベントである「アークティック・ラリー・フィンランド」がWRCの年間カレンダーに組み込まれた。

 

ラリー・フィンランドは例年夏季に、チームのメインファクトリーがあるフィンランド中部ユバスキュラを中心にグラベル(未舗装路)ラリーとして行われているが、アークティック・ラリー・フィンランドは最北部ラップランドの中心都市ロヴァニエミにサービスパークを置く、全く違う地域でのラリーであり、WRCとして開催されるのは今回が初めて。

 

ロヴァニエミ周辺は例年積雪が非常に多いため、近年のWRCで問題となることが多い雪不足の心配はほぼなく、完全なウインターコンディションが望める。同エリアでは毎年1月に「アークティック・ラップランド・ラリー」がフィンランド国内ラリー選手権の1戦として開催されており、今大会はその国内選手権と重なるステージもあるが、新たに設けられたステージや進行方向が逆のステージもあり、完全に同じラリーではない。

 

 

一部のステージは北極(アークティック)圏も走行し、それがこの大会の名の由来となっている。コースは低い気温により路面は全面的に凍結しているが、新雪が多く積もるとそれが走行抵抗になりタイヤのグリップ力も低下するため、ステージの出走順が1番の選手は「雪かき役」を担うことになり不利となる。

 

また、豊富な積雪によって道の両脇には高い雪壁ができ、ラリーカーは時にコーナー外側の雪壁の軟らかい部分に意図的にボディを当てながらコーナリングするなど、フルスノーラリーならではの特殊なドライビングも見られるのが大きな特徴だ。

 

タイヤについては、ラリー・スウェーデンと同様トレッド面に大量の金属製スタッド(スパイク)が埋め込まれた雪道専用のスタッドタイヤを常時装着して走行する。ちなみに今シーズンよりWRCはピレリが上位カテゴリーにワンメイクタイヤを供給しているが、昨年までのミシュランとは特性が異なるため、その新しいスタッドタイヤに合ったクルマのセットアップが求められるところも課題であり、その攻略も見どころのひとつと言える。

 

 

トヨタチームはシーズン開幕戦のラリー・モンテカルロでオジエが優勝。エバンスが総合2位に、ロバンペラが総合4位に入るなど理想的なスタートを切っており、マニュファクチャラー選手権トップに立っている。

 

史上最多となる通算8回目のモンテカルロ優勝でドライバー選手権の首位に立ったオジエは、過去にラリー・スウェーデンで3回優勝経験があり、昨年のスウェーデンでも表彰台争いに加わり総合4位を獲得した。

 

エバンスは昨年のスウェーデンでチーム加入後最初の勝利を手にし、その結果ヤリスWRCは2017年の参戦開始から4年間で3回目のスウェーデン優勝を達成。フルスノーラリーでのパフォーマンスを改めて証明。また20才のロバンペラは、WRカーによるWRC参戦2戦目だった昨年のスウェーデンで総合3位に入り、今年は自国開催のスノーラリーで昨年以上の結果を狙っている。

 

ラリーは26日金曜日の午前中にシェイクダウンが行われ、午後から競技がスタート。今大会最長となる全長31.05kmのステージを2回走行するが、2回目のSS2はナイトステージとなる。27日土曜日は、3本のステージをロヴァニエミの「サンタ・スポーツ」でのサービスを挟んで各2回走行、最後の2本のステージは暗闇の中を走る。

 

6本のステージの合計距離は144.04kmと3日間で最長の距離を走る1日となる。さらに最終日の28日日曜日は、全長22.47kmのステージを連続で2回走行。2回目のSS10は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。結局、ステージは全部で10本計251.08km、リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は856.05kmが予定されている。

 

 

ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
ラリー・モンテカルロでの素晴らしいリザルトで今シーズンのスタートをきりましたが、チームがうまく連携しながらよく機能しているのを見て本当に嬉しかったです。そして今、WRCとして初めて開催されるアークティック・ラリー・フィンランドを楽しみにしています。

 

何年も前から、十分な積雪が保証されるこのイベントがWRCとして開催されたら、きっと素晴らしいものになるだろうと語られてきました。今年そのチャンスが突然訪れ、関係者全員の素晴らしい仕事により、短期間で実現されることになりました。

 

真っ白な雪と太陽の光により、とてもテレビ映えのする素晴らしいラリーになると思います。ラップランドには長くて高速なコーナーが多く、自信を持てないと大幅にタイムを失ってしまうため、クルマの安定性が非常に重要です。

 

我々にとってはホームイベントであり、ヤリスWRCはこのようなコンディションのフィンランドの道で開発されてきたので、いつもより少しプレッシャーがかかると思いますが、我々はそれに対応できると確信しています。

 

セバスチャン・オジエ / ジュリアン・イングラシア (ヤリスWRC 1号車)
アークティック・ラリー・フィンランドの典型的なウインターコンディションは、我々がここ数年WRCで経験してきたものとは対照的なものになるでしょう。先週、ロヴァニエミの周辺でテストをした時はとても楽しく走ることができました。

 

クルマには満足していますし、準備は整っています。ただし、このようなスノーラリーでは、初日1番手スタートとなる我々は路面コンディションに大きく左右されるため、それがどうなるのかを見守る必要があります。

 

昨年の経験から、このようなコンディションではチームメイトとの接戦が予想されます。エルフィンは非常にモチベーションが高く、ホームイベントとして臨むカッレはそれ以上に気合いが入っているはずです。また、彼らだけでなく他のチームのライバルもそうに違いないでしょう。決して簡単ではないと思いますが、勝利に挑みたいと思います。

 

2021年アークティック・ラリー・フィンランドMap

 

エルフィン・エバンス / スコット・マーティン (ヤリスWRC 33号車)
ほとんどのドライバーは、このラリーへの出場経験がないはずです。もちろん、昨年のラリー・スウェーデンと同じような結果を目指しますが、状況次第だと思います。ここ数年、路面に氷や雪が少なかったスウェーデンとはコンディションがかなり違うはずです。非常に寒い時に行なわれたテストでは、その点を考慮して作業を進めました。

 

また、新しいピレリのタイヤにクルマのセットアップを最適化する必要もありました。ラリー・モンテカルロの時と同じように、この新しいタイヤに関する経験はありませんが、今回は選択肢がひとつしかないためよりシンプルで、集中して作業に取り組むことができました。全体的にフィーリングは良く、ラリーがとても楽しみです。

 

カッレ・ロバンペラ / ヨンネ・ハルットゥネン (ヤリスWRC 69号車)
ラップランドでのラリーに再び参戦できるのが嬉しいです。昨年、初めて出場した時はヤリスWRCでの初ラリーでした。もちろん、その経験が少しは役に立つと思いますが、未経験のステージや、反対方向に走るステージもあるので、大きなアドバンテージにはならないでしょう。

 

テストでは、タイヤの特性が今まで使ってきたものとは違うため、新しいタイヤに合ったセットアップを見つけることが最大の課題でしたが、フィーリングは良かったです。普段よりも少しプレッシャーを感じますが、特にフィンランドの人々が他のラリーの時以上に僕をフォローしてくれているので、ワクワクする気持ちがプレッシャーに勝っています。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。