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2023年11月17日【ESG】

トヨタ、資源循環型経済の実現に向けて電池3R施策を加速

坂上 賢治

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トヨタ自動車は11月17日、炭素中立(カーボンニュートラル)を反映させたクルマづくりに取り組むと共に、3R(Reduce、Reuse、Recycle)を旗頭に製品や素材の原材料を循環させて、息の長いモノづくりに取り組むことに加え、廃棄物を最小限に抑えるよう務めるなど、総じて「サーキュラーエコノミー(資源循環型の経済システム)」の実現に向けた活動を進めてきた想いを新たにしたという。

 

とりわけ電動車用バッテリーについてトヨタは、まず省資源で長寿命な電池を開発し、長期間安心してクルマを使用して貰えるよう心掛け、蓄電池の回収後には当該電池をリビルト・リユースし、最終的にはCO2排出量の少ない方法でリサイクルを行うなどの「電池3R/(1)Reduce (2)Rebuilt・Reuse (3)Recycle」の考えを掲げ、限りある資源を大切に使う取り組みに着手する。

 

その実行計画として「第7次トヨタ環境取組プラン」では、2025年を目標に、“電動車の普及を見据え、安全で効率的な電池3Rの仕組みの構築”をテーマに挙げており、「グローバルで最大限の電池回収・無害化」「日本・米国・欧州・中国・アジアの5地域で電池3Rの運用を開始」の2つの取り組みを具体的に進めていく構えとした。

 

そのトヨタが示す環境プランは以下の通り

 

第7次トヨタ環境取組プラン Toyota Global Car to Car Recycle Project
電動車普及を見据え、安全・効率的な電池3Rの仕組みを構築
 - グローバルで最大限の電池回収・無害化を目指す。
 - 日本・米国・欧州・中国・アジアの5地域で電池3Rを運用開始。

電池3Rのイメージ

 

(1)リデュース
電池の長寿命化を含め、廃棄物の発生を抑制する。

 

(2)リビルト・リユース
リビルト車載用電池を再び車載用電池として使うリユース車載用電池を、車載用以外(例えば定置用)の蓄電池として再利用する。

 

(3)リサイクル
再資源として利用する。

 

なかでも北米では、昨年よりRedwood Materialsとの協業を開始(弊誌、関連記事ページにジャンプします)し、ハイブリッド車とバッテリーEVの使用済み電池をリサイクルする取り組みを始めている。

 

今後は更に「電池3R/(1)Reduce (2)Rebuilt・Reuse (3)Recycle)」をグローバルで、例えば、国や地域によって現地調達できる電池工場の有無など、各国・地域の状況に合わせながら様々なパートナーとも連携し、取り組みを加速させ、電動車の普及を支える社会基盤の整備に貢献したいと考えているとした。

 

電池3Rの主な取り組み

 

(1)リデュース
電池を革新
液系リチウムイオン電池のさらなるエネルギー密度の向上やバイポーラ構造のBEVへの採用、良品廉価な普及版電池から、更なるパフォーマンス性を追求した電池に至るまで、顧客へ多様な選択肢を届けられるようラインアップの拡充を進めていく。電動化技術 – バッテリーEV革新技術(2023年6月13日)(トヨタ自動車の当該リリースページにジャンプします)

 

BEVのバッテリー関連性能の改善
bZ4Xでは、冷間時のバッテリー暖機性能向上等による、低外気温下における充電時間の短縮や、消費電力の抑制と空調制御の最適化による、実航続距離の延伸など、絶え間なく電動車の実用性の向上を図っていく。BEV「bZ4X」、一部改良で扱いやすさを向上(2023年10月25日)(トヨタ自動車の当該リリースページにジャンプします)

 

(2)リビルト・リユース
電動車用バッテリーで大容量スイープ蓄電システムを構築
株式会社JERAと共に、リユースした電動車(HEV、PHEV、BEV、FCEV)の駆動用バッテリーを活用し、大容量スイープ蓄電システムを構築。性能および容量の差が大きい使用済みの車載電池のリユースを可能にした。リユースした電動車用バッテリーで大容量スイープ蓄電システムを構築し、電力系統への接続を含めた運転を開始(2022年10月27日)(トヨタ自動車の当該リリースページにジャンプします)

 

定置用蓄電池システムの開発・実証
東電ホールディングス株式会社の「定置用蓄電池の運用技術・安全基準」とトヨタの「電動車用蓄電池のシステム技術」を融合した定置用蓄電池システム(出力 1MW、容量 3MWh)を開発した。このシステムを、豊田通商とユーラスエナジーホールディングスが、ユーラス田代平ウインドファームへ導入し、4社が連携して実証試験を開始した。電気自動車用蓄電池を活用した定置用蓄電池システムの開発・実証について(2023年5月29日)(トヨタ自動車の当該リリースページにジャンプします)

 

(2)リビルト・リユースと(3)リサイクル
ハイブリッドバッテリーの取り組み
トヨタは、ハイブリッド車から取り外した使用済みのニッケル水素バッテリーを検査、再組立て(リビルト)し、2013年より定置用の畜電池として、また2014年より車両用の補給電池として再利用し、エコな再生エネルギーとして活用している。

 

ハイブリッドバッテリーの取り組み

 

海外での取り組み
北米ではRedwood Materials社と協業のもと、電池回収・リサイクルに取り組んでいます。

両社のHEVとBEVの使用済み電池リサイクル協業を拡大
Redwood社のリサイクル網から正極活物質(CAM)と負極銅箔を調達
回収した希少金属をリサイクル、電池サプライチェーンに還元することにより、北米内の資材循環を実現

 

●北米での協業に関する活動は
弊誌別記事「米国トヨタ、レッドウッド社とEV蓄電池の材料調達で合意」を参照されたい

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。