東芝が開発したペロブスカイト太陽電池(PSC)モジュールが学術論文誌で、世界一のエネルギー変換効率を誇ると掲載される
東芝が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業で開発した、ガラス基板とフィルム基板の2種のペロブスカイト太陽電池モジュール(Perovskite Solar Cell/注1)が、学術論文誌「Progress in Photovoltaic」に掲載される世界の太陽電池トップデータ集の「Solar cell efficiency tables ver.52」(注2)に、認定機関で測定したモジュールでは世界一のエネルギー変換効率(注3)として掲載された。
認定は、太陽電池の変換効率を認定する国際的な測定機関の1つである産業技術総合研究所によって行われたもので、今回、このエネルギー変換効率が、「Solar cell efficiency tables」に世界一として掲載。
ガラス基板上に作製した面積802cm2(開口部サイズ 27.20cm×29.50cm)のモジュールのエネルギー変換効率は11.6%。東芝が6月に発表した開口面積703cm2(開口部サイズ 24.15cm×29.10cm)のモジュールでは、エネルギー変換効率11.7%の認定を受けており、サイズが800cm2以上の「モジュール」、200cm2以上の「サブモジュール」のカテゴリーで世界一となると云う。
東芝は、ペロブスカイト太陽電池の面積拡大化に向けた塗布プロセスの開発を行い、塗布溶液であるインク組成を工夫することで、基板上でのPbI2(ヨウ化鉛)とMAI(ヨ化メチルアンモニウム)の反応を制御してMAPbI3(ペロブスカイト)を結晶化し、塗布する際のプロセス制御とペロブスカイト結晶成長条件の適正化を行うことで、大面積での面内膜厚均一性、結晶膜質の均質性を高めることに成功(注4)。
その結果、大面積でも10%を超えるエネルギー変換効率を実現し、実用化に一歩近づいたとしている。
東芝は今後も、NEDOの委託事業「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」の中で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールについて、積水化学工業の封止技術を用いながら開発を進める。
また、実用化サイズとして想定される900cm2を目指し、さらなる面積拡大化を進めるとともに、ペロブスカイト層の材料改良等で、結晶シリコン太陽電池並みの高効率実現を実現し、基幹電源並みの発電コスト7円/kWhの実現を目指すとしている。
注1:光吸収層がペロブスカイト結晶で構成されている太陽電池
注2:M.A. Green, et al, “Solar cell efficiency tables (version 52)”, Prog Photovolt Res Appl. 2018;26:427–436.
注3:太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する効率
注4:6月18日付「面積世界最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発-モジュール面積703cm2で変換効率11.7%を実現-」 http://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1806_03.htm