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2021年11月12日【トピックス】

東芝、2023年度下期目処に3社分割へ

NEXT MOBILITY編集部

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東芝・HP

 

 

東芝は11月12日、事業を分離し、会社を「東芝」と「インフラサービスCo.(仮称)」、「デバイスCo.(仮称)」の独立会社3社に再編することを決定したと発表した。なお、新会社の上場は、2023年度下期を目処に完了する予定。

 

<3社の事業構成>

 

・インフラサービス・コーポレーションCo.は、エネルギーシステムソリューション、インフラシステムソリューション、ビルソリューション、デジタルソリューション、電池事業から構成。

 

・デバイスCo.(仮称/正式名称は決まり次第公表)は、デバイス&ストレージソリューション事業から構成。

 

・東芝は、キオクシアホールディングス(以下、キオクシア)と東芝テックの株式を保有。但し、キオクシアの株式については、実務上可能な限り速やかに売却。売却後の利益を、円滑な再編遂行を妨げない範囲で、全額株主還元に充当する。

東芝・ロゴ

「グループ事業を分離し、3つの独立会社とする」という今回の再編計画は、取締役会傘下で独立社外取締役5名から構成される「戦略委員会(以下、SRC)」が、株主の意見を聞き、潜在的なパートナーと協議して提案したと云う。

 

これを受け、取締役を含む経営陣は、5カ月近くに亘りその評価・検討を重ね、提案が株主価値の向上に資する最善の方法であると判断、取締役会にて全会一致で承認した。

 

組織再編で、インフラサービスCo.は、カーボン・ニュートラルの目標の達成およびインフラレジリエンスの向上に貢献する会社として、デバイスCo.は、社会・ITインフラの進化を支える会社として改めて出発することとなる。

 

東芝は、再編による成長戦略の明確化、意思決定のスピードの向上、コスト構造の最適化を通じて、各事業の競争力を強化し、持続的で利益ある成長と株主価値の向上を実現。国内大手企業初となるスピンオフ税制を用いた適格組織再編を目指す。

 

 

[東芝経営陣のコメント]

 

・取締役会議長(暫定)、代表執行役社長CEO 綱川智氏

 

当社グループは140年以上の歴史の中で、時代の変化と共に進化してきましたが、本日の決定も、例外ではありません。競争優位性をさらに高めるために、従来よりも柔軟に商機や課題に対応する必要があります。今般のスピンオフ計画は、シンプルな構造による大きな価値の顕在化、専門的かつ俊敏な経営の実現、そして株主への選択肢の増加に貢献するものです。

 

取締役を含む我々経営陣は、今回の戦略的再編がそれぞれの事業の競争力を高め、持続的で利益ある成長を実現するためのステップであり、ステークホルダーにとっての価値を最大化できる最善の道であると確信しています。当社グループが進むべき最善な道筋をSRCが徹底的に評価して下さったことに感謝しています。

 

・SRC委員長、社外取締役 Paul J. Brough氏

 

当社の株主をはじめ重要なステークホルダーの皆様に、株主価値の向上に資する大胆かつ野心的な計画を共有できることを大変喜ばしく思っております。SRCは5カ月近くにわたり、価値向上のためのあらゆる選択肢を総合的に検討した結果、当社グループの事業を主要事業ごとにスピンオフする今般の計画が当社グループおよび株主の皆様にとって最善の道であると取締役会に提案しました。

 

 

[会社再編について]

 

1.3社の新事業体制の概要

 

■インフラサービスCo.

 

エネルギーシステムソリューションやインフラシステムソリューション、ビルソリューション、デジタルソリューション、電池事業から構成されるインフラサービスCo.では、発電システムや電力流通、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、公共インフラ・鉄道・産業向けシステムソリューション、ビルの省エネソリューション、官公庁・民間企業向けITソリューションなどの製品・サービスを提供。

 

革新的技術を用いた専門分野に特化したソリューションを提供することで、再生可能エネルギーへの転換等の分野で主導的な役割を果たし、地球規模で掲げる野心的なカーボン・ニュートラルの目標の達成や、インフラレジリエンスの向上に貢献していく。

 

売上高は、2021年度に2兆900億円、年平均成長率(CAGR)3.3%で、2023年度には2兆2,300億円を見込む。また営業利益率は、同期間に5.1%から5.2%に伸長、再編完了後には、より拡大する見込み。

 

■デバイスCo.

 

デバイス&ストレージソリューション事業から構成されるデバイスCo.では、パワー半導体(シリコン、化合物)・光半導体・アナログ集積回路・データセンター向けの高容量ハードディスクドライブ(ニアラインHDD) 、半導体製造装置等の製品を扱い、社会・ITインフラの進化を支えるリーダーを目指す。

 

売上高は、2021年度に8,700億円、メモリ転売分を除く3.3%の年平均成長率(CAGR)で、2023年度には8,800億円を見込む。その内、注力領域であるパワー半導体では2021年度950億円を、2023年度には1,200億円、CAGR13%の成長を計画。ニアラインHDDでは、2021年度2,000億円を、2023年度2,800億円、CAGR 18%の大きな成長を見込む。また営業利益率は、2021年度の7.1%から、2023年度には6.1%となる見込み。

 

■東芝

 

東芝は、キオクシアと東芝テックの株式を保有。再編に伴い、キオクシア株式については、株主価値の最大化を図りつつ、実務上可能な限り速やかに現金化。手取り金純額は、円滑な再編遂行を妨げない範囲で、全額株主還元に充当する。

 

 

2.経営体制の改善

 

東芝グループでは、最高レベルのガバナンスを目指し、取締役会・執行体制を新会社ごとに、其々構成。新会社の取締役会では、過半数を独立社外取締役とし、戦略構築と経営陣の説明責任を確保する能力と経験を備えた多様な取締役で構成する。

 

これにより、其々の事業に於いて、顧客・従業員の専門性や知見を重視し、より機動的に意思決定を行い、必要に応じて潜在的な戦略パートナーの独自選定を可能とし、また、各社の事業に最適なレバレッジやキャッシュフローに合わせて、資本配分や株主還元を行うことができるようにする。

 

 

3.概要とスケジュール

 

インフラサービスCo.とデバイスCo.の分離に伴い、東芝株主には2つの新会社株式を分配。東芝は、関係当局との協議やアドバイザーとの協力により、法人税法上のいわゆるスピンオフ税制を利用した適格組織再編を目指し、最善かつ最も効率的な方法について検討を進める。

 

スケジュールについては、株主総会の承認が得られることや、関係当局の審査要求事項を満たすこと等を始めとする所要の手続きが完了することを条件に、2023年度下期の上場完了を目標とするが、実行可能な範囲でプロセスを早める努力をする。なお、分離後の事業体の括りに於いては、2021年度の実績を含む事業年度2期分の監査を経る必要がある。

 

SRCは、来年1~3月の間に実施を予定している臨時株主総会で株主に諮られるまで、この計画の準備を引き続き監督。また、臨時株主総会を以て、取締役会にSRCメンバーを含むステアリングコミッティが組成される予定。

 

 

4.株主価値の実現とガバナンスの向上

 

東芝では、今回の再編を、グループの歴史上の大きな転換点かつ、株主価値創造と還元に対する変わらぬ決意を示す新たなステップであると考え、グローバルスタンダードに沿った、内外投資家の期待に応えるコーポレート・ガバナンスを目指すコミットメントに基づく取組みを、今後も実施する。

 

■株主価値の実現

 

東芝は今年6月、通常配当に加え、9月に完了した1,000億円の自己株式取得と、一株あたり110円の特別配当による総額1,500億円の追加株主還元を発表しているが、適正資本を超える部分については、2022年度、2023年度に於いても、円滑な分離遂行を妨げない範囲で、自己株式取得を含む株主還元(今後2年間で1,000億円程度を想定)を実施。また、適切なレバレッジの活用を図ると共に、事業売却を含むポートフォリオの更なる見直しも継続する。

 

■ガバナンスの改善

 

東芝では現在、コーポレート・ガバナンスを改善。以下の取組みにより、株主との信頼回復に努めている。

 

・取締役会(今回の計画を監督・承認)は、75%が独立社外取締役で、全員が過去2年半以内に就任した取締役で構成。

・ガバナンス強化委員会の設置や報酬制度の見直し等、コーポレート・ガバナンス強化に向けた取り組み。

・指名委員会では今年に入り、取締役会議長およびCEOを指名するためにエクゼクティブサーチ会社を選定。

 

 

・注記が無い限り、表記の数値は全て連結ベースの12ヶ月累計。
・注記が無い限り、セグメント情報における業績を、現組織ベースに組み替えて表示。
・東芝はキオクシアの経営に関与しておらず、同社の業績予想を入手していないため、グループの財政状態、経営成績またはキャッシュ・フローの見通しにはキオクシアの影響は含まれない。
・計画の実行については、株主総会の承認が得られることや、関係当局の審査要求事項を満たすことを条件としている。
・適用ある法令等(有価証券上場規程及び米国法を含む)や税制を含む各種制度の適用・改正・施行の動向、関係当局の解釈、今後の更なる検討等その他の状況によっては、再編の実施に想定よりも時間を要し、また、その方法等に変更が生じる可能性がある。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。