東芝は、5月31日、同日開催の取締役会で、同社米国連結子会社のToshiba America Nuclear Energy Corporation社(TANE)が、米国テキサス州におけるSouth Texas Project発電所3号機、4号機の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)原子力プラントの建設工事プロジェクト(STP)から撤退することを決議したと、発表した。
同社は今後、関係者との調整を進め、早期の撤退完了を目指すとしている。
1.事業撤退の理由
東芝は、2008年3月26日にTANEを通じ、米国総合発電事業者のNRG Energy社(NRG)と、米国電力会社のCPS Energy社(テキサス州サンアントニオ市)が、テキサス州で計画していたSTP、及び北米におけるABWR共同事業開発を目的に、NRGとABWR開発会社(後にニュークリア・イノベーション・ノース・アメリカ社(NINA)へ社名変更)を設立することに合意した。
また、TANEは、正式にSTPの主契約者として2009年2月24日に、NINA代理人とプラント建設一括請負(EPC)契約を締結すると同時に、同プロジェクトに納入する一部の主要部品に対する繰延融資契約を締結し、STPの準備を進めた。
しかしその後、シェール革命による米国での電力価格の大幅低下や、東日本大震災後の原子力規制強化の流れなどから、プロジェクトの蓋然性が低下していたと云う。
それに加え、直近においても、電力市場価格の回復が見込めない一方で、プロジェクト維持のためのコストが継続的に発生していることや、米国原子力規制委員会から建設運転一括許可(COL ※)を2016年2月に取得した後も、STPへの新規の資金提供者が現れていない事等から、事業採算性の確保に目途が立たず、今回、STP から完全に撤退することを決定。
NINA 社設立契約、EPC契約、繰延融資契約も同時に解除し、融資契約における債権放棄を行うことを決議したとしている。
※COL:Combined License
東芝は、同日の決議を受け、今後NINA取締役会を開催し、NRGと共に撤退に向けた調整を進めてゆくとしている。
また、東芝は、原子力事業について、海外建設リスクの遮断という基本方針の下、海外での建設案件プロジェクトから撤退する方針であり、今回の決定もその一環となるとのことだ。
2.事業から撤退する子会社の概要
– 名称:Toshiba America Nuclear Energy Corporation
– 所在地:
3735 Glen Lake Drive, Suite 200,Charlotte, NC 28208, U.S.A
– 代表者の役職・氏名:President & CEO 加納 健二
– 事業内容:
ABWR建設、拡販、既設プラント保守・保全サービス、4S拡販
– 資本金:676 ドル(約 7 万円)
3.日程
2018年5月31日:同社取締役会決議
2018年末:撤退完了(予定)
4.今後の見通し
TANEはNINAに対して、5月31日時点で 641百万ドル(約701億円)の債権および147百万ドル(約161億円)の出資持分を有しているが、ほぼ全額について2017年度決算までに貸倒引当金および減損損失を計上済みであり、同社が今年5月15日付で公表した2018年度連結業績見通しへの影響は軽微だとしている。