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2024年10月31日【ESG】

東芝、バンコクで電動バイクタクシーのサブスク蓄電池実証

坂上 賢治

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実証実験で使用する東芝製リチウムイオン電池SCiB™セルを用いたバッテリーパックと電動バイク、充電機能付きロッカー

 

成長著しい電動バイクタクシーのサブスク蓄電池の普及拡大へ

 

来たる2025年に創業150周年を迎える東芝と、島根大学発スタートアップのナチュラニクスの2社は10月31日、タイ・バンコクで電動バイクタクシーのドライバー向けバッテリーサブスクリプションサービスに関する実証実験を9月30日に始動させたことを明らかにした。

 

バンコク市民の間では、渋滞を回避しやすい電動バイクタクシーのサービスが支持されている。しかしその一方で電動バイクタクシー事業者の中では、高温環境下でのバッテリーの劣化が課題となっている。

 

そこで東芝とナチュラニクスは、高温環境下でも長寿命特性を持つ東芝製リチウムイオン電池SCiB™セルを同国のバイクタクシー事業者へ提供。電動バイクタクシーの長期間の安定運用および利用料低減への貢献を目指している。

 

また東芝製バッテリーが長寿命で、それが結果的に当地に於ける蓄電池消費に係る使用材料の削減に繫がるため、参画両社は環境負荷の低減への寄与価値にも可能性を見いだしている。

 

今回、東芝とナチュラニクスが当該実証を行うことになった背景には、リチウムイオン電池が高温下で劣化し易いこと。2輪車・3輪車に搭載するバッテリーは冷却機構を付加しにくいことから、高温多湿なタイでは製品劣化が早く進行する傾向にあることなどがある。

 

従って多くの電動バイクタクシー事業では、1〜2年で高価なバッテリーを交換しなければならないケースが多く、その結果、経済合理性の観点からバイクタクシーの電動化普及率が進んでいない。併せてバッテリー特有の発火事故も発生していることから、当地ではコンパクトかつ高性能。しかも安全性も高い新しいバッテリーが求められている。

 

また来たる2035年のリチウムイオンバッテリー需要は、タイのような新興国エリアを包括すると、いずれは600GWh超に達すると予想されている。

 

しかし多くの新興国では、環境負荷の軽減などの観点からマイクロモビリティの電化に係るニーズは高い一方で、バッテリー劣化や安全性の観点から、未だマイクロモビリティの電化は全体需要の2.8%に留まるだろうと予想されている。ゆえにこれらの課題を解決することで、新興国市場の2輪・3輪向け市場では、巨大なバッテリーマーケットを開拓できる可能性が高い。

 

バッテリーサブスクリプションサービスを介した実証実験

 

さて今回の東芝とナチュラニクスによる実証実験の内容は、まずナチュラニクスが現地駐車場オペレーターとの合弁会社のウィンディ―・インターナショナル(タイ・バンコク)を通じて、電動バイクタクシーのドライバー向けのバッテリー交換サービスを提供する。

 

当該のバッテリー交換サービスでは、東芝製リチウムイオン電池SCiB™セルを使用。この実証活動のなかでバッテリー自体の特性の検証と必要であればその改良。バッテリー本体に併せて搭載する各種センサーの性能確認。通信機能を利用した際のデータ収集の有用性確認。取得データをAI(機械学習)によって解析すること。

 

 

二酸化炭素排出量のモニタリングも併せて行い環境負荷の低減効果を精査する。加えて利用ユーザーの電動バイクタクシーの事業者&ライダーへのアンケートなどを行い、2025年度のサービスの実用化に向けた最終確認を行う。

 

実証にあたって東芝では、「当社のリチウムイオン電池SCiB™セルは、充放電を2万回 (使用条件により特性は異なる)以上繰り返しても劣化しにくい長寿命と高い安全性が特長です。

 

この長寿命性は、タイのような高温環境下では極めて重要です。安全性にも優れ、内部短絡が生じても異常発熱や発火を起こしにくい原理的特長を持っています。またナチュラニクスのパック化技術や充電技術は、内部抵抗を極力減らすことで発熱を抑えることができます。

 

これらの技術を生かし、バッテリーの長寿命化と高出力化、更に6分という短時間での高速充電を目指します。なお充電待機電池を削減することで、オペレーションコストの削減も期待できます。

 

このバッテリーパックは、通信機能とデータ解析機能を備え、バッテリーの状態を常時把握すると共に、AIにより劣化状況を高精度で推測します。その劣化状態に応じて電動バイクでの使用後は定置型蓄電池用に転用するなど、様々なアプリケーションで横断的に使用することが可能です」と話している。

 

高温環境下で長寿命特性を持つSCiB™で新興国市場を開拓する

 

対してより具体的な実証手段としてナチュラニクスでは、「2輪などのフリートオペレーター(車両運行管理者)を通じて、顧客である電動バイクのドライバーにバッテリーをサブスクリプションモデルで貸与します。

 

モビリティメーカーはバッテリーのコストなしで車体を顧客に提供できるため、電動化の障壁となっている導入コストの高さを軽減することができます。これによりバッテリーメーカーである東芝は製造・販売だけでなく、バッテリーのレンタルによる収益も持続的に上げることができます。

 

また今回の実証に係るナチュラニクスと東芝の役割では、東芝がSCiB™セルを供給し、ナチュラニクスがバッテリーパックの開発・製造を担当し、両社でバッテリーのアセットマネジメント、システムの開発、設置、そして顧客へのサブスクリプションサービスの提供を共同で検討します。

加えて実証結果を踏まえてナチュラ二クスは2025年度にタイに子会社を設立し、SCiB™セルを搭載したバッテリーパックの量産を行う予定です。これにより、電動バイクや3輪車だけでなく、フォークリフトやゴルフカートなどにもバッテリーを供給することを目指します」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。