東京地下鉄(東京メトロ)は3月1日、上野グリーンソリューションズと共創し、列車混雑状況のリアルタイム提供を目指して、鉄道業界で初めてデプスカメラと人工知能(AI)を用いた列車混雑計測システムを開発したと発表した。
東京メトロでは、ウィズコロナ・ポストコロナにおいても利用者に選ばれる鉄道会社となるため、3つのキーワード、「安心な空間」「パーソナライズド」「デジタル」に基づく施策に取組んでいる。
これまで、車重や改札利用者数から時間帯ごとの混雑状況を推計し提供してきたが、複数路線で相互直通運転を行っている同社線では、他社車両の車重の取得や号車ごとにリアルタイムで混雑状況を提供することは難しい状況だった。そこで、より「パーソナライズド」な利用(一人ひとりの安心で快適な利用)の実現に向け、2019年9月より東西線東陽町駅、2020年11月より丸ノ内線新宿駅において、列車の駅出発時に車両側面をデプスカメラで撮影し、列車混雑状況を人工知能(AI)に機械学習させることで、号車ごとの列車混雑状況をリアルタイムに計測する実証実験を行ってきた。デプスカメラとは奥行き情報を取得する深度センサーを内蔵したカメラのことである。
今回、その技術検証が完了したことから、同社では列車混雑計測システムを東京メトロ全線の複数駅(各路線各方面ごとに数箇所)に展開する。2021年度を目途に時々刻々と変化する全線の列車混雑状況をリアルタイムに提供することを目指すとのことだ。
なお、本システムの一部については、ソフトウェア開発を委託した株式会社サイバーコア(本社:岩手県盛岡市、 代表取締役:阿部 英志)と共同で特許出願済。
1 システム概要
デプスカメラをホーム端に設置し、駅を出発する列車内の混雑状況を撮影。撮影された映像からエッジサーバで深度情報をテキストデータ化しクラウドサーバへ送信する。クラウド上では、機械学習した人工知能(AI)により分析・解析させることで、駅を発車してから十数秒で、列車内の混雑状況を号車ごとに算出する。
<システムの特長>
(1)機器は1ホームにデプスカメラ1台のみ
・ホーム端に設置し、駅を出発する列車内の混雑状況を1台ですべて計測
・エッジサーバやクラウドサーバの構成もシンプルかつ解析速度も速く高精度
(2)人工知能(AI)を用いた機械学習
・人工知能(AI)を使用し、様々な車両・混雑状況に対応
・従来、人力で測定していた混雑率と同等以上の信頼性で、営業時間中の全時間帯を計測可能
2 設置駅
東京メトロ全線の複数駅(各路線各方面数箇所程度)
3 今後の予定
稼働準備が整った駅より順次計測開始し、東京メトロ全線で2021年度を目途に、リアルタイムの列車混雑状況を利用者に提供することを目指し取り組んでいく。