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2024年10月17日【CASE】

ティアフォー、松尾研究所と自動運転+生成AIプロジェクト

坂上 賢治

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自動運転の民主化を社是に掲げるティアフォー(TIER Ⅳ)は10月17日、東京大学大学院工学系研究科松尾・岩澤研究室で研究成果の開発・実装を担う松尾研究所と、自動運転レベル4の運行設計領域(Operational Design Domain:ODD)を飛躍的に拡大させるための生成AI開発を開始した。

 

松尾研究所は国立大学法人 東京大学 工学系研究科 松尾・岩澤研究室に伴走し、大学を中心としたイノベーションを生み出す「エコシステム」を作り、大きく発展させることを目的に設立された。松尾・岩澤研究室の「研究」の成果・技術の「開発・実装」を行い、広く社会に普及を目指し、日本の産業競争力の向上に貢献している。

 

今回のプロジェクトでは、大量の走行データを学習して実世界の運転行動の常識を模倣できる大規模世界モデルを構築することで、事前に定義したルールが適用できない状況に於いても、周囲の環境情報から適切な運転行動を生成可能なEnd-to-End AIを実現できるという。

 

自動運転1.0と自動運転2.0

 

また、最新の生成AIと従来のロボット工学を組み合わせたハイブリッドなフレームワークを設計することで、商用車から自家用車まで様々な車種に対応でき、かつ高速道路から市街地まで様々な環境に対応できる自動運転ソフトウェアを実現。これらの成果はすべてオープンソースとして公開する予定としている。

 

自動運転レベル4に対する従来のロボット工学的なアプローチでは、認知・判断・操作に係る様々な機能モジュールを組み合わせるために、事前定義された高精度地図や詳細なルールの記述が必要だった。

 

このようなアーキテクチャは自動運転1.0と呼ばれ、ティアフォーが開発を主導する自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」にも採用され、国内外の様々な自動運転レベル4の製品サービス開発で実績を重ねてきた。

 

一方、近年では、認知・判断・操作に係る様々な機能モジュールと同じ効果を1つのEnd-to-End AIモデルで実現できるようになり、そこに従来のロボット工学的なアプローチも織り交ぜた自動運転2.0アーキテクチャが登場し、自動運転レベル4のODD拡大に繫がっている。

 

世界モデルの概要

 

ティアフォーと松尾研究所は、2020年から自動運転に向けたAI技術開発に関する協業を開始し、生成AIによるアプローチとロボット工学によるアプローチの両方の研究開発を進めてきた。

 

同プロジェクトでは、それらの成果を活用した大規模世界モデルに基づくEnd-to-End AIを実現し、オープンソースソフトウェアとして公開することにより、自動運転2.0の民主化を目指す。また、以下に示す社内外の複数のAIプロジェクトと連携し、更なる付加価値を提供していく。

 

  • ニューラルシミュレータによるEnd-to-End AIの学習および評価
  • 協調的機械学習基盤(Co-MLOps)を用いた大規模データによるEnd-to-End AIの学習
  • Cars That Think and Talk(CT3)をインタフェースとしたEnd-to-End AIの動作説明

 

 

これらに加えて、ティアフォーは、次世代の自動運転2.0アーキテクチャとして、確実な安全性担保のために詳細なルールが記述できる従来のロボット工学的なアプローチと複雑な場面での可用性担保のためのEnd-to-End AIを統合したハイブリッドフレームワークの設計に取り組む。また、この開発成果を「Autoware」に組み込み、2025年中に公開する予定。

自動運転2.0に向けたハイブリッドフレームワークの設計

 

この取り組みについてティアフォー 代表取締役社長CEO加藤真平氏は、「生成AIの進化は目覚ましく、自動運転2.0を実現するための重要な鍵となっています。AI開発を強みとする松尾研究所と自動運転技術開発を強みとする当社の強力なタッグにより、ロボットタクシーを始めとした自動運転の社会実装をより加速することができると信じています。また、「Autoware」の開発を主導する会社として、この最先端の技術をオープンにすることでコミュニティ全体での技術開発を推進していく世界を目指します」と述べている。

 

また株式会社松尾研究所 技術顧問の松尾豊氏は、「世界モデルは、人間の外界に関する知的能力をモデル化した技術であり、複雑な実環境下での安全な移動を実現する自動運転に欠かせない要素といえます。本プロジェクトを通じて、安全で快適なモビリティの実現に貢献できることを期待しています」と語っている。

 

社名:株式会社ティアフォー
所在地:東京都品川区
URL:https://tier4.jp
設立年月:2015年12月
主な事業内容:
・自動運転プラットフォーム開発事業
・自動運転ウェブサービス開発事業
・自動運転システム開発キット販売事業
・自動運転技術の教育事業

 

社名:株式会社松尾研究所
所在地:東京都文京区
URL:http://matsuo-institute.com
設立年月:2020年2月

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。