NEXT MOBILITY

MENU

2024年11月22日【イベント】

参画3社、鉄道モーダルシフトの省エネ低温物流に成功

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

低温物流に取り組むアイ・ティ・イー、総合商社の丸紅、大手食品流通の全日本食品(全日食チェーン)の3社は11月22日、電源を使用せずに最大108時間・2〜8°Cの温度と90%の湿度を維持する特殊構造の「IceBattery(アイスバッテリ)®20FT(フィート)ハイブリッドコンテナ」を使った鉄道輸送試験を成功させた。

 

この成功によりITEによるIceBatteryを使ったハイブリッド冷蔵技術が、日本国内の物流で現実的な解決策を示唆できただけでなく、積載品の品質を維持しながら輸送中に電力/ディーゼルを一切使用しない省エネ輸送を実現できることを実証した。

 

このIceBatteryとは、樹脂容器のなかに専用液体を詰めた保冷剤で、これが積まれたコンテナを使用した。仕組みとしては、このIceBatteryを一旦凍らせてしまえば、一定時間(一例では120時間以上)の間、あらかじめ定めた庫内温度が保てる仕組みだ。今回は12種類の冷蔵品(後述)を千葉県流山市から北海道恵庭市まで運んだ。

 

なお今回、ITE独自のハイブリッドコンテナの性能確認を行った理由には、現在、日本国内での食品流通で複数(以下参照)の課題を抱えていることがある。

 

—————————————

 

  • ドライバー不足:2024年問題により長距離物流におけるトラックの運転手不足が深刻化

 

  • 低温物流コストの高騰:燃料費の上昇・ドライアイスの不足により、輸送コストが増加

 

  • 気候変動問題:輸送時における膨大な量の温室効果ガス(GHG)の排出

 

—————————————

IceBattery® 20FTハイブリッドコンテナによる解決策は以下の通り

—————————————

 

【実証】従来型の長距離トラック輸送から、IceBattery ®20FTハイブリッドコンテナを利用した鉄道輸送へ転換。千葉県流山市から北海道恵庭市の区間の輸送中に、一切のディーゼル発電機や電源を使用しない低温物流の実証実験を行った。

 

利用したハイプリッドコンテナは、青函トンネル内に於いても庫内を冷却し続けることができ、農産品を最大7日間新鮮に保つことができている。

 

Screenshot

 

また輸送を開始する前の予冷時間以外、輸送中に燃料や電力を使用し冷却する必要がないことから、予冷と輸送にかけた合計120時間に於ける冷却に要したCO2排出量は約0.02トン-CO2のみとなり、通常のリーファーコンテナに比べ、CO2排出量を大幅に削減できた。ゆえに同ソリューションは、日本の農家にとって大きな利益をもたらし、農産品をより新鮮に低コストで提供することができる。

 

—————————————

 

< 試験運用時の効果 >

今実証に利用したIceBattery®20FTハイブリッドコンテナは、輸送中に電源を使用せずに最大108時間、2〜8°Cの温度と90%の湿度を維持。乳製品や豆腐、野菜を含む12種類以上の冷蔵品の品質を損なうことなく輸送できる。また仮に輸送に遅延が生じた場合でも、108時間など一定期間内であれば、コンテナ内の温度と湿度を安全に保つことができ、農産品の鮮度を維持できる。

 

< 同ソリューションで解決できること >

  • ドライバー不足の解消:トラックから鉄道へのモーダルシフトにより、ドライバーの長時間勤務が必要となる長距離輸送の低減。

 

  • 燃費・エネルギーコストの削減:輸送中にコンテナ冷却用のディーゼル燃料を必要としないため、燃料の使用量が減少し、持続可能なサプライチェーンをサポートします。また、CO2排出量を効果的に削減します。

 

  • 鮮度と品質保持:IceBattery®が装備されているコンテナの特殊構造により、生鮮品の水分損失が抑制され、重量低下と品質劣化を防ぎます。

 

—————————————

 

< 更なる今後への期待 >

  • モーダルシフトの促進:鉄道輸送への切替えによる物流コストの削減と環境負荷の低減。

 

  • 食の安全を確保:生鮮品の品質を長期間保持し、食品の安全性を高めフードロスを削減。

 

  • エネルギー効率:使用エネルギーを大幅に削減し、低温輸送・保管のデュアルシステムとして機能。

 

  • ※試験輸送が完了した後の5日目以降でも湿度は90%で推移し、10℃以下の温度を維持し続けた。
  • ※輸送後の農産品の状態にほとんど変化が見られず、ほうれん草は往復でわずか1gの重量減少に抑制できた。
  • ※同試験は、日本のコールドチェーンの変革に向けた重要な第一歩となる。ITEはパートナー企業とともに気候変動問題と経済的課題に対応するために、持続可能で費用対効果の高い低温物流ソリューションを提供できる。

 

—————————————

 

ITEのパンカジ・ガルグCEOは、「日本は現在多くの課題に直面しており、これらの問題に総合的に対処することが不可欠です。今回のトライアル輸送は、多くの課題に対して実行可能な解決策が存在することを示すための第一歩に過ぎません。

 

特に、食品部門に於いて私たち日本企業が一丸となってこれらの障害を乗り越え、国内および世界でメイド・イン・ジャパンの食品を再活性化して行けることを確信しています。日本製品が世界に誇る伝統的な品質であることを象徴しています」と述べて結んだ。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。