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2022年9月20日【MaaS】

東大、安全なクルマ社会に自動運転車の「眼」が貢献するか

坂上 賢治

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時前の「眼」で意志を示す自動運転車が交通事故リスクの低減に貢献

 

東京大学 大学院 情報理工学系研究科のチャン チアミン特任講師・五十嵐健夫教授が中心の研究グループは9月20日、自動運転車に搭載した「動く眼」で視線を送る事で、歩行者へ対して道路安全の遵守を促す可能性がある事を示した。( 坂上 賢治 )

 

 

実験では、いわゆるグリーンスローモビリティ型の自動車運転車( 自動運転ソフトウエア開発のティアフォーが貸与 )に、歩行者に対してクルマの視線の動きを感じさせるモーター駆動の「動く眼」を付けた実験車両を製作。

 

次に、当該車両の走行を撮影した映像を利用し、バーチャルリアリティー環境下で実験を行ったところ( 無作為に選んだ18才~49才の男女、各9名の計18名が実験参加者に係る協力を得た )、車両前面の〝動く眼〟を認識した歩行者の気づきで、道路横断に於ける安全を促せる可能性を確認。

 

この結果、自動車に眼を付ける事が歩行者の道路横断時の判断を助け、危険な場面を低減出来る事を示唆した。

 

 

道路利用者と自動運転車との意思疎通の難しさは技術者にとっても悩ましい課題

 

つまり自動運転車の動く眼の視線から、道路横断者がその動きを読み取って道路上の安全性を改善させる可能性を示した格好だ。

 

近年、静粛性の高い電動車の普及もあり狭い道路上での低速走行中などに於いて、歩行者とニアミスを起こす車両が増えている。

 

また将来的には、商品配送を担うデリバリーロボットなど、周囲の安全を確認しながら極低速で市街地の路地を走行する自動車運転車両が大きく普及した場合、当該車両と歩行者との事故発生の可能性はどうしても否定出来ない要素だ。

 

こうした周囲の道路利用者と自動運転車との「意思疎通」の難しさは、自動運転車両の開発担当者にとっても悩ましい課題のひとつである。

 

 

自動運転車と歩行者との意思疎通の必要性とそのヒントを提示している

 

これが仮に人間が運転する既存車両であれば、運転者と歩行者とのアイコンタクトによって、車両自体の意思を歩行者と共有する事も有る訳だが、他方AIを搭載しているとはいえ、多くの自動運転車では、そのようなコミュニケーションを取る機能が搭載されていない。

 

またそもそも自動運転車に「眼」を付ければ全てが解決する訳ではない。ただ同実証は、歩行者と自動運転車とで「何らかのコミュニケーション」を円滑にするためのアイデアを見つける努力は、未来に向けてとても重要である事。今回は、その可能性のヒントを提示していると言えるだろう。

 

現に今回の研究気ループによると、「今回は主にプロトタイプ車への実装に止まっており、様々な場面に於ける歩行者の反応については解明され切っているとは言えません。

 

 

一方で研究では、自動運転車に眼を付与する事により、歩行者の道路横断時の判断の迅速化が実現する事が判明。危険な道路横断場面が少なくなる可能性がある事。歩行者の主観的な安全感・危険感を認識させる事も分かりました。

 

また眼による視線を提示する自動運転車とのインタラクション内容で、男性と女性との行動の間に差異がある事も示唆されました。

自動運転車は社会変革をもたらすが、それには事故を未然に防ぐ仕組みが必要

 

具体的には、 自動運転車に視線を付与する事によって男性は危険な道路横断( 車両が通過しようとしている状況での横断 )を低減出来る可能性がある事( 49%→19% )。対して女性では、安全な状況下( 車両が停止しようとしている状態 )での無駄な停止を低減出来る可能性がある事( 72%→34% )が観察されました。

 

今日、自動運転の実現は大きな社会変革をもたらすものと期待されています。しかし、その実現 のためには安全が十分に確保されている事。事故を未然に防ぐ仕組みが整っている事が重要です。

 

現在の自動運転車の大きな問題のひとつに、歩行者を始めとする周囲の道路利用者との意思疎通の欠如があり、この問題の解決が求められています。本研究成果は、このような自動運転車と道路利用者との意思疎通を円滑にするためのひとつの可能性を示しています」と述べている。

 

なお同研究成果は、2022年9月17日から20日まで、韓国ソウル市で行われた自動車とのインタラクション技術を扱う国際会議「ACM AutomotiveUI 2022( 14th International ACM Conference on Automotive User Interfaces and Interactive Vehicular Applications )」で発表された。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。