慶應義塾大学病院とWHILLは11月19日、9月1日に開始した院内の地図情報をもとに患者を搬送する自動運転システムの実証実験について、11月9日に利用者が1,000人を超えたことを公表した。同取り組みは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトによる支援を受けて行なわれている。
同システムは、スタッフのサポートを必要とせず、パーソナルモビリティを使って自身の操作で院内の目的地まで移動することが可能となっている。同実証実験は、院内の診療エリアが広くなったことで歩行距離が長くなり長距離歩行に不安のある患者や、足腰に障害がある患者など、自身で目的地まで移動するのが困難な患者に対して、院内の移動手段を提供し歩行時の転倒防止を図り、院内の快適な医療環境を整え医療サービス向上を図るもの。あわせて、自動運転により病院スタッフがサポートすることなく目的地まで移動することで病院スタッフの負担軽減を同時に達成することを目標としている。
同システムでは予め院内の地図情報を作製し、地図情報を記憶した自動運転、衝突回避機能を搭載したパーソナルモビリティが、センサー群で探知した周囲の状況を解析しながら運行する。搭乗者自身は操作することなく出発時に設定した目的地へ乗っているだけで移動するシステムだ。
実際に利用した患者の7割は、車椅子を利用していないが長距離の歩行を困難に感じるシニア層で、利用者からは、「すごく助かった(楽だった)」「玄関からも利用できるようにしてほしい」「台数を増やしてほしい」「入院時の検査に利用したい」「今後、病院に来る際には毎回利用したい」「担当医の勧めで利用した」「麻酔をしてふらふらしていたので助かった」などの声が寄せられた。
■実証実験概要
時期:2020年9月1日(火)~2021年3月31日(水)
場所:慶應義塾大学病院内(1号館1階総合案内~正面入口総合案内)
内容:患者を「WHILL自動運転システム」(注釈/図)により、所定の場所に搬送する。往路は運転を必要としない自動運転モードで走行し、利用終了後は無人運転により元の場所に返却される。
対象:慶應義塾大学病院の患者
【用語解説】
WHILL自動運転システム:WHILL株式会社が開発するパーソナルモビリティに自動運転・衝突回避機能などを搭載した「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するシステムから構成される、歩道・室内領域のための自動運転システム