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2024年6月14日【オピニオン】

自動車会議所、今年度も税制と自賠責繰戻し含む重点5項目を設定

中島みなみ

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定時総会で新役員体制や重点事業について語る内山田会長

 

日本自動車会議所が新しい人事の決定と共に、2024年度の重点項目について発表した。昨年度に引き続き税制と自賠責繰戻しを含む5項目を重点に、要望活動を続けていく。同会議所は生産、販売、運輸・交通、そのほか自動車関連産業の業界団体と企業で165団体で構成される組織で、創立以来75周年を迎えている。

 

巨額過ぎて戻せない 5900億円の自賠責積立金の返済実行を、今年も要求

 

2024年6月11日、日本自動車会議所が定時総会を開催し、重点5項目を決めた。その中でも、古くから熱心に活動を行っているのが、自賠責保険料の運用益積立金の返還請求だ。報道陣に対して総会内容の説明に立った畠山太作常務理事こう話した。
「5900億円の早期返済を働きかけていく。検討会、会議体に参画して、我々の主張を表明していく」

 

 

被害者救済のための自動車賠償責任保険は、自賠責法のできた1955年~2002年までは自動車ユーザーの保険料をもとに再保険をかける政府再保険制度で運用されていた。現行のノーロス・ノープロフィット(適正原価主義)と違って保険料は割高だった。この再保険で生じた積立金の約1兆円が、国の財政の基本である一般会計に貸し出され(繰り入れ)、今でも5900億円が返済(繰戻し)されていない。

 

日本自動車会議所は、この返済の再開を財務省に働きかけた。自動車ユーザーと国との貸借関係は1994年と1995年の2年間、1兆1200億円を積立金から繰り入れすることで始まった。期限を区切って全額返済する条件だったが、その後、国土交通担当大臣と財務担当大臣の覚書で残高の確認がなされるだけで、2004年~2017年まではまったく返済が実行されない状態が続いた。2018年から今日まで続く返済再開は、地道な返済要求が実った形だ。

 

また、自動車ユーザーは自賠責保険料に上乗せする形で、2023年から賦課金を負担している。自動車事故による被害者や家族支援や事故防止対策に使われる費用だが、この負担は、自賠責保険の積立金返済と密接に関わっている。積立金が予定通り返済されていれば、賦課金の必要はなかったからだ。畠山理事はこう訴えた。
「これに対しても我々の必要な主張を行っていきたい」

 

6月11日の定時総会に続き、翌12日には報道説明会が開かれた。報道説明会に於ける写真下中央は島﨑豊 専務理事、左は畠山太作 常務理事。

 

環境負荷低減のカギを握るポストエコカー減税の調整役として存在感

 

自動車ユーザーに密接なかかわりを持つもう一つの重点項目が「自動車関連税制」だ。税制については、再任された内山田竹志会長の懇親会挨拶でも言及された。関係大臣をはじめとする多数の国会議員の出席もあった。
「とりわけ『税制』は、2026年で切れるエコカー減税、その後の税体系全体をどうしていくかなど重要な議論が始まる年であると認識しております。税制の合理化、そして個人負担の低減などを考えながら、政府・与党の皆様と議論していく重要な年であると思っています」

 

内山田会長は税の負担感は高まり、「取れるところから取っているのではないか」というユーザーの声があると、強調した。

 

現在のエコカー減税は、優遇措置が2026年末まで続くが、2023年度の与党税制改正大綱では、この期限到来までに抜本的な見直しについては検討を進めると記された。それが今年のタイミングとなる。EV普及によるガソリン税などの減収を「出力課税」や「走行距離課税」で埋めようという動きも出ていた。自動車ユーザーの税負担は何も言わなければ重くなる一方となる。

 

「カーボンニュートラル時代を見据えた新しい税体系について、ユーザー一人ひとりの思いを踏まえて、政府や自動車議連の皆さまと議論しながらよい解決策を目指していきたいと思います」と、内山田会長は話す。

 

日本自動車会議所は、この2点のほかにも、
・業界結束強化
・交通安全のPR
・クルマ好き、バイク好きファンの拡大
について、昨年に引き続き活動していくことを決めている。

 

写真は、向かって右奥から内山田竹志会長、(以下は新任役員)片山正典 副会長(日本自動車工業会会長)、加藤敏彦 副会長(日本自動車販売協会連合会会長)、茅本隆司 副会長(日本自動車部品工業会会長)、赤間俊一 理事(全国軽自動車協会連合会会長)、上野金太郎 理事(日本自動車輸入組合理事長)、島﨑豊 専務理事。

 

また、定時総会で決まった役員は以下の通りだ。
・会長
内山田 竹志(学識経験者)
・副会長
片山 正則(新任役員/日本自動車工業会会長)
加藤 敏彦(新任役員/日本自動車販売協会連合会会長)
坂本 克己(全日本トラック協会会長)
清水 一郎(日本バス協会会長)
川鍋 一朗(全国ハイヤー・タクシー連合会会長)
茅本 隆司(新任役員/日本自動車部品工業会会長)
竹林 武一(日本自動車整備振興会連合会会長)
・理事
赤間 俊一(全国軽自動車協会連合会会長)
上野 金太郎(日本自動車輸入組合理事長)
海津 博(日本中古自動車販売協会連合会会長)
・専務理事
豊(新任役員/事務局担当 代表理事)
・常務理事
畠山 太作(事務局担当)
・理事(常勤)
橋本 勝也(事務局担当)
・監事
安原 敬裕(全国自動車標板協議会会長)
中村 知美(新任役員/SUBARU取締役会長)
原 典之(三井住友海上火災保険取締役会長)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。