定時総会で新役員体制や重点事業について語る内山田会長
日本自動車会議所が新しい人事の決定と共に、2024年度の重点項目について発表した。昨年度に引き続き税制と自賠責繰戻しを含む5項目を重点に、要望活動を続けていく。同会議所は生産、販売、運輸・交通、そのほか自動車関連産業の業界団体と企業で165団体で構成される組織で、創立以来75周年を迎えている。
巨額過ぎて戻せない 5900億円の自賠責積立金の返済実行を、今年も要求
2024年6月11日、日本自動車会議所が定時総会を開催し、重点5項目を決めた。その中でも、古くから熱心に活動を行っているのが、自賠責保険料の運用益積立金の返還請求だ。報道陣に対して総会内容の説明に立った畠山太作常務理事こう話した。
「5900億円の早期返済を働きかけていく。検討会、会議体に参画して、我々の主張を表明していく」
被害者救済のための自動車賠償責任保険は、自賠責法のできた1955年~2002年までは自動車ユーザーの保険料をもとに再保険をかける政府再保険制度で運用されていた。現行のノーロス・ノープロフィット(適正原価主義)と違って保険料は割高だった。この再保険で生じた積立金の約1兆円が、国の財政の基本である一般会計に貸し出され(繰り入れ)、今でも5900億円が返済(繰戻し)されていない。
日本自動車会議所は、この返済の再開を財務省に働きかけた。自動車ユーザーと国との貸借関係は1994年と1995年の2年間、1兆1200億円を積立金から繰り入れすることで始まった。期限を区切って全額返済する条件だったが、その後、国土交通担当大臣と財務担当大臣の覚書で残高の確認がなされるだけで、2004年~2017年まではまったく返済が実行されない状態が続いた。2018年から今日まで続く返済再開は、地道な返済要求が実った形だ。
また、自動車ユーザーは自賠責保険料に上乗せする形で、2023年から賦課金を負担している。自動車事故による被害者や家族支援や事故防止対策に使われる費用だが、この負担は、自賠責保険の積立金返済と密接に関わっている。積立金が予定通り返済されていれば、賦課金の必要はなかったからだ。畠山理事はこう訴えた。
「これに対しても我々の必要な主張を行っていきたい」
6月11日の定時総会に続き、翌12日には報道説明会が開かれた。報道説明会に於ける写真下中央は島﨑豊 専務理事、左は畠山太作 常務理事。
環境負荷低減のカギを握るポストエコカー減税の調整役として存在感
自動車ユーザーに密接なかかわりを持つもう一つの重点項目が「自動車関連税制」だ。税制については、再任された内山田竹志会長の懇親会挨拶でも言及された。関係大臣をはじめとする多数の国会議員の出席もあった。
「とりわけ『税制』は、2026年で切れるエコカー減税、その後の税体系全体をどうしていくかなど重要な議論が始まる年であると認識しております。税制の合理化、そして個人負担の低減などを考えながら、政府・与党の皆様と議論していく重要な年であると思っています」
内山田会長は税の負担感は高まり、「取れるところから取っているのではないか」というユーザーの声があると、強調した。
現在のエコカー減税は、優遇措置が2026年末まで続くが、2023年度の与党税制改正大綱では、この期限到来までに抜本的な見直しについては検討を進めると記された。それが今年のタイミングとなる。EV普及によるガソリン税などの減収を「出力課税」や「走行距離課税」で埋めようという動きも出ていた。自動車ユーザーの税負担は何も言わなければ重くなる一方となる。
「カーボンニュートラル時代を見据えた新しい税体系について、ユーザー一人ひとりの思いを踏まえて、政府や自動車議連の皆さまと議論しながらよい解決策を目指していきたいと思います」と、内山田会長は話す。
日本自動車会議所は、この2点のほかにも、
・業界結束強化
・交通安全のPR
・クルマ好き、バイク好きファンの拡大
について、昨年に引き続き活動していくことを決めている。
写真は、向かって右奥から内山田竹志会長、(以下は新任役員)片山正典 副会長(日本自動車工業会会長)、加藤敏彦 副会長(日本自動車販売協会連合会会長)、茅本隆司 副会長(日本自動車部品工業会会長)、赤間俊一 理事(全国軽自動車協会連合会会長)、上野金太郎 理事(日本自動車輸入組合理事長)、島﨑豊 専務理事。
また、定時総会で決まった役員は以下の通りだ。
・会長
内山田 竹志(学識経験者)
・副会長
片山 正則(新任役員/日本自動車工業会会長)
加藤 敏彦(新任役員/日本自動車販売協会連合会会長)
坂本 克己(全日本トラック協会会長)
清水 一郎(日本バス協会会長)
川鍋 一朗(全国ハイヤー・タクシー連合会会長)
茅本 隆司(新任役員/日本自動車部品工業会会長)
竹林 武一(日本自動車整備振興会連合会会長)
・理事
赤間 俊一(全国軽自動車協会連合会会長)
上野 金太郎(日本自動車輸入組合理事長)
海津 博(日本中古自動車販売協会連合会会長)
・専務理事
島﨑 豊(新任役員/事務局担当 代表理事)
・常務理事
畠山 太作(事務局担当)
・理事(常勤)
橋本 勝也(事務局担当)
・監事
安原 敬裕(全国自動車標板協議会会長)
中村 知美(新任役員/SUBARU取締役会長)
原 典之(三井住友海上火災保険取締役会長)
◇