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2025年2月7日【イベント】

TGR、ラリー・スウェーデンに5台のGRヤリスラリー1で参戦

坂上 賢治

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シーズン唯一のフルスノーイベントに合計5台のGR YARIS Rally1で挑戦する

 

TGR-WRT( TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team )は、2月13日から16日に掛けてスウェーデンで開催される2025年FIA世界ラリー選手権( WRC )第2戦、シーズン唯一のフルスノーイベントとなる「ラリー・スウェーデン」に5台のGR YARIS Rally1で参戦する。

 

その参戦体制は、エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組( GR YARIS Rally1 33号車 )、カッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手組( 69号車 )、勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組( 18号車 )に、プライベーターのロレンツォ・ベルテリ選手/シモーネ・スカットリン選手( 37号車 )と、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ選手/マルコ・サルミネン選手組( 5号車 )を加えた、合計5台のGR YARIS Rally1による挑戦となる。

 

TGR-WRTは、2025年WRC開幕戦ラリー・モンテカルロで、セバスチャン・オジエ選手が自身の記録を更新する同大会10勝目を獲得し、エバンス選手が総合2位でフィニッシュ。マニュファクチャラー選手権に於いては、チームとして獲得可能な最大ポイントを得ることに成功し、理想的な形でシーズンのスタートを切った。

 

そして迎える第2戦ラリー・スウェーデンは、今シーズンも数戦にのみ出場するオジエ選手が参戦しないため、出場選手の中ではエバンス選手がドライバー選手権ランキング最上位となり、「フルデイ」初日の金曜日は出走順一番手でステージに臨むことになる。

 

エバンス選手は2020年にこのラリーで優勝しており、2024年大会では総合2位に入るなど、スノーラリーも得意としている。ラリー・モンテカルロで総合4位を獲得した2022、2023年の世界王者ロバンペラ選手は金曜日の出走順が3番手となり、2022年大会以来となるスウェーデン優勝を目指す。

 

そして、サポート選手権であるWRC2で2018年にスウェーデン大会を制し、2022年には総合4位に入った勝田選手が、今回はチームの3台目としてマニュファクチャラー選手権ポイント獲得の任に当たる。

 

それに加え、Rally1車両でのシーズンフル参戦は今年が初となる23歳のパヤリ選手が、モンテカルロに続きTGR-WRT2から出場。さらに、TGR-WRTのカスタマープログラムにより、イタリア人プライベーターのベルテリ選手がGR YARIS Rally1をドライブ。ラリー・スウェーデンでのTGR-WRTとベルテリ選手の協力関係は、これで3年連続となった。

 

ラリーは安定したスノーコンディションを求め3大会連続でウーメオーを中心に開催される

 

さて今回シーズン唯一の「フルスノーイベント」となったラリー・スウェーデンは、トヨタがTGR-WRTとしてWRCに復帰した初年度である2017年に、現チーム代表のヤリ-マーティ・ラトバラ氏がドライバーとして出場し、チームに最初の優勝をもたらしたメモリアルなラリーでもある。

 

ラリーの主催者は、より安定したスノーコンディションを求め、2022年に北部最大の都市「ウーメオー」にホストタウンを移動。以降、3大会連続でウーメオーを中心に開催され、今年もウーメオーにサービスパークが設けられる。

 

ウーメオーは、チームの本拠地であるフィンランドからボスニア湾を船で渡ってすぐの場所に位置し、気候的にも共通する部分が多いこともあり、TGR-WRTにとってはホームラリーに近い感覚で臨むことができる一戦でもある。

 

2025年ラリー・スウェーデン Map

 

首都ストックホルムの約600km北にあるウーメオーは、北極線の南側約400kmとかなり北部に位置することから、ステージは理想的なウインターコンディションとなることが多く、加えてハイスピードなステージも多いため、スノーラリーを開催するには格好の場所といえる。

 

森林地帯の未舗装路は氷と雪で覆われているが、雪道専用に準備された、金属製のスタッド(=スパイク)が打ち込まれた「スタッドタイヤ」により、ラリーカーは非常に高いグリップを得て走行することができる。そのため、ラリー・スウェーデンはWRC全戦の中でも毎年トップ3に入るほどステージの平均速度が高い、超高速イベントとして知られている。

 

2025年のラリー・スウェーデンは13日(木)の午前中にシェイクダウンが、夕方7時過ぎからウーメオーの市街地近くで全長5.16kmのSS1「ウーメオー・スプリント1」が行われる。

 

森林地帯の雪道での本格的な戦いは翌日14日(金)の朝からスタートし、デイ2としてウーメオーの北側エリアで3本のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。一日の最後には2回目のウーメオー・スプリントがSS8として行われる。デイ2のステージの合計距離は124.32kmとなり、4日間で最長の一日となる。

 

15日(土)のデイ3は、ウーメオーの西側エリアで3本のステージをミッドデイサービスを挟んで各2回走行。一日の最後には、ウーメオー・スプリントの走行距離を約2倍に延ばした10.08kmの「ウーメオー1」がSS15として行われる。

 

ラリー最終日となる16日(日)のデイ4は、ウーメオーの北東で「ベステルビーク」のステージをSS16/17として2回走行。全長29.35kmのベステルビークは、今大会最長のステージとなる。

 

最終ステージのSS18「ウーメオー2」は、土曜日のSS15の再走となり、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。ステージは全18本で合計300.22km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1060.05kmが予定されている。

 

サポート選手権であるWRC2にも、全部で7台のGR Yaris Rally2がエントリーする

 

なお、サポート選手権であるWRC2には、全部で7台のGR Yaris Rally2がエントリー。2024年にパヤリと最後までWRC2の王座を競ったオリバー・ソルベルグ選手が、パヤリ選手を王座に導いたプリントスポーツから出場しホームイベントでの優勝を目指す。

 

また、2024年のこのラリーのWRC2にレッドグレイ・チームから出場し3位表彰台を獲得したゲオルグ・リンナマエ選手、2024年のフィンランド選手権王者ローペ・コルホネン選手( ラウティオ・モータースポーツ )、今季のフィンランド選手権アークティック・ラップランド・ラリーで優勝した18才の新鋭トゥウッカ・カウッピネン選手( ラウティオ・モータースポーツ )、ラリー・スウェーデンの常連選手である大ベテランのミハウ・ソウォボフ選手( プリントスポーツ )、そしてTGR WRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかる選手と山本雄紀選手が、GR Yaris Rally2でWRC2に挑む。さらに今回はTGR WRCチャレンジプログラム3期生の後藤正太郎選手と松下拓未選手が、ルノー・クリオRally3でWRC3に初挑戦する。

 

 

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以下は、TGR-WRTの各チームメンバーのコメントとなる

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ヤリ-マティ・ラトバラ氏 (チーム代表)
ラリー・スウェーデンは、我々がフィンランドで経験するステージとコンディションが似ているため、チームにとってはほとんどホームラリーのような感覚です。ラリーカーをドライブする上では、最も楽しめるコンディションのひとつと言えます。

 

我々にとって開幕戦ラリー・モンテカルロは、ほぼ完璧なシーズンスタートになりましたので、スウェーデンでも勝利のために戦いたいと思います。このラリーも、モンテカルロのようにトリッキーなコンディションとなるかもしれません。なぜなら、凍結した路面の上に新雪が積もると、金曜日のエルフィンのように、一番手でステージに臨むドライバーのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすからです。

 

コンディションさえ安定すれば、私たちのドライバー全員が楽しめるラリーになるでしょう。シーズン序盤の各ラリーで私たちが対峙する路面は毎回異なるため、新しいタイヤについて学ばなくてはなりません。そのため、イベント前のテストは、ドライバーたちがラリー期間中にタイヤの性能を最大限に発揮させる方法を理解するために、重要な機会となります。

 

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エルフィン・エバンス選手 / スコット・マーティン選手 (GR YARIS Rally1 33号車)
モンテカルロで表彰台を獲得したことによって、順調に新しい年をスタートすることができたので、次のスウェーデンでもチャレンジが楽しみです。ハイスピードなステージが多く、常に運転を楽しめるイベントですが、昨年のように新雪が大量に積もっていると、一番手でステージを走行する者にとっては難しいスタートとなる可能性があります。

 

その一方で、路面が凍結していたら私たちにとっては好都合ですが、いずれにせよ全力で臨みます。シーズンの初めは、新しいハンコック・タイヤについて学ぶことがたくさんありますが、スウェーデンについても同様です。ここまでのところ、以前のタイヤとフィーリングがかなり大きく異なるので、それに適応し、性能を最大限引き出さなければなりません。

 

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カッレ・ロバンペラ選手 / ヨンネ・ハルットゥネン選手 (GR YARIS Rally1 69号車)
自分たちにとって、ラリー・モンテカルロはシーズンをスタートする上で必ずしも上手く行ったとは言えないイベントでしたが、ポイントはそれなりに獲得することができたので、スウェーデンでは力強いパフォーマンスを発揮したいと思っています。

 

雪道を走るのはいつだって楽しいですし、イベント前のプレイベントテストに加えてアークティック・ラップランド・ラリーにも出場したことは、新しいタイヤで雪道を長い距離走り、フィーリングをつかむという意味で非常に有効でした。チームと協力してベストなセットアップと正しい方向性を見つけるために一生懸命努力してきましたが、ここまでところ良いフィーリングを得られています。コンディションがどうなるかは分かりませんが、私たちにとって良いラリーになることを願っています。

 

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勝田 貴元選手 / アーロン・ジョンストン選手 (GR YARIS Rally1 18号車)
ラリー・スウェーデンはお気に入りのラリーのひとつなので、チームのために最善を尽くすつもりです。今回はタイヤも新しくなり大きなチャレンジとなるので、スノーロードでのフィーリングはきっと以前とは少し異なると思いますが、上手く適応できるように頑張ります。

 

このラリーは、自分たちが直面する状況によって、多くのことが左右されると思います。もし昨年のように雪が大量に降れば、自分たちの出走順はきっと有利になるでしょうが、純粋なアイス路面だったとしたら、自分たちにとってはより難しい状況になるはずです。もちろん雪が多く降ることを期待していますが、どちらにしてもベストを尽くして戦います。

 

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サミ・パヤリ選手 / マルコ・サルミネン選手 (GR YARIS Rally1 5号車)
ラリー・スウェーデンはWRCシーズンの中でもお気に入りのイベントのひとつなので、とても楽しみにしています。通常、路面のコンディションは安定していますし、タイヤの選択肢は1種類のみとシンプルなので、ラリー・モンテカルロとは全く異なるイベントです。

 

そういう意味では、ラリーへのアプローチはよりシンプルです。もしかしたら上位入賞を期待している人もいるかもしれませんが、自分にとってはRally1で出場する初めてのウインターラリーなので、まだ学ぶことが多くあります。ですから、それほど高い期待は設定していません。ただラリーを楽しみ、堅実にラリーを戦い切ることだけを考えています。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。