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2024年11月24日【イベント】

WRC2024、TGRがマニュファクチャラー王座を獲得

坂上 賢治

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2024年FIA世界ラリー選手権 (WRC)第13戦「ラリージャパン」の最終日デイ4が11月24日、愛知県豊田市の「豊田スタジアム」を起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team (TGR-WRT)4年連続のマニュファクチャラーチャンピオンを獲得した。

 

同最終戦は、ヒョンデ モータースポーツが累積ポイントをリードした状態で突入。しかもその決着は同大会の最終ステージまでもつれ込み、TGR-WRTのエルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組(GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)が総合1位。続く2位も同じくTGR-WRTのセバスチャン・オジエ選手/ヴァンサン・ランデ選手組(17号車)が入ったことで獲得ポイントで逆転。

 

33号車(エルフィン・エバンス選手、スコット・マーティン選手)

 

結果、最終戦の最終ステージでTGR-WRTは4年連続となるマニュファクチャラーズタイトルに輝いた。また勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組(18号車)は、総合4位でラリーを終えた。

 

ラリージャパンの最終日は、愛知県の豊田市と岡崎市で「ヌカタ」、「レイク・ミカワコ」の2本のステージを各2回走行。その途中には、豊田スタジアムでの3回目のスーパーSS、「トヨタスタジアムSSS3」が行われ、都合5本のステージの合計距離70.57kmで競われた。

 

最終日も好天気に恵まれ、ステージの路面は一部区間を除いて全般的にドライコンディション。但しターマックコース上には、枯れ葉や針葉樹の落ち葉が舞う気の抜けない競技展開となった。

 

17号車(セバスチャン・オジエ選手、ヴァンサン・ランデ選手)

 

土曜日のデイ3終了時点で、首位オィット・タナック選手(ヒョンデ)と38.0秒差の総合2位につけていたエバンス選手が日曜日一本目のSS17で2番手タイムを記録。このステージでタナック選手がコースオフを喫しリタイアとなったことで、ラリー終了を待つことなくティエリー・ヌービル選手(ヒョンデ)の初ドライバーズタイトル獲得が決まった。

 

また、タナック選手のリタイアによりエバンス選手が首位に立ち、前日総合3位のオジエ選手が総合2位に、前日総合5位の勝田選手が総合4位に順位を上げた。

 

そうしたなかでTGR-WRTは、デイ3終了時点でマニュファクチャラー選手権首位のヒョンデとの差を15から11ポイントに縮めていたが、タナック選手のリタイアもあり選手権争いはさらに接戦に。

 

日曜日のみの合計タイムで競われる「スーパーサンデー」ではヒョンデが1-2、TGR-WRTが3-4体制で最終の「パワーステージ」に臨むことになり、その時点で同ポイントとなった。

 

18号車(勝田 貴元選手、アーロン・ジョンストン選手)

 

迎えた今大会、今シーズン最後のパワーステージでエバンス選手が3番手タイムを、オジエ選手がベストタイムをマークしたことにより合計8ポイントを獲得。

 

対するヒョンデ勢はヌービル選手が2番手タイム、アンドレアス・ミケルセン選手が5番手タイムだったことで合計5ポイントを加算。その結果、TGR-WRTが3ポイント差で選手権首位に立ち、逆転でタイトルを獲得した。TGR-WRTとしてはこれで4回目、トヨタとしては通算8回目のマニュファクチャラーズタイトルとなり、WRC歴代2位の記録でシトロエンと並んだ。

 

昨年のラリージャパン以来約1年ぶりの勝利を手にしたエバンス選手とマーティン選手は、ドライバーおよびコ・ドライバー選手権で2位を獲得。

 

一方、オジエ選手とランデ選手は10戦に出場し3回の優勝を含む7回の表彰台フィニッシュを達成し、ランキング4位に。パワーステージで4番手タイムを記録した勝田選手とジョンストン選手はランキングをひとつ上げ、6位で2024年シーズンを締め括った。

 

なおラリージャパンを欠場したカッレ・ロバンペラ選手とコ・ドライバーのヨンネ・ハルットゥネン選手は、7戦に出場し4勝を獲得。TGR-WRTとしては13戦のうち8戦で表彰台の頂点に立った。

 

サポート選手権のWRC2では、GR Yaris Rally2のサミ・パヤリ選手/エンニ・マルコネン選手組が2位でフィニッシュ。今シーズン7戦にエントリーして3勝を記録したパヤリ選手は、ライバルに3ポイント差をつけて初タイトルを獲得した。

 

なお、パヤリ選手は今年GR YARIS Rally1 HYBRIDでWRCのトップカテゴリーにも3回チャレンジ。地元のラリー・フィンランドでは総合4位に、ラリー・チリ・ビオビオでは総合6位に入るなど、最上位クラスでも戦えることを証明した。

 

 

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以下はTGR-WRTチームの監督・選手のコメントとなる。

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ヤリ-マティ・ラトバラ氏 (チーム代表)
ジェットコースターのようなシーズンでしたが、ラリージャパンに臨むにあたっては、タイトル獲得のチャンスがまだあることは理解していましたが、可能性はそれほど高くありませんでした。

 

それでも、我々は最後の最後まで戦い続け、その上でどうなるのか様子を見るつもりでしたが、実際に最後まで戦いを続け、それがタイトル獲得につながりました。今シーズンの後半には、ラリーの最終盤でポイントを失うという悲惨な日曜日が3回ほどありました。

 

一時は望みが断たれたようにも思われましたが、我々は反撃を続け、重要な意味を持つ日曜日を迎えることができました。これは、最後まで戦い続けること、決して希望を失わないことの大切さを示すものです。

 

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エルフィン・エバンス選手 (GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)
ラリージャパンの最終日はとてもエキサイティングな一日となり、喜ぶべき最終結果を得ることができました。チームにとってのホームラリーであるこのイベントで、再び優勝することができて本当に嬉しく思います。また、マニュファクチャラーズタイトルの獲得に貢献できたことも、本当に嬉しいです。

 

チームのメンバー全員にとって大きな意味を持つことですし、その一員であることを誇りに思います。望んでいたようなパフォーマンスを、週末を通して常に発揮できたわけではありませんが、最後まで諦めずに頑張りました。今朝、プッシュしなければならなかったオィットには同情しますが、それによって私たちにチャンスが巡ってきました。それでも、最後までしっかり走りきり、必要なポイントを獲得するのは容易ではありませんでした。

 

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セバスチャン・オジエ選手 (GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)
ここ日本で最後のステージに全力で臨んだ結果、これ以上はないと思えるほど素晴らしいシーズンの終わりを迎えることができました。大きなプレッシャーを感じていましたし、パワーステージではオールオアナッシングの走りで挑みました。

 

そして、このタイミングでいいパフォーマンスを発揮することができ、チームとともにタイトルを獲得できたことを非常に嬉しく思います。チームのみんな、そしてもちろんモリゾウ会長が喜ぶ顔を見るのは最高の気分ですし、シーズン中、チームのメンバー全員が努力してきたことが報われました。決して諦めてはならないということが、今回改めて証明されたと思います。

 

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勝田 貴元選手 (GR YARIS Rally1 HYBRID 18号車)
本当に厳しいシーズンでしたが、最後にマニュファクチャラーズタイトルを獲得することができたので、とても嬉しいです。今週末は辛抱強く走らなくてはならず、決して簡単ではありませんでしたが、なんとか最後まで走りきることができましたし、パワーステージではプッシュすることもできました。

 

チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれましたし、彼らのサポートがなければ、成し遂げることができなかったと思うので、チームとチームメイトにはとても感謝しています。今週末は、多くのファンの皆さんが応援してくれました。自分自身は今回表彰台に立つことができなかったので、皆さんには申し訳なく思いますが、応援には感謝しています。

 

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豊田 章男 (TGR-WRT会長)
「私たちは”負け嫌い”」この合言葉を口にしながら諦めずに最後まで戦い続けたTOYOTA GAZOO Racing WRTのみんなと、今日は心から喜び合いたいと思います。

 

ヤリ-マティ、カイ、トム、エルフィン、スコット、セブ、ヴァンサン、貴元、アーロン、
カッレ、ヨンネ、チームのみんなありがとう!サミとエンニもおめでとう!

 

ヒョンデの皆さま、ヌービル選手、ヴィーデガ選手、タイトル獲得おめでとうございます。最終戦、最終日、最終ステージまで皆さんと戦えた2024年のWRCは本当にエキサイティングでした。我々がつくるラリー車の音や匂いを、東アジアの道でファンの皆さまに見てもらえることは、アジアの自動車メーカーの我々にとって大きな意味があることだと思っています。これからも一緒にアジアのモータースポーツを盛り上げていきましょう!来年もいい勝負しましょう!

 

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ラリージャパンの結果
1.エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手 (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) 3h23m41.0s
2.セバスチャン・オジエ選手/ヴァンサン・ランデ選手 (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1m27.3s
3.アドリアン・フォルモー選手/アレクサンドレ・コリア選手 (フォードPUMA Rally1 HYBRID) +1m55.5s
4.勝田 貴元選手/アーロン・ジョンストン選手 (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +2m02.6s
5.グレゴワール・ミュンスター選手/ルイス・ルッカ選手 (フォード Puma Rally1 HYBRID) +3m11.5s
6.ティエリー・ヌービル選手/マーティン・ヴィーデガ選手 (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +6m54.1s
7.ニコライ・グリアジン選手/コンスタンティン・アレクサンドロフ選手 (シトロエン C3 Rally2) +10m04.3s
8.サミ・パヤリ選手/エンニ・マルコネン選手 (トヨタ GR Yaris Rally2) +11m50.8s
9.新井 大輝選手/松尾 俊亮選手 (シュコダ Fabia R5) +13m24.3s
10.ガス・グリーンスミス選手/ヨナス・アンダーソン選手 (シュコダ Fabia RS Rally2) +14m15.8s

 

 

2024年WRCドライバー選手権順位
1.ティエリー・ヌービル選手 242ポイント
2.エルフィン・エバンス選手 210ポイント
3.オィット・タナック選手 200ポイント
4.セバスチャン・オジエ選手 191ポイント
5.アドリアン・フォルモー選手 162ポイント
6.勝田 貴元選手 116ポイント
7.カッレ・ロバンペラ選手 114ポイント
8.グレゴワール・ミュンスター選手 46ポイント
9.ダニ・ソルド選手 44ポイント
10.サミ・パヤリ選手 44ポイント

 

2024年WRCマニュファクチャラー選手権順位
1.TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 561ポイント
2.Hyundai Shell Mobis World Rally Team 558ポイント
3.M-Sport Ford World Rally Team 295ポイント

*FIAによる公式結果の発表が条件となる。

 

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TOYOTA GAZOO Racing WRTのSNSアカウント
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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。