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2023年11月2日【トピックス】

TDB調査、タクシーの1割超10年で人手半減・半数赤字

坂上 賢治

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賃上げ可能な「収益力」確保が難しいケースも 勤務体系などの待遇改善も重要

 

株式会社帝国データバンクは11月2日、人手不足が深刻化している「タクシー・ハイヤー業界」の人手状況と損益動向の実態について調査・分析を行った。

 

タクシー会社の1割超 10年で人手「半減」 1社平均の従業員数は10年前から2割減

 

タクシーの現場でドライバー不足が深刻化してきた。国内でタクシー・ハイヤー事業を展開する企業で、ドライバーを含めた従業員数の推移を調査した結果、10年前の2013年時点に比べ、対象2428社のうち69.7%にあたる1691社で「減少」した。

 

このうち、13年からの減少率が「5割以上」となった企業は14.5%・352社にのぼり、タクシー会社の1割超で従業員数が10年前から半数以下に減少した。

 

タクシー会社の1社あたり従業員数の推移をみると、2013年は平均で66人/社の水準だったものの、以降は漸減傾向で推移し、23年8月時点では52人/社に減少し、10年前から約2割減少した。

 

 

特に、コロナ禍でタクシーの売り上げが大きく落ち込んだ20~22年にかけて、前年からの減少率が拡大するなど、大幅な従業員数の低下がみられた。

 

タクシー・ハイヤー業界では、コロナ禍による移動制限の緩和に伴う観光やビジネスの移動需要が急速に高まった。また、全国各地で初乗り料金の上限が引き上げられるなど実質的な値上げも背景に客単価が上昇した企業は多く、タクシー需要に強い追い風が吹いている。

 

ただ、足元ではコロナ禍で同業他社や他業界に転職・離職した従業員が戻ってこないほか、コロナ禍での収入減といったマイナスイメージから「若手(新人)の応募が来ない」といった企業も散見された。

 

定年退職や体調不良で退職する高齢ドライバーも年々発生するなか、若手社員や中途ドライバーの採用で不足分を埋めることが難しくなっており、タクシー保有台数に対してドライバー数が足りず稼働率を低下させるケースが、地方のみならず都市部でも発生している。

 

地方で目立つ従業員減少 「半減」割合、都道府県別では「茨城県」の29.2%が最高

 

従業員数が「半減」となったタクシー会社の割合を都道府県別(本社所在地)にみると、最も割合が高かったのは「茨城県」で29.2%を占めた。「香川県」(29.0%)や「奈良県」(25.0%)など、地方を拠点とするタクシー会社で従業員数が10年前から半減している企業が多い一方、埼玉県や大阪府など需要の大きい都市部でも、従業員数が大幅に減少した企業が多かった。

 

タクシー・ハイヤー業界では不足するドライバーの確保に向け、賃上げによる待遇向上の必要性が指摘されている。ただ、2022年度の業績動向では足元の需要回復や単価上昇を受けてもなお半数が「赤字」で、コロナ禍で大きな打撃を被ったタクシー会社では賃上げ原資の確保が容易ではない現状もみられる。

 

 

LPガスなど燃油価格の高騰も収益を圧迫しており、賃上げ可能な収益力を確保できる企業が限られることも中小タクシー会社でドライバー不足の解消が進まない要因の一つとなっている。

 

一方で、配車アプリの活用で「流し」営業や歩合制を廃止し、安定した収入環境をPRすることでドライバーの維持・確保につなげるタクシー会社もある。

 

時給制の採用や、企業内保育所の設置などでスポット的に働ける環境を整備し、女性ドライバーの応募を獲得するケースもあり、人手確保に向け、勤務体系や福利厚生等の待遇面での柔軟な対応も今後必要となってくる。

 

<調査結果(要旨)>
– タクシー会社の1割超 10年で人手「半減」 1社平均の従業員数は10年前から2割減
– 地方で目立つ従業員減少 「半減」割合、都道府県別では「茨城県」の29.2%が最高
– 賃上げ可能な「収益力」確保が難しいケースも 勤務体系などの待遇改善も重要

 

※全国のタクシー・ハイヤー業を対象に調査・分析を行った。なお、従業員(人手)にはドライバー以外の職種も含まれるケースがある
※調査期間:2023年8月末時点
※調査機関:株式会社帝国データバンク

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。